【R18】完結・女なのにBL世界?!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

たたら

文字の大きさ
上 下
191 / 208
番外編<SIDE勇>

25:うさぎが可愛すぎる

しおりを挟む





僕は洗濯物を部屋に干してから
真翔さんと一緒に駅に向かった。

僕は人混みが苦手で、
電車もあまり乗ったことが無い。

以前は駅も苦手だったけど、
真翔さんが手を繋いでくれるから
だいぶ、苦手意識はなくなった。

真翔さんに守ってもらえているみたいで
安心するからだと思う。

今日の僕は、この前の
休みの日に買った白いブラウスと、
厚手の…キルトみたいな生地のスカート。
それから茶色いコートを羽織っている。

今迄おしゃれとか気にしたことなかったけど、
真翔さんの隣に並ぶのだから、
相応の恰好をしないとダメだと思ったのだ。

でも僕は何を買っていいか
わからなかったから、真翔さんに
お願いをして、真翔さんが
良く買うと言うブランドのお店を
紹介してもらった。

そのお店の姉妹店が女性専用の
お店になっていて、
僕はそこで…それこそ全部。

足元から頭のてっぺんまで
ぜーんぶ、お店のお姉さんのコーディネートで
一式、買ってしまった。

僕があまりにも変な買い方をしたからか、
その日から僕がお店の前を通ると、
お姉さんは声を掛けてくれるようになった。

服は買ったりかわなかったり。

お店の人に話しかけられたら
絶対に買わないといけないと思っていて、
最初は嫌だったけど、

お姉さんは僕の思っていたことは
わかってくれていたみたいで

「別に毎回買わなくていいからね。
この店、暇だから、私も退屈なの。
おしゃべりしていってよ」

って言ってくれた。

年はたぶん、悠子ちゃんより
少し上ぐらい。

でも気さくに話しかけてくれて、
明るくて元気で、話をしてても
全然嫌じゃない。

だから僕はたまに、
このお店に一人でも行くようになった。

初めて来たときは
怖くて真翔さんに連れて来てもらったけど。

工場の仕事があっても
居酒屋のバイトが休みの日は
真翔さんとは会わないので、

そんな時は普通に食料品を
買いに出かけたりする。

そのついでに、服屋さんにも
時間があったら寄るようになったのだ。

おかげで簡素だった
悠子ちゃんのクローゼットは
今は、色とりどりの服が入っている。

でもこれぐらい、いいよね。

僕がお金を使うのって、
普段は食費や光熱費ぐらいだし。

それ以外は真翔さんのために
使ってもいいと思うんだ。

だって、僕が稼いだお金だもん。

真翔さんと駅まで来て、
僕はドキドキする。

だって、電車ってあまり乗ったことが無い。

僕が慣れてないのがわったみたいで、
真翔さんが切符を買ってくれた。

お金を払わなきゃって思ったけど、
それを言う前に手を繋がれて、
改札を通る。

凄い。

機械が切符を処理する速さに
驚いていたら、今度は電車で驚いた。

思ったよりも人が多い。

悠子ちゃんが電車が苦手で
3駅以上乗ったら気分が悪くなる、
って言ってたけど。

わかる気がする。

動物園まで3駅。
僕は大丈夫かな?

座るところが無くて、
僕と真翔さんは出入口付近の
吊革を持った。

他人との距離が思ったよりも近い。

そうなると…やっぱり僕は
緊張して、怖くなる。

誰も僕を傷つけないって
わかってるのに、身体がこわばってくる。

そんな僕を、真翔さんは
後ろから抱きしめてくれた。

片手でつり革を持ったまま、
片手で僕のお腹に腕をまわしてくる。

真翔さんの体温に、ほっとして。
僕は真翔さんに少しだけもたれた。

……息がしやすい。

真翔さんの顔は前を向いていて、
視線は絡まなかったけど、
真翔さんの優しさが伝わってくる。

真翔さんと、ずっと一緒に居たいな。

そう思っていたら、3駅なんて
あっという間だった。

僕はとうとう、念願の動物園に来てしまったのだ。








動物園は、大興奮の場所だった。

僕がはしゃぎすぎたからか、
真翔さんは僕の手をぎゅっと握って
離さなかった。

心配させたかな?

