【R18】完結・女なのにBL世界?!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

たたら

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愛を求めて

89:愛のメモリ

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私はお昼ごはんを食べて、
少し休んでから『大聖樹』を見に行った。

エルヴィンとバーナード、
あと、護衛の人たちが2人、ついて来てくれる。

『大聖樹』にはまだ結界が残っていて、
私以外の人たちは『大聖樹』には近づけない。


私は『大聖樹』に手のひらで触れ、
形だけは<祈る>ようなポーズをする。


別に祈らなくてもいいんだけど、
こうした方が、わかりやすいと思ったのだ。


何をしているのかわからないより、
誰が見ても<祈っている>という
状態を作ることで、他の人も
自然に祈りやすいと思ったからだ。


私は『大聖樹』に<愛>を
注ぎ込もうとして…驚いた。


私の【器】が満タンになっていたのだ!


なんで!?

って思ったけど。


たぶん、さっきのジュリさんと
一緒に楽しく遊んだからだ。


そういうのでも
【器】に<愛>は溜まるんだ。


なんか、嬉しくなった。

<愛>って堅苦しく考えてたけど、
そんなことなかった。

一緒にいて、楽しい。
それも<愛>なんだ。

嬉しくて…
その気持ちを『大聖樹』に
伝えたくて。

手を添えたところから
<愛>を送っていると、
ふっと手のひらが光った。

あったかいものが…
今迄とは違った『何か』が
『大聖樹』に流れ込んだ。


すると、『大聖樹』が輝いた。

光を発するというより、
輝く、というような
『大聖樹』全体が、淡く光に包まれたのだ。


誰もが…
その場にいた誰もが『大聖樹』を見た。

その視線の先で…

『大聖樹』は割けた割れ目の
内側から…青々とした若木を伸ばした。

若木はぐんぐん成長し、
やがて割けた『大聖樹』は
若木に取り込まれるように…消えた。

残ったのは若く瑞々しい樹木…
いや、新たな『大聖樹』と
そして青々とした葉。


枝の先には、白い蕾がついていた。


誰もが…息を飲み、
そして、大きな歓声と吐息が
その場を包んだ。



ーーー新しい『大聖樹』が生まれたのだ。




「女神ちゃん、できたよ」
とそっと新たな『大聖樹』に手を当てて
そっと呟いた。

『ユウ、感謝する』
と、短い女神ちゃんの声が聞こえた。


うん。
これで、私のこの場所での役目は終わった。


さて。
これからどうしようかな。


旅に出るにしろ、
準備が必要だし…。


そもそも私、お金とか
そういうのも持ってないし。


魔法も使えるようになった方がいいよね?


