【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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子ども時代を愉しんで

22:快適な学校生活

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 学校が始まったが、
生活はものすごく順調だった。

クラスはミゲルとヴァルターと一緒だったし、
もちろん、クルトも同じだった。

クルトは何かと俺を気に掛けて
くれているようだったが
すでにクルトの周囲には
側近候補らしき子息たちがいて
俺とずっと一緒にいれるわけではなさそうだ。

俺ももしかしたら、
側近候補とか言われるかも?

と警戒はしたが、
たぶんだけれど、
あの階段落ちがあったから
俺には声がかからなかったんだと思う。

もしかしたら父が何か
口添えしてくれたのかもしれないし
陛下が気を遣ってくれたのかもしれない。

陛下とも俺は、
子どものころから
家族ぐるみで交流させてもらっていたし、
俺が王族と親しくしていることで
今後、同じようなことが
起こらないとは限らない。

俺は幼い頃からクルトを知ってるから
仲の良い幼馴染感覚だったが、
どうやらクルトは他人から見ると
恰好良くて、王族で、
将来有望なぜひゲットしたい
男性になるらしい。

つまり、男女ともに
クルトと仲良くしたい者は
大勢いる。

それは婚約者と言う意味でも
王族と仲良くなりたいと言う意味でも、だ。

俺はその中に混じって
何が何でもクルトと
仲良くしたいとは思えない。

もちろん、仲違いをしたとか
そういうことではないので
学校以外で会えば仲良く
話をしたりしてもいいが、
学校内ではダメだ。

公の場では適度な距離を
保っておきたい。

俺はそう思っているし、
クルトも同じ様に
思っていてくれるようで
むやみやたらに俺に絡んで
来るようなことはない。

むしろ俺の一件で
親しくする相手を
選んでいるようなところもある。

俺もまた勘違いの嫉妬で
害されたくないから
不必要にクルトには近づかないので
俺とクルトは、出会ってから
初めてと言っていいほど、
接触をしていなかった。

俺の事情をヴァルターも
ミゲルも知っているようで
クルトと二人っきりに
ならないように配慮してくれたし
本当に二人には頭を下げることばかりだ。

でも、二人がいると毎日が楽しくて
仕方が無い。

ヴァルターは辺境伯の子息らしく
子どもながらに剣の腕は一流だった。

そこで俺はヴァルターに
授業が終わった後、
剣を教えて貰っている。

と言っても、
実際に剣を振るのではなく
剣の技とか、型とか
そうモノを教えて貰っているのだ。

ミゲルは魔法のことが詳しくて
学校で学ぶ以上のことも
知っているので、
俺はいろんな話を聞かせて貰った。

魔法書も貸してもらって、
感想を言いあったりもしている。

初等と中等部は基本的な学業と
剣術や魔法の基礎を学ぶのだが、
高等部になると、
より深い学びになる。

つまり騎士科に進む者、
魔法科に進む者。

それ以外は文官を目指す者のために
普通科に進む者と別れるのだ。

ちなみに、
ヴィンセントは騎士科。

兄は普通科の予定だ。
第一王子のクルト殿下の
側近になるために学ぶらしい。

ヴァルターは将来は
騎士科に行くつもりだと言うし
ミゲルは魔法科だという。

俺は魔法に興味があるが
だからと言って魔法で収入を得て
食べていけるとは思っていない。

できれば研究職になりたいが、
きちんとした収入を得るためには
文官になるべきだという思いもある。

俺は次男だから家督は継げないし、
手に職を付けなければならないから
魔法で職を得られるかどうかを
定めてからでないと
どこに進学するかは決められない。

と言うような話を
ヴァルターとミゲルにしたら、
二人とも、いやいや、と
手を振って否定する。

「次男とはいえ公爵家だ。
そんな、仕事が無いから
食べていけないとか、
さすがにないだろ」

「そうですよ。
それにあの過保護な方たちが
ほっておくわけがありません」

そう言われるとそうなのだが、
前世サラリーマンとしては
ニートになる将来はできれば
回避したいと思うわけだ。

まぁ、そう言いつつも
二人とも俺に剣を教えてくれたり
魔法の話をしてくれるので
本当にありがたい。

クラスメイトとは
それなりに仲良くしている。

クラスはなんとなく、
クリムとその側近たちが
1つのグループっぽくなっていて
それ以外は俺も含めて
みんな同じように仲良し、
と言う感じだ。

虐めも無いし、
身分で揉めることもない。

実に平和な日々だ。

ただ問題が無いことも無い。

昼休みになると
兄やヴィンセントが
日替わりでやってきては
一緒にランチを食べようと誘うのだ。

俺はクラスメイトたちと
食べるから、過保護はいらないと
何度も言っているのだが、
兄もヴィンセントも
父から頼まれているの
一点張りで、
俺は仕方なく、ミゲルと
ヴァルターを巻き込んで
一緒に食事をしている。

ただヴァルターに関しては
ヴィンセントを尊敬しているらしく
一緒に食事をするのは嬉しそうだ。

たまに、俺とヴィンセントが
どれだけカッコイイか談議を
することもある。

いつもは悪ぶってるヴァルターが
ヴィンセントのことになると
子どものようにはしゃぐので
俺はついつい、ヴィンセントの
事を話してしまうのだ。

今日も休憩時間に
窓から外を見ていると
ヴィンセントのクラスが
剣の訓練をしているのが見えた。

当たり前だがヴィンセントは
騎士科にいる。

それを見た俺が思わず
「「かっこいい」」と
呟いたのだが、
それにハモる声がした。

横を見ると案の定、
ヴァルターがいて、
俺と声が重なったことが
恥ずかしかったのか
顔を真っ赤にしている。

「ヴィー兄様、かっこいいよね」

俺がもう一度言うと、
ヴァルターは顔を赤くしたまま
ぷい、っと横を向く。

でも「まぁな、当然だ」と
小声で言うので、
俺は思わず笑ってしまった。

「ヴァルは可愛いよね」

俺が頭をなでてやると、
ヴァルターは、はぁ?と
俺を見る。

「可愛いよね?」

隣にいたミゲルに
同意を求めたが、
ミゲルは苦笑する。

そして。
「そう言っているイクスが
一番、可愛いと思われてると
思いますよ?」
とだけ言った。

まぁ、可愛いと言われている自覚はある。

でも俺だって、
可愛い以外のことを言われてみたい。

「僕もヴァルみたいに、
剣をぶんぶん、振り回せたら良かったのに」

ぶっちゃけ、剣は無理だった。
特に前世の記憶があれば
誰だって持ってみたくなる
大剣は、ほんの少し
持ち上げるだけで精いっぱいだった。

この体は、筋肉が無さ過ぎなのだ。

「その代わり、魔法は凄いよ。
イクスの魔力量は凄いって
先生たちも言ってたし」

ミゲルが慰めてくれるように
俺の魔力量はかなり多いらしい。

でも魔力量が多くても、
実際に使いこなせなければ
宝の持ち腐れだ。

そして俺はまだ
魔法をようやく使えるように
なったばかりで、
達人になるにはまだまだ
先は遠いように思う。

「まだ始まったばかりだろ。
剣だって、そのうち
振り回せるようになるかもしれねーし、
魔法だって学び始めたばかりだ。

中等部に行く頃になったら
なんとかなってるだろう」

ヴァルターが物凄く
楽天的な言葉で俺を慰める。

まぁ、そうかもしれないが。

「早く成長しないかな」

俺の言葉に二人は同意しつつ、
まだ入学式が終わったばかりだよ、と笑った。

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