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高等部とイケメンハーレム

96:新しい攻略対象者?

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 俺は馬車に乗っても
くどくどとレオナルドに説教してやった。

どうせ今までも
同じ様に好き勝手に
行動してきたに違いない。

俺はレオナルドから過去を聞き出すと
ねちねちと説教してやる。

護衛の男とアキレスからは
もう勘弁してやれよ、と言う
視線を受けたが無視してやった。

権力を持つと言うことが
どれほど危険かを思い知らせてやる。

俺は具体的に。
とはいえ、もちろん作り話だが
さもあったかのような
例を挙げて、
好き勝手に振舞った権力者の末路や
どの周囲がどれほど迷惑を被り
どれほど苦しい人生だったかを
語って聞かせる。

前世で似たような漫画や
小説は山ほど読んだし、
テレビで見ていた時代劇なんかは
すべて人情もののお涙頂戴系の話だ。

案の定、レオナルドは
鼻水をすすりながら
涙を流して俺の話を聞く。

ちょっとやりすぎたか、と
思う頃に、馬車は王宮に着いた。

俺は持っていたハンカチを
レオナルドに押し付ける。

このまま馬車を下りたら
俺が虐めて泣かしたみたいだからな。

馬車が止まり、
先にアキレスが馬車を下りた。

恐らく俺の父にでも
連絡をしてくれているのだろう。

行き場所が決まらないのに
馬車から下りるわけにはいかない。

なにせ隣国の王子様が
大号泣してるからな。

人目は避けたいところだが、
こいつ、なかなか泣き止まない。

見た目はムキムキっぽいのに、
何故そんなに涙もろいんだ?

そんなに泣いて後悔するなら
最初から、勝手に国を
出るような真似をするなって
また説教したくなる。

「イクス様、どうぞ」

アキレスが馬車の外から声を掛けて来た。

俺はまず護衛の人に馬車を下りて貰い、
それからレオナルドの背を押して
馬車から下す。

大丈夫だと思うが、
護衛が先で、その後に
護衛対象のレオナルド。

その後に俺が続いた。

一応、王子様のレオナルドの
保護を考えての順番だ。

無いと思うが、最悪襲われても
真っ先に危険に陥るのは
先頭の護衛か、一番後ろの俺になる。

と思ったのだが。

「イクス」

俺が馬車を下りようとすると
なんと、ヴィンセントがいた。

「ヴィー兄様!」

嬉しくて思わず
馬車を下りる足が
地面に着く前に
ヴィンセントに飛びついてしまう。

もちろん、ヴィンセントは
難なく俺を抱き留めて
地面に下ろしてくれた。

ヴィンセントの後ろには
何人もの騎士と、
一番前にはエリオットがいる。

さすがに隣国の王子様を迎えに来たのだから
騎士団が動いてもおかしくはないか。

「イクス、あの王子様は
何故泣いてるんだ?」

小声でヴィンセントが俺に聞く。

俺は肩をすくめた。

「知らない」

俺の言葉に、護衛の男性も
アキレスまでもが、がばっと
俺を振り返ったが、
俺は知らんぷりをしてやった。

ふん、だ。

そんな俺をどう思ったのか
ヴィンセントは俺の頭をなでなでする。

「少し待てるか?

国王陛下と公爵殿、
それと俺の親父殿がこの王子殿下と
話をする場を設けて待っている。

それが終わったら
俺も仕事を終えて帰宅できると思う。
よければ送っていくが」

「じゃあ、待ってる」

俺がそう言うと、
ヴィンセントはぽんぽん、と
俺の頭を撫でる。

「ならば、王家の庭園で待っててくれ。
陛下からも許可は貰っている」

「わかった、ありがとう」

俺が頷くと、
ヴィンセントは笑った。

それからアキレスを見て
「イクスを頼む」という。

アキレスが、おまかせください、と
頭を下げるのを見てから
ヴィンセントはレオナルドを
連れて騎士達と移動をする。

一瞬だけ、エリオットが振り返り
俺にウインクをしてきたが、
それを見たヴィンセントが
軽くエリオットを殴る仕草をする。

相変わらず仲良しらしい。

護衛の男も一緒に行ってしまったので
俺はアキレスと二人っきりになった。

「ほんと、とんでもない王子様だったね」

俺が言うと、アキレスは曖昧に返事をした。

なんだろう。
王子に対して言い過ぎだとか思ってるんのか?