旅に出るのに役立つスキルが
エロのスキルだけって、
考えただけで、最悪だし。


そんなことを思いながら
『大聖樹』から手を放して、
一緒に来てくれたエルヴィンと
バーナードのもとに戻ると、


二人とも目を真っ赤にして…
感動してくれたのだろうか。


バーナードは私を抱き上げ、
くるくると回してくれた。


その後、エルヴィンは
私に抱きつき、ぎゅーっと
ぎゅーっと抱きしめてくれた。


痛かったけど、嬉しかった。



その後、すぐにヴァレリアンや
カーティスたちが『大聖樹』の
元にやってきてくれて。

スタンリーもケインも、
聖騎士団をまとめている
ヴァレリアンのお父さんも
王様も宰相様も、教皇も、枢機卿も
皆、『大聖樹』の姿に驚き、喜んでくれた。

そして…
その場にいるすべての人が
私の前に跪く。

「感謝いたします。
女神の愛し子様」

カーティスのお父さんである
王様がそんな言葉を言い、

「女神の愛し子様に
愛と忠誠を」

なんて、ケインのおじいさんである
教皇が言い出して。


どう対応すればいいのか
焦っていると…

「忠誠を誓うのは王家にじゃろ」
と王様が…小声で教皇に反論した。


「何を言う、
女神様を崇拝する教会が
忠誠を誓うのは、女神様のみ」

「なんだと?
女神は女神、人間は、人間じゃ。
そこは分けて考えるべきであろう」

小声で…でも、静かな場所だったので
物凄く大きく聞こえる。

しかもなんか…内容が
小学生の男の子たちの喧嘩みたい。

思わず、クスっと笑ってしまって。

王様も教皇も、はっと、私を見た。

「父上、恥ずかしいですよ」

「おじいさまも」

と、カーティスとケインが
間に入ってくれて。

なんとなく場が和んだ。

その後、すぐにヴァレリアンの
お父さんが全員解散!って
大きな声を出して。

私はその声にビックリしてしまった。

王様は、カーティスと同じ
綺麗な金髪だった。

優しい、温和な顔立ちで
物語の王子様が成長したら
こんな素敵な王様になるのかな、って
思えるような人だった。


でも、さっきの発言があるから、
子どもっぽい所も
あるのかもしれない。


ケインのおじいさんは、
シャープな顔立ちで、
あと20年もすれば『立ち枯れ』
という言葉が似あいそうな方だった。

おじいさん、って言うから
老人をイメージしていたけど
どうみても50代ぐらい。

ケインと同じ赤い髪に
きつい印象の細い目を見ただけで
「怖い」とか「厳しそう」って
思ってしまう。

うん。
きっと怒られたら怖いかも。

でも、王様と言いあう姿は
子どもの喧嘩みたいで、
もしかしたら仲良しなのでは?
って思ってしまった。


ヴァレリアンのお父さんは
物凄く大きくて…。


背も高いし、肩幅も大きい。
王家の証の金色の髪も素敵…だが、
近くに来られると見上げるしかない。

大きい人はバーナードで
見慣れていると思ったけど、
こんなに大きい人だとは。

でも、かっこいい。

聖騎士団の制服を着てるんだろうけど
文句なしでカッコいい。

あのOLさんに写真を送ってあげたい。

なんて思いつつ、ぼーっと
ヴァレリアンのお父さんを見ていたら
急にツカツカと歩いて目の前に来られた。


そして、ヴァレリアンがしてくれたように
身をかがめて、私と視線を合わせてくれる。


「挨拶が遅れてすまない。
息子がお世話になっている。
私は……」


「親父!」


せっかくお父さんが
名乗ってくれそうなのに、
ヴァレリアンが邪魔をした。


「挨拶は、まだするなって
言っておいただろう?

国王も、宰相も、教皇も枢機卿も
全員、ユウのお披露目会を
するときに全員一緒に
挨拶するって決めてただろうが。

一人で先走ると、
ややこしくなるから、やめてくれ」


え?
お披露目会なんてあるの?

ちょっと、嫌かも。


「だがしかし…
お前たちが囲ってるから
こんな機会がないと会えないし、
な?」

と最後は私を見て、
にっこりと笑った。


カッコいい!って思ったら、
急に体が浮いて、ヴァレリアンの
お父さんに抱き上げられた。


高い!

凄い!

気持ちいいー!!


って思ったけど。
すぐにヴァレリアンの手が
私の腰に回って奪回される。


「早く行けって。
面倒なことになるぞ」

ヴァレリアンが嫌そうに言うと、
ヴァレリアンのお父さんは
仕方ないか、と私の頭を軽く撫でた。

そして先に護衛の人たちと
一緒に出て行った王様たちの後を追った。


「ふー。まったく」

とヴァレリアンが呟いて、
私の顔を覗きこむ。


「すごいな、とうとう
『大聖樹』が蘇ったな」

ヴァレリアンは子どものように
目をキラキラさせている。

「うん、あのね。
たぶん……わっ」

ジュリさんのおかげだって
言う前に、私はカーティスの腕の中にいた。

「ヴァレリアン、独り占めは
禁止だと言っておいただろう。

ありがとう、ユウ。
良くやってくれた」

「うん、あのね、
私の【器】に<愛>が
溜まったのは…え!?」

ジュリさんのおかげですよー。
と言う前に、今度は
スタンリーに抱き上げられていた。

「よくやったな、ユウ。
素晴らしい功績だ」

「あ、ありがとう。
えっとね、これはね」

「ユウ!」


今度はケインが…大きな声で
私の名を呼んだかと思うと、
足元に跪いた。

「ちょ、ちょっと、ケイン?」

「ありがとう。
これで、本当に…世界は救われた」

いやいや、重たい!

いや、世界を救うってのは、
重たいとうか、すごいことなんだろうけど。

私は…可愛いクマの着せ替えごっこで
<愛>が溜まったと言い出しにくく
なってしまい…

へて、と曖昧に笑って
その場をごまかすことにした。


仕方ないでしょ?



クマのぬいぐるみに世界が救われたなんて
言える状況じゃないんだもん。






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