【R18】完結・女なのにBL世界?!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

たたら

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25:赤い瞳の闇

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 じっと見つめ合っていると、
諦めたように、先にクリスさんが
口を開いた。

 「君は…」

私はクリスさんの言葉を待つ。

「この世界の<闇>の魔素が
人間たちの負の感情から生まれることを
知っているかい?」

「そう…ですね。
そう聞いています」

「もし仮にそうだとすれば、
人間たちは、永久に<闇>を
生み出す存在だ」

私は頷く。

「人間は、必ず<闇>を持つ。
欲があるからだ。

私の婚約者が死んだのも、
私はこの人間の欲があったからだと思っている」

私を見る赤い瞳がさらに黒くなっていく。

「私は考えたのだ。
どうすれば、この世界を救えるのかを。

私のように理不尽に愛する人を
奪われないようにするには
どうしたらいいのかを」

クリスさんは、私を確かめるように
少しだけ顎を上げ、私を見た。

「君は…女神の愛し子は、
どうしたらいいと思う?
この世界を<闇>から救うには」

私は、息を飲んだ。
ここで言う言葉は、かなり重要だ。

ここでクリスさんの
望む答を言わなかったら…

「私は、光を増やせばいい、と思います。
<闇>の魔素は<光>の魔素によって
消すことができます。

だからこそ、聖騎士が存在し、
彼らが<闇>の魔素から生みだされた
魔獣や魔物を退治してくれているのでしょう?」

クリスさんの望む言葉なんてわからない。
だから私は思っていることを
そのまま声に出した。

「なるほど。
教科書通りの模範解答だ」

クリスさんが、蔑むように笑う。

「そう教会に教えられたか。
だが、実際はどうだ?

<闇>の魔素は減ったのか?
確かに魔獣の数は減っただろう。
だが、人間からは常に<闇>が生まれる。

人間たちが減らなければ
<闇>は減らない。
そう思わないか?」

これ。
物凄く良くない思考になっているのでは?

「ははは、
心配しなくても、
人間たちを滅ぼそうなどとは
思ってはいないよ」

クリスさんは暗い瞳のまま
不自然に笑った。

「ただね、思ったのさ。
人間たちが生み出す<闇>の魔素を
人間が制御できればいいのではないか、とね」

「……制御ですか?」

人間の感情から生みだされるものを
制御なんでできるのだろうか。

感情から生みだされるのなら
感情を制御すればいい?