だがこういうことは
子どものうちにしっかり
教えておかなければ、
大人になって同じような行動をしたら
大変なことになる。

それこそ、今は16歳だからと
許されることでも、
成人を迎えていたら
同じ行動だったとしても
全く違った解釈になることもあるのだ。

戦争一直線になる可能性だって否定はできない。

しっかり俺の父に叱られるといい。

俺はそんなことを思いつつ足を踏み出した。

目指すは王宮の庭園だ。

王宮は色んな人たちが出入りするので
中庭は解放されている。

王家の庭園とはその奥にある
文官や騎士たちがいる場所と
王族たちのプライベートの場を
繋ぐ庭のことだ。

この庭園は、限られた者と
許可を得た者しか入れない。

きっとアキレスも
入ったことは無いだろう。

俺は幼い頃、よくこの庭園で
王子二人と一緒に遊んだのだが。

庭園に着くと、
顔見知りの警備兵と
侍女がいて、
俺たちを庭へと案内してくれた。

侍女たちは俺たちに
お茶と軽食やお菓子を準備して
すぐに下がってしまう。

「アキレスも一緒に食べよう」

護衛だからと遠慮するアキレスに
俺は声を掛けたが
アキレスは首を振るばかりだ。

うーむ。
リタも一緒に何かを食べることは嫌がるしな。

でもすぐそばに居るのに
俺だけ食べるのって
意地悪しているみたいでいやだし。

「じゃあね。
立ったままでいいから
ここにきて」

俺が言うと、アキレスは
俺のすぐそばに来る。

「それで、僕の毒見して?
ね?
お茶でしょ。
それからこのサンドイッチ。

あとはこのクッキー。
それとね。
このマフィン。
これ、美味しいんだよ」

俺がお菓子を並べると
アキレスは目を丸くして、
そして、笑った。

ちょっと冷たい感じの印象だったのに、
急に穏やかな感じになる。

「毒見ですね。
では、立ったまま失礼して
いただきます」

「うん。お茶もちゃんと飲んでね」

俺がお茶も勧めると
アキレスは素直にお茶を飲み、
お菓子を食べる。

俺はそれを見ながら
同じ様にお茶を飲んだ。

王宮で出された菓子に
毒見など必要はない。

アキレスもそれを理解していて
俺の案に乗ってくれたのだろう。

だって一人で食べても美味しくないし。

「イクス様はお優しいのですね」

「優しい?
そんなことないと思うけど。
僕はいつも自分のことしか考えないし」

ついヴィンセントに甘えるし、
やりたいことをついやってしまう。

俺がそう言うと、
アキレスは首を振る。

「いいえ。
先ほどの話は、
とても理に適っており、
感服致しました。

隣国の王子に対して
毅然とした態度で、正しいことを
あの王子が理解しやすいように
噛み砕いて説明をされていた。

だからこそ、
あの王子の心にまで
イクス様の言葉や御心が届いたのです」

あの涙がその証拠です、と
大げさに言われて、
俺は謙遜していいのか、
お礼を言うべきか迷った。

「あれも、僕が言いたいから
言っただけなんだけど」

と小さく言ってみたが、
アキレスは素晴らしい、と言う。

なんか、アキレスの変な
スイッチを押してしまったようだ。

アキレスの俺を見る目が
ちょっとヤバイ。

大丈夫だよな?

俺を見る目が、
前世妹がイクスの表紙に向かって
手を合わせていた時の瞳に
似ているのだが。

違うよな?

どうみても俺を崇拝しそうな勢いだが、
君はイクスの攻略対象者じゃないよな?

誰か。
誰か大丈夫だと言ってくれ!





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