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エピソード集<R18>
お披露目からの裸体盛…?<3>
しおりを挟むひたすら文句を言っているヴァイオリンと
カーティスを横目に、
スタンリーは私からベールを取った。
「着替えるか?」
「うん、ありがとう」
正直、一人では脱げそうにない。
「試合の時、ユウのベールが
取れただろう」
「そうだったね。
応援するのに夢中になって」
「私は嬉しかったが、
ユウの美しさが皆に知られてしまったな」
美しさって。
スタンリーは真面目なくせに、
こういうところが、
素直というか、恥ずかしい。
「そうして、すぐ顔を
赤く染めるのも可愛らしいと私は思う」
さらに赤くなるようなことを
真顔で言うスタンリーに
私は内心、身もだえた。
誰かに褒められるのも
愛されるのも、正直、
そんなにまだ慣れていない。
いつか恥ずかしぬんじゃないかと
思っていると、不意に
ヴァイオリンとカーティスが
私の傍に立った。
「おい、なんでユウを
脱がしてるんだ?」
ヴァイオリンがスタンリーの
手を掴む。
「着替えを手伝ってるだけだ。
一人では脱げないだろう」
「じゃあ、私が
手伝ってあげるよ、ユウ。
いつも私が脱がしてあげてたものね」
カーティスが言いながら
私の服を大胆に脱がそうとする。
まって、まって。
背中のボタンを外してもらったら
あとは一人でできるから。
私は慌てて身をよじって
カーティスの手を逃れた。
「汗かいちゃったし、
お湯を浴びてくるから…
皆も着替えて来て?
ね。
せっかくカッコいいお揃いの服が
汚れたらもったいないもん」
そう言ったら、
3人とも私と自分たちの
白い服を見て、頷いた。
「すぐに戻る」
ヴァイオリンは早足で
ドアに向かった。
「じゃあ、
私も着替えてこようか。
護衛はドアの外にいるから
部屋に出たらダメだよ」
カーティスもそう言って
部屋を出ていく。
「何かあれば、
護衛に声を掛けろ。
すぐにもどってくる」
最後にスタンリーが
私の頭を撫でて、出て行った。
やれやれ。
私はゆっくりお風呂に
入らせてもらうことにした。
朝からずっと外にいたのだ。
疲れないはずがない。
お昼に休憩があって、
サンドイッチを食べさせてもらったけど
闘技場みたいなところでは
気も休まらなかった。
でも。
恰好良かったな、3人とも。
戦ってる姿を
初めて見た気がする。
命の危険がないからこそ、
のんびり応援ができたのだとは思うけど。
ふーっと息を吐いて、
私は湯に浸かった。
気持ちいい。
元の世界では、
広いお風呂に入ることは無かった。
アパートのお風呂は
狭かったし、
育った施設のお風呂も
広いと言えば広かったけど
子どもたち皆と入るので、
ゆっくりお湯に浸かることは
あまりなかったと思う。
夏の暑い日は、
庭でホースを使った
水まきの時に、ついでに
頭も洗って夜はお風呂無し、
なんてことも、多々あった。
たぶん、水道代を
節約してたんだと思う。
そんなわけで、
一人でのんびり、
足を伸ばしてお風呂に入るのは、
私にとってはかなりの贅沢だ。
のんびり湯に浸かって、
身体を洗って。
洗ってからもまた、
湯に浸かる。
そうしていたからだろう。
「ユウ、大丈夫?」
ってカーティスの声がした。
「あ、うん」
慌てて返事をしたら、
浴室の扉が開いた。
「あんまり遅いから
中で倒れてるかと思った」
なんて笑うから、
私は慌てて湯から出る。
「ごめんね、のんびりしちゃった」
お湯からでると、
カーティスが大きなタオルで
私をくるんでくれる。
「大丈夫。
急かしちゃったかな」
「ううん。
そろそろ出るつもりだったから」
私の身体を拭くのを
手伝ってくれるけど、
カーティスって王子様なんだよね。
そう思うと、
不思議と言うか、
なんというか…
不敬、とは思わない。
元の世界で王様っていなかったから
何が普通なのかよくわからない。
総理大臣が目の前にいても、
たぶん、偉い人とは思うけど、
話をするのに不敬とかは思わない気がする。
日本人って、敗戦国だからか
そういうのを曖昧にしがちだし。
だからカーティスが
王子様でも私にとっては
大切な人で、大事な友人でもあって。
大好きって思う人でもあるけれど。
カーティスが私の世話を焼くのを
嫌がる人もいるんだろとは、思っている。
だって、皆に守られて
あまり外に出ない私でも、
階級とか、地位とか、家柄とか、
そういうのが厳しい世界だって、
みんなのことを見ていたら
なんとなく理解できてきたから。
カーティスに連れられて
ソファーの所に戻ると、
スタンリーもヴァレリアンも
すでに楽なシャツの姿になって
戻ってきていた。
「どうした? ユウ。
難しい顔をして」
スタンリーが聞いてきた。
このスタンリーも宰相の息子で
ヴァイオリンは王弟の息子なんだよね。
ほんと、金聖騎士団って
権力者の集まりみたい。
いつか嫉妬されて、
嫌がらせとかされたりして。
なんて考えて。
つらつらとそんな話をしたら
ヴァイオリンは呆れたような顔をした。
「嫉妬されるなら俺たちの方だろ。
なにせ、女神の愛し子を
独り占めだからな」
「確かに」とスタンリーも頷く。
「それに私は王子でも
3番目だからな」
カーティスだけが
少しひっかかる言い方をした。
「何番目に生まれても
カーティスはカーティスでしょ?
何が違うの?」
「そう…だね。
何も、違わない…かな?」
「きゃっ」
カーティスはそう言って
私を抱き上げた。
私はまだ、裸のままだ。
大きなタオルを
体に巻いているとはいえ
早く着替えたい。
「ユウ、お腹すいてない?
軽食を用意させたんだ」
楽しそうな声で
カーティスは私をソファーに座らせた。
着替え…と思ったけど、
カーティスが嬉しそうなので
言い出せない。
テーブルの上には
フルーツが綺麗にカットされて
大きなお皿に並んであった。
夕食まで少し時間があるからか
ゼリーのような甘い軽食も
一緒に置いてある。
「何か食べる?」
カーティスが私の横に座り、
お皿を手に取った。
「待て、先に服を着た方が良いだろう」
スタンリーが声を掛けてくれた。
「このままでも構わないよ。
どうせ、脱ぐんだから」
……脱ぐ?
カーティスが不穏なことを言う。
私が眉をひそめると
ヴァイオリンが笑った。
「そうだな。
ユウはどうせ脱ぐからな」
「なんで?」
聞き返すと、ヴァイオリンは
にやり、と笑う。
「ユウはここで皿になるからだ」
は?
何を言ってるんだろう、って
顔でヴァイオリンを見たら
同じような顔で
スタンリーとカーティスも
ヴァイオリンを見ていた。
「ユウを皿にして
これを食べるのも、美味そうだろ?」
ってヴァイオリンが
笑いながらテーブルの上の
果物を指さす。
カーティスの目が輝いた。
スタンリーも息を飲む。
え?
どういうこと?
「な、ユウ。いいだろ?
頑張った俺たちに、ご褒美だ」
ご褒美…?
は、いいけど。
まって?
状況がつかめてないの、
私だけ???
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