ライオンは大迫力だったし、
ペンギンは可愛かった。

僕が可愛い物好きなのは、
たぶん、悠子ちゃんの影響だと思う。

施設には、おもちゃとか人形とか
遊ぶものがあまりなかったので
僕と悠子ちゃんはいつも
『可愛い物』を探して遊んでいた。

たとえば、施設の庭に落ちていた
小さい丸い石が『可愛い』

小学校に行く途中にある
ショウウインドウ飾られている
クマのぬいぐるみが『可愛い』

中学校のそばにある家の
出窓からいつも外を見ている
子犬が『可愛い』

一日で、どっちが『可愛い物』を
沢山見つけられたかを競って、
僕たちは遊んだ。

今から思うとこれは、
怖くて外に出れなかった僕のために
悠子ちゃんが考えてくれた
遊びだったのかな、って思う。

悠子ちゃんが高校生になって、
一緒に居る時間が少なくなってからは
あまり『可愛い』を探す遊びは
しなくなったけど。

でも僕は、悠子ちゃんと一緒に
『可愛いもの』が好きになってしまった。

そして…
動物園でも、やっぱり、うさぎは可愛い。

僕は動物触れあいコーナーに
もう1時間はいる。

うさぎが可愛すぎて、出れない。

真翔さんは退屈してないかな?
って思うけど、にこにこ笑って
僕を見ているから、大丈夫っぽい。

あとたまに、うさぎの写真を
スマホで撮ってるから、
真翔さんもうさぎが好きなのかも。

たまに小声で
「可愛い」って何度もつぶやいてるし。

でも、真翔さんは何故か
自分からは、うさぎを触ろうとしない。

生き物が怖いのかな?

