【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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高等部とイケメンハーレム

78:やってきました初夜会

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 俺は体調を不安視されながらも
なんとか夜会の準備をした。

と言っても、
衣装は何故か母と
ヴィンセントが一緒になって
考えてくれて、
当日はヴィンセントが
エスコートしてくれるという。

こりゃ、安心しかない。

エスコートと言えば
身内か婚約者がするものらしいが
俺の兄は当日、
兄に会いにやってくる
隣国の王女のエスコートをするらしい。

この二人は今では
社交界のバカップルだ。

……という噂が流れていると
ミゲルに聞いた。

まぁ、兄が幸せなら
それでいいのだが。

そんなわけで俺のエスコートは
父がするのかと思いきや
ヴィンセントがすることに
いつの間にかなっていた。

まぁ、この日は俺の
デビューなので母も夜会に出席する。

父は母をエスコートするのだろうし、
ヴィンセント……ほんとに
俺の父にいいように扱われてる気がする。

父からの信頼度も厚いし、
俺は安心だし、嬉しいけれど
ヴィンセントの人生、
公爵家おれんちにいいように
使われ過ぎなのでは?と思う。

ヴィンセントには婚約者がいないから
こうやって好き勝手に
利用されるんだよな。

可哀そうだとは思うが、
もしヴィンセントに婚約者ができたら
きっと今迄みたいには
一緒に遊んだりはできないと思う。

だってこの世界は
同性同士の結婚もアリの世界だ。

だから俺がヴィンセントのことを
兄と思ってるんです、なんて
主張したとしても。

ヴィンセントの領地に
連れて言って貰ったり、
一緒に川で遊んだり、
疲れた日は甘えて一緒に
寝て貰ったりしたら……嫌がると思う。

逆に、そう逆に。

俺以外の誰かが。
たとえば可愛い女性が
甘えてあの腕に掴まったり、
ヴィンセントに優しく微笑まれたり、
腰を引き寄せられて
守られたりしたら。

……めちゃくちゃ、嫌だ。

幼いイクスオレの恋心は
ちゃんと消化したと思っていたのに、
やっぱりダメだった。

だってヴィンセントはカッコイイのだ。

俺を甘やかすし、優しいし、
逐一、カッコイイになるし。

別に恋人になったりとかしなくていいから
ずっと俺のそばに居て欲しいって思ってしまう。

俺はヴィンセントのことを
ずっと兄みたいだと慕ってたはずなのに。

いつの間にか、イクスの恋心と混ざって
俺のヴィンセントへの想いは、
憧れからゆっくり時間を掛けて
恋愛感情にまで育ってしまっている。

でも、だからと言って
何がどう変わることもなかった。

少なくとも今までは。

だってヴィンセントはいつだって
俺のそばに居てくれたし、
何かあったらすぐに駆けつけてきて
俺を守ってくれる。

でも、これからはどうなるのだろう。

俺が社交界にデビューするということは
きっと、俺の婚約者探しも始まると思う。

つまりヴィンセントに婚約者が
いなくても俺に婚約者が
できるかもしれないのだ。

あの父だから俺が嫌がる相手と
政略結婚しろとか言わないと思うが
俺は自分の価値を知っている。

じつは……王家から。
幼馴染のカミルとクルトから
婚約の打診が来ているのも知っていた。

家族も屋敷の使用人たちも
俺には黙っているが、
俺には無敵のジュがいる。

ジュは前世妹の妄想力のおかげか
魔力も強くなり、
たどたどしい言葉もなくなった。

いまでは、短い文であれば
おしゃべりできるぐらいになっている。

普段はあまりしゃべらないジュだが
何か重要そうなことがあると
俺に教えてくれるのだ。

それは他国のことだったり、
精霊の樹のことだったり、
天災や災害のことだったり。

その流れで、俺の婚約を
父が断っていたと言う話を
ジュが持って来た。

いや、災害と俺の婚約話を
同一レベルにするのは
どうかとは思う。

だがジュは嬉しそうに言ったのだ。

『デキアイハヒトリダケ』

……それ。
前世妹の言葉だよな?

もう俺は遠い目をしちゃったよ。

そんなこんなで
俺の社交界デビューは
俺の不安と一緒に幕を開けたのだが。

今はそれどころではない。

何が、って俺の目の前にいる
ヴィンセントの話だ。

俺は夜会のために着替えさせられたのだが、
衣装がどうもおかしい。

俺の銀色の髪に合わせたシャツは
どうみてもヴィンセントの髪色の
赤い差し色が入っていたし、
髪に付けられた飾りも赤だった。

鏡で見た時は
ヴィンセントのエスコートだから
色を入れたのかな?
ぐらいに思ったのだが。

ヴィンセントが迎えに来たと
リタに言われて玄関に向かうと、
神々しいほどのイケメンが
俺の前に立っていた。

衣装は俺とお揃いで、
差し色は俺の瞳と同じ碧色だ。

「まぁ、一緒に並ぶと
お似合いだわ」

唖然としてしまった俺の耳に
母の嬉しそうな声が聞こえた。

母も夜会に出席するために
準備をしていたのだが
終わったのだろう。

俺が振り返ると
着飾った父と母がいた。

「ヴィンセント君、イクスを頼むよ」

父が言うと、ヴィンセントが
「命に代えましても」という。

だから、すぐ俺のために
命かけるとか言うな。

「イクス?
何をふくれている?」

ヴィンセントが首を傾げ、
手を差し伸ばしてきた。

俺は素直に手を取ったが、
いつかヴィンセントにも
説教しなくては、と思う。

バカ妹はバカ可愛かったが
ヴィンセントも、イクスバカだ。

俺も前世で兄バカだったから
あまり強くは言えないが、
ヴィンセントは血がつながった兄弟でもないのに
イクスを可愛がりすぎる。

ほんとに、誰とも結婚できなくなるかもしれないぞ!

……という現実に、
心のどこかで喜ぶ自分が
ちょっと嫌になる。

「どうしたんだ?
初めての夜会で不安になったのか?」

馬車に乗るとヴィンセントが
大丈夫だと、俺の手を握ってくる。

こういうの、いつものことだから
気にしなかったけれど、
兄弟じゃないのに、この距離、
近すぎるよな?

いや、今更なんだけど。

俺は普段からめちゃくちゃ
ヴィンセントに甘えまくってるし
なんなら抱きつきに行ってたけれど。

社交界にデビューしたら
俺ももう子どもではいられない。

ヴィンセントとはちゃんと一線を引いた
付き合い方をしないとダメなんだろうな。

そう思うと寂しくなって。

俺はぎゅっとヴィンセントの手を握ってしまった。

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