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高等部とイケメンハーレム
76:前世妹の暴走妄想
しおりを挟むその日の夜、俺はジュと一緒に
ベットに寝ころんだ。
ジュは姿を消すことも多いが
夜、寝る時は俺のところに来ることが多い。
俺が夜、魔法の特訓をするからだ。
だが今日は訓練はなしだ。
代わりの俺は仰向けになって
ベットに寝転がり、
ジュを胸の上に乗せた。
いつの間にかジュも
大きく成長?して、
今では普通の成猫ぐらいの
大きさになっている。
何も食べていないのに、だ。
俺はなんとなく、
ジュが前世妹の妄想エネルギーを
食べて大きくなっているのでは?
と思っている。
そうでなければ、
あのリスぐらい小さかったジュが
俺の魔力の水すら飲ませてないのに
こんなに大きくなるわけがない。
それに、だ。
俺はもう16歳なのに、
いつまでたっても病弱認定されている。
俺が幼い頃から病弱だったのは、
魔力量が多くて、身体がそれに
対応できないから、と言われていた。
でも成長したら魔力も安定するし
身体もしっかりしてくるから
大丈夫だよ、とも
言って貰えていたから
俺は安心していた。
でも、ダメだった。
俺の身体が成長しても
魔力が安定しないから
俺はいつまでたっても
病弱なのだ。
おそらく魔力が安定しないは、
前世妹だと思う。
たぶんだが、俺の魔力は
いまだに増え続けている。
新しい魔法とか
スキルとかもなんとなく
勝手に修得しているっぽい。
魔力量も止まることを知らずに
じわじわ増え続けているので
俺の魔力が安定することは無く、
身体がこの魔力に順応することはないのだ。
……絶対に俺の前世妹の妄想のせいだろう。
恐ろしい妄想が強烈な魔力に変換され
俺の身体に降り注がれているに違いない。
「なぁ、ジュ。
俺の妹に、どうやったら会える?」
俺は初めてジュに聞いた。
だって、このままだと
恐ろしいことになりかねない。
物理的に、という意味もあるし、
イケメンハーレム、という意味でも。
なにせ、もうすぐ俺は高等部に入学する。
例のパズルゲームがスタートする年だ。
小さい神は、この世界には
シナリオもないし、好き勝手に
生きればいいみたいなことを
言っていたが、それでもだ。
前世妹が、やたらとイクスを
イケメンハーレムの中に
放り込もうとしていたことを考えると
俺はイケメンホイホイみたいに
イケメンを引き寄せる特殊なスキルを
腐った妄想パワーで
手に入れているかもしれない。
たとえばすれ違っただけで
恋に落ちたとか言い出す男が
出てきてもおかしくはないと思う。
そんな恐怖な学生生活を
俺は送りたくないのだ。
そういうわけで、
できれば、できるだけ早く
前世妹とコンタクトを取りたい。
最初は「幸せになれ」とか
「お前は可愛い妹だったよ」とか
そういうことを一言でもいいから
伝えたいと思っていたが、
今は違う。
腐った妄想パワーがこの国の
魔力の素になっているようだから
妄想するなとは言わない。
ファンブックのイクスを拝んでもいいし
どんな妄想をしても構わない。
ただ。
ハーレムだけは、
不特定多数の男に組み敷かれることだけは避けたい。
俺は男を侍らす趣味は無いし、
恋愛するなら、一対一が良い。
一対多の恋愛は物語であれば
楽しいのかもしれないが
俺には無理無理だ。
「なぁ、ジュ」
俺はジュの柔らかな毛を撫でた。
ジュは俺の胸の上で
ごろごろと喉を鳴らしている。
「俺の光と樹属性の魔法だけでは
きっと、妹と繋がることは
無理なんだろう?」
俺の言葉に、
ジュの耳がぴくぴく動く。
それを肯定だと俺は受け取る。
やっぱりな。
そうだと薄々感じてたんだ。
「それでさ、
きっとジュが媒体になって
俺が魔法を発動させたら
俺は妹とコンタクトが取れる。
そうじゃないのか?」
ジュは空間魔法を操ることができる。
それならば、別世界と繋がることも
できるのではないかと俺は思う。
ジュはまた耳をぴくぴくさせた。
「試しでいいんだ。
出来るとは思ってない。
でも、やってみたい。
あの神様はできるだけ
接触は避けて欲しいと言ってたけど
ダメだとは言わなかっただろ?
すでにあの妹の世界から
妄想力を貰って魔力に変換してるんだから
接触禁止なんて今更だろうし。
な、頼むよ。
このままだと俺、
腐った妹の妄想で、
後戻りできないことになってしまう」
本気だ。
本気で俺はそう思ってるんだ。
だって俺は見てしまった。
小さい神様経由で手に入れた
薄い設定集に書き込まれた
前世妹のメモ書きを。
設定集には前世妹の文字が
びっしりと書き込んであった。
それは設定集という名の
イクスを愛するイケメンたちの
説明書だった。
公式設定などフル無視して
前世妹は、描かれたキャラクターの
周囲にイクスに対して囁く
愛の言葉やどうやってイクスを
落とすかなど、細かくメモっていたのだ。
妄想がさく裂したキャラクターに関しては
初エロはここ!とまるで囲んだ場所が
書いてあり、それは校舎だったり、
公園だったり、おいおおい、って
言うような場所まで指定されていた。
そもそも、
イクスは数多くの男性キャラクターと
恋愛する話があるが
それはイクスが一度に
多くの男性と恋愛している
わけではない。
イクスが主人公で、
イクスが恋に落ちる相手、
いわゆる攻略対象者が
複数いるだけで、
あくまでも、恋愛対象は
一話にー人だ。
まがりまちがっても
ハーレムにはならない。
なのに俺の前世妹は
そんなことすら忘れたかのように
設定集の裏表紙に
『イクス様、総受!』という
恐ろしい文字を大きく書いていた。
……おそろしい。
俺のバカ可愛い妹は
なんて恐ろしい人間だったのだろう。
そんなわけで俺は
出来るだけ早く、
何が何でも前世妹と話がしたい。
いや、話をせねばならないのだ!
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