僕はそっと真翔さんの手を取って、
僕の膝に乗せたうさぎを触らせてあげた。

真翔さんの手に、自分の手を添えて、
「こうやって撫でたら、
ふわふわで、気持ちいいんですよ」
って教えてあげる。

そしたら…真翔さんは
顔を真っ赤にして、嬉しそうに笑った。

良かった。
やっぱり、うさぎに触りたかったんだ。

そこから僕は、真翔さんの手の上から
自分の手を乗せて、
二人でうさぎを抱っこしたり、
なでなでしたり。

真翔さんは一人では
うさぎを触れないみたいだったから
僕が真翔さんの手を誘導して
沢山、触らせてあげたんだ。

僕はあまり、うさぎのもふもふを
触れなくなってしまったけど。

真翔さんの指の間から
うさぎの柔らかい毛が出てきていて
それを撫でるだけでも楽しかった。

沢山うさぎを堪能して、
僕たちは動物園を出た。

少し遅くなったけど、
一緒にお昼ご飯を食べることにする。

外食はあまりしたことがないけれど、
真翔さんと一緒なら大丈夫だ。

僕は一人だと、怖くて
飲食店に入ることができないんだ。

だいぶ慣れたけど、
知らない人の視線が、まだ怖い。

だから、美味しそうなグラタンの
食品サンプルが飾ってあったお店に
入った時も。

4人掛けのテーブルに案内されたけど
僕は真翔さんの隣に座らせてもらった。

真翔さんが隣だと安心するし、
いつもこたつでは、隣に座ってるもんね。

真翔さんと一緒に
アツアツのグラタンを食べて、
可愛いうさぎの話をして。

あと、最後に駅の近くで
ウインドウショッピングをして。

夕方近くになったので帰ることにする。

また…電車で3駅か。

夕方だからか、また人が増えていて、
僕はちょっと憂鬱になる。

楽しかったのにな。

真翔さんが、また切符を買ってくれて、
僕は手を繋いでもらってホームに向かう。

凄い人だ。

嫌だな、って思っていたら、
真翔さんが僕の肩を抱き寄せてくれた。

あったかい。

僕は真翔さんの腰にしがみついた。

一緒に電車に乗ったけど、
真翔さんにしがみついていたら、大丈夫だ。

電車の中は沢山人がいて、
やっぱり僕たちは車両の出入り口付近に
立つことにした。

つり革は無いし、人も沢山いる。

僕は真翔さんの腰にぎゅーっと抱きついて
真翔さんの胸に顔を擦りつけた。

真翔さんはビックリしたのかな?

身体が固くなった気がしたけど、
何も言わないから、3駅の間、
すりすりさせてもらった。

こうしてたら、他の人の視線は
気にならないもん。

地元の駅について、
僕はほっとした。

真翔さんから離れたけど、
今度は何故か、真翔さんが僕にひっついてきた。

僕がずっとしがみついたから
急に離れて寂しくなったのかな?

そう思うと、真翔さんも『可愛い』。

僕は真翔さんの腕にしがみついた。

こういうの、腕を組む、って言うんだよね。

手を繋ぐより、
もっと体温を感じることができるから、
きっと真翔さんも安心するはず。

そう思って、真翔さんを見ると、
また真翔さんは顔を赤くして、
僕から視線を外してしまった。

どうしたんだろう、って
さらに真翔さんの腕を引っ張って
顔を覗き込んだら、
真翔さんのもう片方の手で
顔を遮られた。

「悠子ちゃん、
もうそろそろ勘弁して。
我慢できなくなる」

って、僕は我慢してもらうようなことは
何もしてないんだけど。

最近の真翔さん、
たまに変なことを言うんだよね。

勉強のしすぎなんじゃないかって
密かに心配してるんだ。

できたら…今日も泊っていってくれたらいいのに。

そしたら、ご飯を作って、
真翔さんにマッサージをしてあげて。

疲れが取れるように、
沢山、甘やかしてあげるんだ。

真翔さんにそう言ったら、
真翔さんは僕をぎゅっと抱き寄せて
「可愛すぎる」って呟いた。

どこに『可愛い』があったんだろう?

真翔さんの『可愛い』基準がわかんないや。

でも、真翔さんが嬉しそうだったので、
まぁ、いいか。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

藤枝蕗は逃げている

木村木下
BL
七歳の誕生日を目前に控えたある日、蕗は異世界へ迷い込んでしまった。十五まで生き延びたものの、育ててくれた貴族の家が襲撃され、一人息子である赤ん坊を抱えて逃げることに。なんとか子供を守りつつ王都で暮らしていた。が、守った主人、ローランは年を経るごとに美しくなり、十六で成人を迎えるころには春の女神もかくやという美しさに育ってしまった。しかも、王家から「末姫さまの忘れ形見」と迎えまで来る。 美形王子ローラン×育て親異世界人蕗 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています

【完結】討伐される魔王に転生したので世界平和を目指したら、勇者に溺愛されました

じゅん
BL
 人間領に進撃許可を出そうとしていた美しき魔王は、突如、前世の記憶を思い出す。 「ここ、RPGゲームの世界じゃん! しかもぼく、勇者に倒されて死んじゃうんですけど!」  ぼくは前世では病弱で、18歳で死んでしまった。今度こそ長生きしたい!  勇者に討たれないためには「人と魔族が争わない平和な世の中にすればいい」と、魔王になったぼくは考えて、勇者に協力してもらうことにした。本来は天敵だけど、勇者は魔族だからって差別しない人格者だ。  勇者に誠意を試されるものの、信頼を得ることに成功!   世界平和を進めていくうちに、だんだん勇者との距離が近くなり――。 ※注: R15の回には、小見出しに☆、 R18の回には、小見出しに★をつけています。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

処理中です...