【R18】完結・女なのにBL世界?!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

たたら

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愛とエロはゆっくりはぐくみましょう

48:どうでもいいから、抱きつぶしたい<ヴァレリアンSIDE【2】>

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カーティスたちと別れてから、
俺たちは馬車で王都に向かっていた。

とはいえ、慣れない馬車でユウが体調を崩さないよう
休憩は多めに取り、野営はできるだけ避けた。


ユウは構わないと言っていたが、
見張りの数も少ないし、魔獣がでなくても
野犬などの心配もある。


それに、そろそろ朝晩が寒くなってくる時期だ。
野営では、ユウが病になってしまう可能性もある。


俺たちは表面上は、いつも通りだった。


小さな村で警戒されそうなときは
俺とバーナードは聖騎士団の制服を着て
食料と宿を確保した。


ユウはできるだけフードをかぶせて
黒髪黒目を見られないようにしたが、
一応、ケインの聖騎士団の上着を持たせていた。

新しい村や町に着いたら、
ユウは珍しそうにはしゃぐ。


目立つようなことはして欲しくないのだが、
嬉しそうな姿に、つい、俺も甘くなる。

小さな村では宿のようなものは無いので、
たいてい、村長の家に泊めてもらったり、
そのお礼に、小さな困りごと……

たとえば、年よりの腰が痛いとか
最近、作物の出来栄えが悪いとか、
近くに魔物が出たとか。


そういった問題の解決に手を貸すことが多い。


すぐに解決できることは、すぐに行動し、
無理そうな場合は、
王都に俺の名前で陳情書を送る。


まぁ、王都に陳情書を送るほどの困りごとなど、
ほとんど無いのだが。

小さな怪我や病気は俺たち聖騎士なら治すことも可能だし、
魔物退治も問題ない。


問題なのは…俺のイライラだけだ。



今日ついた町は、
かなり大きな町だった。
王都にも近づいてきたので、
商業が発展しており、
珍しいものも、たくさんある。


ユウは無邪気に露店に並ぶ果物を見て笑い、
俺はそれをユウに買ってやった。


ユウは俺のコートを着せ、
フードを深くかぶせているが
そんなことでは防げない程、
可愛いオーラを全開にしている。


はしゃぐたびに俺はユウの髪を撫でるふりをして、
フードを深くかぶらせた。


バーナードには、
宿を押さえるように指示して、
俺は今、ユウが行きたがった露店巡りをしている。


俺が買ってやった赤い果物…薄い皮に包まれた
柔らかい実のモーモという果実は、
かじると、甘い汁がこぼれ落ちる。


ユウは知らなかったようで、歩きながら
モーモをかじり、口もとを果汁でぼとぼとにしながら
俺の後をついてくる。


子どものようだ。

だが、モーモをかじる歯も、
果汁を舐める舌も、
とことん、俺の情欲をそそり、煽ってくる。


ユウを抱いたのは、あの時、一度だけだ。

あれから野獣の件や妖精のことがあったので
うやむやになってしまった感はあるが、
ユウは俺のものだ。


そしてそれを、ユウを受け入れている。
……はずだ。


だから、俺はユウをいつ抱いてもいいわけで。


「ヴァレリアン、戻ってきたみたいだよ」


俺を呼ぶ声に、思考が途切れる。

ユウが笑って手を振っている。
その方向を見ると、バーナードがいた。

宿が取れたらしい。

合流するなり、バーナードは
ユウの姿に苦笑した。

「随分な姿だな」

呆れたような声に、ユウは果物、おいしかった、と笑う。

バーナードは持っていた布をユウに渡して
口を拭くように言いながら、俺に視線を向けた。


「宿は取れたんですが、すみません」

「どうした?」

「安い宿が全滅で、なんとか2部屋押さえたのですが…」

バーナードは言いよどむ。

「まぁ、寝れればそれで構わないだろう」

俺はあまり考えずに言った。

バーナードは、ほっとしたような顔をした。

安宿でそういう態度ならわかるが、
何を気にしているのだろう。

そう不思議に思ったが、
その理由はすぐにわかった。


「わー、お城みたーい」

喜ぶユウに、俺はどういっていいか悩んだ。

ここは、確かに宿は宿だ。
ただし…愛し合う者同士が泊まる、
いわゆる連れ込み宿のような場所。

一応、金を持っている者しか