私が困惑しているからだろう。
クリスさんは笑顔を作ったまま
立ち上がった。

「来たまえ。
女神の愛し子に見せたいものがある」

嫌な予感しかない。
けど、行かないわけにはいかない。

クリスさんは屋敷の奥へと進んで行く。
私はその後を付いて行った。

屋敷に人気はない。

ここに案内してくれた執事さんもいないようだ。

応接室を出る際に、
ちらりと窓の外を見ると
玄関が見えたが、
私が乗ってきた馬車はもう無かった。

屋敷は全体的に暗い。

空気も重たいけれど、
照明自体が少ないのだ。

屋敷の一番奥の部屋に
私は連れて来られた。

部屋には鍵がかかっていた。

クリスさんは部屋に入るように
私に促す。

部屋に入ると、
目の前には大きな檻があった。

とてつもなく大きくて、
象でも入りそうな檻だった。

その中には、何もない。

けれど、キツイ匂いがした。

何日も体を洗っていないような…
元の世界で見たことがある
浮浪者みたいな匂いだ。

部屋は、階段のような埃はない。

おそらく、使用されている部屋だ。

部屋の中には檻と…
あと、何かしらの薬品や、
書類のようなものが並ぶ棚と
机があった。

部屋は…<闇>を感じた。
いや、<闇>の魔素をまとっている感じがした。

けれど、目を凝らしても、
何もわからない。

クリスさんは、私に机の上の
書類を見せた。

と言っても、
この世界の文字を覚えたての私は
難しいことが書いてあることぐらいしか
わからなかった。

私の様子を見て、
読むことができないと判断したのだろう。

クリスさんは書類を見ながら話をしてくれた。

この部屋は<闇>を研究する部屋なのだと。

別の場所に<闇>の魔素を身にまとう者がいる。

その者たちを観察し
<闇>を研究しているのだと
クリスさんは言う。


「<闇>の魔素を身にまとう?」

意味が分からずに、私は聞き返した。

「そうだ。
研究対象の彼らは、とても深い
<闇>の魔素をその身に宿している」

クリスさんが、淡々と言う。

「宿す?」

余計意味がわからない。

「もし人間が<闇>の魔素をその身に宿し、
制御することができれば、
<闇>に飲まれることは無い。

自身が生み出す<闇>にも
もちろん、飲まれることは無いし、
魔獣にもならない」

素晴らしいと思わないか?
とクリスさんは言う。

「だから私は<闇>の研究を
引き継ぐことにしたのだ。

あぁ、言っておくが、
研究対象の彼らは無理やり
私が連れて来たわけではないよ?

仕事として、私が依頼をし、
彼らはそれに納得して研究対象になったのだ」

本当だろうか。

「信じられないか?」

クリスさんは彼らに視線を向けた。

「だが、私がしていることを
否と言う者はいない。

もし研究対象者が異論があれば
声を挙げる者もいるだろう。

その者の親しい人間が
調べるかもしれない。

だが、そういったことは今までなかった。

つまり、双方合意の上だということだ」

私は黙るしかなかった。

反論できる要素も知識もない。

クリスさんは、書類の束をテーブルに投げた。

そしてまた私を部屋の外に促した。

「ねぇ、女神の愛し子さま。
彼らは何故、こんな研究に身を捧げたのか
わかるかい?」

死ぬかもしれないのに。

言外に、そう込められている。

私は首を振った。

「彼らもまた、
女神に裏切られたのさ」

クリスさんは言う。

廊下は長かった。

「彼らは人生に絶望した。
そして、この街に来た。

この街は、芸を商売にする人間が多い。
学が無い者。
犯罪を犯した者。
どうやっても生きていけない者が集まる場所だ。

だが、この街でも
生きていけないものが出る。

芸ができない者だ。

不器用で芸ができない者もいれば、
訓練が苦しくて諦める者もいる。

元々身分を持っていた者は
「平民に笑われて金を得る」ことに
耐えがたい屈辱を感じ、
死を選ぶ者もいた。

そう言った者たちは、
<闇>を生み、同じように<闇>を
生む仲間を欲した」

「そういった人たちが
自ら志願したと?」

「そうだ。
だが、この実験は
私が始めたものではない」

廊下が終わった。


だが、クリスさんは立ち止まり、
どの部屋にも入らなかった。

「この実験を始めたのは
この近くにあった村の村長だ。

その村は、この街でも上手く生きることが
できなかった者たちが集まりできた村だ」

……待って?
嫌な予感がする。

「その村では<闇>を生みだす住人が
その<闇>を操る方法を研究していた。

残念ながら、それは<闇>に飲まれ、
魔獣となった住人の一人によって
滅ぼされてしまったがね。

そしてそれを引きついたのが、
この街の領主だったわけだ」

「……その領主さんは今どこに?」

「さぁ。
急に消えた領主の代わりに
私がこの街の代行領主になった。

この街には不可解なことが多くてね。
兄に頼まれ、仕方なく調べるついでに
この街の代行領主を受け入れたのさ。

そして領主の館でこの屋敷や
研究のことを知り、今に至ったわけだ」

クリスさんは私をじっと見つめた。

「さて。
私の種明かしはここまでだ。
次は君の番だ」

ごくり、と私は唾を飲み込んだ。

「この話を聞いて、
君は何をしてくれるんだい?
女神の愛し子さん」

クリスさんが話した村はきっと…
私が気になったあの教会の村のことだ。

どうする?

いや、私に、何ができる?


心臓が、うるさい。

私はぎゅっと拳を握った。


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