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番外編<SIDE勇>
34:好き
しおりを挟む僕は真翔さんに抱きしめらて、
何度もキスをされた。
恥ずかしいところを舐められて
指で触られて。
僕は本当に恥ずかしくて。
僕は女の人の身体を
よくわかっていなかったから、
真翔さんの指が体の中に
入ってきて驚いた。
人間の体に
外から指が入るような
場所があるって思ってなかったから。
そこで初めて怖くなって…
声を挙げたら、真翔さんが
「痛かった?」って聞いてくれた。
痛いのはちょっとだけだったけど
とにかく怖くて驚いて。
何も考えられなくなっていた。
そしたらまた
真翔さんが優しいキスをしてくれて
抱きしめてくれた。
僕が安心する腕の中だ。
真翔さんが、
もうちょっとだけ付き合って、って
言って、僕の足を掴んできて。
僕はそこで初めて
真翔さんが下着を履いてないことに
気が付いたんだ。
真翔さんのそれは
僕が見たことないほど大きくて
大人の男の人のものだった。
僕はもともと小柄だったし、
あまりご飯を食べてなかったから
発育も遅かった。
悠子ちゃんと体が
入れ替わったとき、僕は
18歳だったけど、真翔さん
みたいな大人の身体はしていなかった。
急に真翔さんが
大人の男の人に見えて来て、
僕は…
うろたえてしまった。
真翔さんが僕をぎゅーっと
抱きしめて。
射精したんだと思う。
あったかいものが
お腹や足に掛かって。
僕は本当に自分が
女の子の体になっていて、
真翔さんは男の人で。
真翔さんは僕のことを
「好き」って言ってくれていることに気がついた。
気が付いた…というか
実感した、と言った方が良いかもしれない。
今までは、ふわふわした気持ちで
真翔さんが傍にいてくれて嬉しくて。
真翔さんは
お兄さんみたいだと思ったし、
一緒に居て好きだと
思うこともあったけど
こんな大人の人たちが
抱き合うような
「好き」ではなかったと思う。
というか、
意識していなかった。
でも真翔さんは
ずっと僕のことを
そういう相手として見てくれていたんだ。
嬉しいけれど、
戸惑いの方が大きくて。
僕はどうしていいかわからなくなった。
真翔さんは
「ごめんね、止まれなくて」
と僕にまたキスをした。
そして僕を抱き起してくれて
もう一度、お風呂に入ろうって
言ってくれた。
この部屋のお風呂は
大人2人が入れるような
広さはないので、
僕はさきにシャワーを浴びた。
何も考えられなくて、
ただ真翔さんに言われるがまま
僕は着替えて、こたつに座る。
僕の後、シャワーを浴びた
真翔さんが隣に座った。
「いきなり…
強引にして、ごめん」
真翔さんが僕の手を握った。
「でも、好きだ」
ってまた、言われた。
好き、って言葉。
悠子ちゃん以外の人には
言われたことが無い。
僕にとっては特別な言葉だ。
だって、僕は今まで誰かに…
悠子ちゃん以外の人に
「好き」って言われたことがないから。
母親も、母親を捨てた父親も。
母を愛したはずの義父親も。
僕に暴力をふるって、
殴るだけ殴って、僕を捨てた。
施設の先生たちは
優しかったけれど。
「好き」とかは言わなかった。
仕事だから、一線引いて
接していたのかもしれない。
それに、ずっと自分の殻に
閉じこもっていた僕は
周囲の大人たちには
おそらく扱いにくい子どもだっただろう。
そんな僕に唯一愛情を
注いでくれたのが悠子ちゃんだった。
僕は悠子ちゃんが大好きだった。
頼りになって明るくて。
いつだって僕を守ってくれて。
僕は…
真翔さんは僕を好きだと言ってくれるけど、
きっと、悠子ちゃんが好きなんだ。
この体は悠子ちゃんのもので、
真翔さんが「可愛い」と思うのは
悠子ちゃんだからで。
僕は……
色んなものが手に入ったと思った。
悠子ちゃんと入れ替わってから
工場のおばちゃんたちや
居酒屋の店長さんやOLさん。
そして真翔さんと出会って
優しくしてもらって。
それはずっと欲しかったものだったから
僕は嬉しかったけれど。
でも、それらは
僕のものでは無くて、
悠子ちゃんのものだったんだ。
急に現実が見えて来た。
僕は…悠子ちゃんを犠牲にした。
悠子ちゃんは許してくれたけど、
僕は今、その罰を受けているんだ。
だって、僕は…
真翔さんが好きだ。
真翔さんは僕ではなく
悠子ちゃんが好きなのに。
真翔さんが好きなのは
僕ではないのに。
僕はそれを隠したまま
悠子ちゃんの代わりに真翔さんの
そばにいるんだ。
涙が…零れた。
ばかみたいだ。
ここまできて、
ようやく僕がどんなに
馬鹿だったか、理解できた。
悠子ちゃんに泣いて謝って、
馬鹿な生き方をしたと
後悔したけれど。
でも、あの時は
本当に理解していた
わけではなかったんだ。
悠子ちゃんが幸せだと
笑ってくれたから、
僕も許されたと思った。
でも。
僕が自分で自分を
殺してしまった罪は償えない。
僕はこのまま、
一生、悠子ちゃんの代わりに、
悠子ちゃんとして
真翔さんに「好き」って
言われて生きていくんだ。
なんて…
罰だんだろう。
最初は悠子ちゃんの代役で
悠子ちゃんが戻ってくるまで
悠子ちゃんの人生を
守るだけのつもりだった。
でも悠子ちゃんの
周りには優しい人ばかりで
それは僕には眩しいぐらい
心地よくて、嬉しくて。
僕は…
勘違いをしてしまったんだ。
みんなの優しさは
僕ではなく悠子ちゃんに
向けられていたのに。
僕は、ごめんなさい、と
真翔さんに謝った。
泣いて…
泣いて。
泣いて許されるはずもないのに
「好きになって、ごめんなさい」
僕は真翔さんの手を
握り返した。
真翔さんのことは
僕も好きだ。
真翔さんは僕にとって
特別な人。
悠子ちゃん以外で
初めて心を許した人。
一緒にいて楽しくて、
真翔さんは僕に
色んなことを教えてくれた。
悠子ちゃんは僕に
笑い方や、優しさや、
愛情を教えてくれたけど、
真翔さんはもっと
その先のことを教えてくれた。
誰かと一緒にいたら
楽しいと思えること。
誰かと一緒にいても
嬉しいって思えること。
楽しい、嬉しいが重なったら、
また会いたいって思うこと。
真翔さんは僕を
カフェに連れて行ってくれた。
洋服も初めて買った。
動物園にも行けた。
真翔さんは僕に
初めての経験を沢山与えてくれたけど、
どんな経験も僕は楽しくて
嬉しかった。
でも、それは真翔さんが
悠子ちゃんにしてあげたかったこと。
僕が受け取るべき愛情では
なかったんだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
勘違いをしていた。
真翔さんを好きになってしまってた。
僕は愛情に疎いから、
こんなに気持ちが育つまで、
何もわかっていなかった。
「真翔さんのこと…
好き…になって、
ごめんなさい」
僕はそれしか、言えない。
真翔さんは驚いた様子で
僕を抱きしめてくれた。
そこは安心できる
とっても心地よい場所で。
僕はまた
大きな胸の中で泣いた。
心の中で悠子ちゃんに
沢山あやまって、
僕はそのまま…眠ってしまった。
混乱した真翔さんのことなど
考えることもできなかったんだ。
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