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愛とエロはゆっくりはぐくみましょう

39:大きいクマさんは肉食にも草食にもなれる<バーナードSIDE【3】>

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たぶん、死ぬんだと、俺は思った。


ヤツは、どんな攻撃をしても、傷一つ付けれなかった。
体力と魔力の消耗戦だった。


……消耗しているのは、俺たちだけだったが。


それでも俺は、ヴァレリアンの前に立ち、
盾でヤツの牙を、爪を防いだ。


だが、一瞬、後ろにいたはずのヒヨコたちに
ヤツが攻撃しようとしているのに気が付き、態勢がぶれた。

ヴァレリアンとヒヨコたちを天秤にかけたのだ。

団長であるヴァレリアンを何があっても守るべきだったのに。

そう後悔したのは、
俺の胸が鋭い爪で切り裂かれた瞬間だった。


血が噴き出て、やばい、と思う。


俺も聖魔法は使えるが、気休め程度だ。


ヤツの爪は俺の腹も切り裂き、俺の体は勢いよく
ヤツの爪で弾き飛ばされた。


勢いよく、何かにぶつかり、
骨の砕ける音と感触がした。


こんなところで終わるとは。


ユウは無事に逃げれただろうか。


死ぬ前に婚約者ではなく、
ユウのことを考えたからだろう。


意識が消える瞬間に、
ユウの顔を見たような気がした。


そのあとのことは、あまり覚えていない。
ただ、全身を襲っていた痛みが
少しづつ消えていくのはわかった。


流れていく血の感覚が薄くなり、
冷え切っていた指先が
あったかい熱を持つようになった。


俺は生きているのだろうか。


ぼんやりと考えて、俺は目を開けた。


まだ生きているらしい。


と、すぐ目の前にユウの顔があった。


何故かユウは俺の体の上に乗っていた。


下半身には何も身に着けておらず、
どうみても情事の最中のような恰好だった。


俺は混乱した。
確かに俺は死にかけていたのに、
なぜこんなことになっているのだろう。


焦るが、頭があまり、はっきりしない。
体も動かせない。

「ユ……ウ?」

何とか名前を呼ぶ。

そんな俺に、ユウは笑った。

「大丈夫。
絶対に…助ける…から」

その言葉とともに、ユウは何故か勃ち上がっている
俺の欲望に向かって
一気に腰を下ろした。


思わず、くぐもった声が出た。

いつのまに俺は勃ってたのか、とか、
なんでユウが俺にこんなことをしているのかとか。


ぐるぐる考えて、でも、ユウの中は
ものすごく、気持が良かった。


ユウの中は熱く、
俺を受け入れたところから
ぬめるような蜜が出てくる。


俺の猛った欲棒を必死で出し入れするユウの動きを
その蜜が助けているようだった。


必死なユウの額には汗がにじみ、
自分の体を自由に動かせないジレンマが、俺を襲う。


欲を言うと、もっと激しく腰を動かしたい。
ユウを下から突き上げて、俺の欲を注ぎ込みたい。

理性とか、そういうものが全部吹き飛んで、
俺はひたすらユウの中で快感を追った。

気持ちよくて。

でも、心地いい、といった
<気持ちいい>ではなく、
もっと凶暴で、乱暴で、激しい…

相手のことなど関係なく、
ただ、自分の欲望だけを考えて
相手を無茶苦茶にしたい。

いや、無茶苦茶にしてやる!と
叫びたくなるような衝動に駆られる。

そんな、残虐性のある<気持ちいい>だ。

俺の中にそんな<愛>があるなんて思ってもみなかった。

俺は可愛い物が好きで、
優しいものが好きで、

好きな物は、抱きしめて、
愛おしく感じることが<愛>だと思っていた。

けれども、今は違う。

動物的な…理性などかなぐり捨てて
ただ、快楽だけを追う。

ただ、自分の欲望だけが支配している、
そんな世界にいるようだった。

俺は、ユウの腰を掴み、
逃げないように抑え込み、
もっと激しくユウの体を突き上げたいと思った。

もどかしいこんな感覚ではなく、
ただ、俺の精をユウの中にぶちまけたい。

こんなの俺ではない、と頭のどこかで警鐘が鳴る。

驚くほどの残虐的な欲望が沸き起こり、
けれども、体は指一本動かせない。

それでも、俺の猛ったモノは
確実にユウの中で固く勃ち、
俺はユウにされるがまま、快楽を追う。

ユウの体が大きく揺れ、俺の欲望を
キュウっと締め付けた。

たまらない。

ユウの呼吸が粗くなり、
俺も欲望が弾けそうだ。

こんな時に、こんな死にかけている時に、
何をしているのだと思い、そして…

俺は傷が治っていることに気が付いた。

治っている…いや、治っている最中だった。

ユウが動くたび、俺が欲望を感じるたび、
俺の傷口は塞がっていく。


なんてことだ。
ユウは、俺を助けてくれているのか…。

夢中で快楽を追っていた自分が
俺は情けなくなって。

その瞬間、
ユウの内部がこれ以上ないぐらい締まって、
俺は、ユウの中に欲望を吐き出した。

その瞬間、ものすごい光を感じた。

あたたかな光に包まれた。

生きてるんだ、と思った。

胸にあたたかいものが倒れてきた。
ユウの体だ。

もし体が動いたら、
俺はユウを抱きしめられるのに。








次に目を覚ました時は、俺は村の宿屋の一室だった。
傷は綺麗に塞がっていたが、丸一日寝ていたらしい。

起きたらヒヨコたちが飛びついてきて、
俺の体は重たくて、ベットに入れるのは大変だったと
号泣しながら訴えられた。


その後、ヴァレリアンやカーティス、スタンリーも
顔を見せ、俺が目を覚ましたことを喜んでくれた。


俺が意識を失っていた間のことを
スタンリーが説明してくれる。


ユウからいきなり<聖魔法>が発せられたこと。
ものすごい光で、その場にいた全員の傷が治ったこと。

ついでに魔獣も一瞬で消えてしまったこと。

ただし、その時に魔力を使い過ぎたようで
ユウは眠り続けていること。

そんなことを簡潔に伝えてくれる。

俺がどうやって生き返ったのか、
どうやら誰も気が付いていないようだった。


俺の傷も、そのユウの<聖魔法>で
治ったとおもっているようだ。

ならば、言わない方が良いだろう。
余計な火種になる。



ユウが目を覚ましたら、
俺はなんて言えばいいんだろうか。

助けてくれてありがとう。
そして…


あの行為のことを、ユウはどう思っているのだろう。

人命救助……?

それで済ませていいのか?

いや、もしそうだとして、あれを俺以外の人間に…。

いやいや、待て。
誰彼も、やっていいことじゃない。


いや、人命救助は大切だ。
だが、あの方法は…俺はその、それで助かったが。


あんな子どもが、いや子どもではないが、
それでも、だ。


俺がいきなり押し黙ったからだろう。
スタンリーが、今は休め、と声を掛けてくれた。


俺は素直にうなずく。


次、ユウが目を覚ますまでに、何を言うか考えておこう。

でもまずは、助けてくれてありがとう、だな。


俺は何度もその言葉を繰り返す。


でも、結局、その言葉をなかなか伝えることができない未来が
待っていることを、俺はまだ、知らなかった。





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