泊まることができない宿ではあるようだが、
確かに、聖騎士団の人間が止まるような場所ではないだろう。



幸い、今は私服なので聖騎士団の人間だと
バレることは無いとは思うが。


俺はもう一度、ユウにフードを深くかぶらせる。

ユウの黒い目と黒い髪はとにかく目立つし、
街は村よりも人目が多い。

余計なうわさが立つのも困る。


「仕方ない、入るか」


嫌だとか言っている場合ではない。

しかし、この宿に3人で
2部屋を取るなんて良く宿側が許可したな。
と、バーナードを見る。

連れ込み宿は、宿を使う理由が理由なので、
一人で一部屋を使うことはめったにない。

逆に一人で一部屋使うのは、
よからぬことを考えている者になる。

そんな宿で、一部屋を3人で使うならともかく、
2部屋取れたというのは、珍しい。

「誰も借りたがらない部屋がちょうど2部屋あったんです」

言いながら、バーナードは俺の手に鍵を渡した。

「どうせ隊長はユウと一緒に泊まるつもりでしょうから
こちらをどうぞ。

俺は、隣の部屋です」


そう言って案内された部屋を見て、
俺は<借り手が無い>の意味が分かった。


俺たちの部屋は最上階で、3部屋ぶち抜きの
大きな……おそらく、王族だの侯爵だのがお忍びで
借りることを想定したような部屋だった。

とはいえ、王族や侯爵はこんな宿に泊まることはない。

おそらく宿泊するなら自分の別宅か、それがなければ
交流のある貴族の屋敷を使うだろう。

お忍びであっても、連れ込み宿なんぞは使わない。

だが、部屋の調度品はかなり質が良く、
宿側はかなりの費用を掛けて部屋をあつらえたことがわかった。


「俺が部屋を探してたら、ここの主人がこの部屋を勧めてきまして。

貴族なら豪華な部屋を好むだろうと、この部屋を作ったのはいいが
誰も借りてくれない。
半額でもいいから、使って欲しい、と言うので…
まぁ、一応、ヴァレリアン団長は王族といえば
王族系列ですし、まぁ、いいかと」

なにが、まあいいか、なのかわからないが。
室内で眠れるのは、
ユウを休ませる意味ではありがたい。


「俺は従者用の部屋が隣にあるので、あちらで寝ます」

指さした<隣の部屋>の扉までは、
かなりの距離があった。

「……誰がこんな部屋を借りると思って作ったんだろうな?」

「まったくです」

従者の部屋も遠すぎる。

呼んでも声が聞こえない場所では意味がない。

俺は呆れたが「部屋の中もお城みたいー」
と喜ぶユウに、文句を言うのをやめた。


「バーナード、見てみてこれ!」

とユウがバーナードを見て、
何かと思うと、ベットの上にぬいぐるみが置いてあった。

調度品扱いなのか、サービスなのか微妙なところだ。

「可愛いね」


とユウが笑うと、バーナードも嬉しそうにうなずく。

「このお洋服のフリルが可愛いよね」

「そうだな。でもこの丸い小さな目が可愛いな」

俺たちに隠しているつもりだろうが、
バーナードも可愛い物が好きなようなので、
ユウとぬいぐるみ一つで盛り上がっている。

ひとしきり部屋を見てユウは満足したのか、
ソファーに座っている俺の隣に来た。

「これからどうするの?」

「そうだな。夕食を食べて、少し早いが休むか。
明日は早朝に出立する」

「わかった」

「じゃあ、俺は荷物を置いてきます」

バーナードが自分の部屋に行くと言い、
ユウもそれについて行った。

何故行く?と聞くと、バーナードの部屋も見たいそうだ。

子どもか!?

と思ったが、子どもなんだ、と思い直す。

まったく、ユウには振り回されっぱなしだ。

……イライラする。

俺は今まで、色事で困ったことはない。

相手に苦労したことないし、
後腐れがない相手を選んでいたこともあり、
相手が自分をどう思っているかなど、考えたこともなかった。

だが、俺はユウを抱いてから、
あの行為をユウはどう思ったのか、
俺に抱かれることをどう感じているのかを考え不安になった。

ユウは俺のモノだと宣言した。

正確には、カーティスとスタンリーとの3人のモノだったが、
俺はあの時、どうしてもユウが欲しかった。

だから、逃げられないようにユウを説得する理由を並べ立て、
カーティスやスタンリーも巻き込んだ。

あの時、ユウは俺のものになったはずなのに…

何故俺はこんなに、イライラしているのだろうか。





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