【R18】完結・女なのにBL世界?!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

たたら

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急に大ピンチ!やっぱりエロは必要ですか?

35:結局、エロが欲しいようです

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あー、疲れた。

ふわふわした意識の中で、私は呟いた。

寝てるのかな?
夢かな?

女神ちゃんのとこ?

体が重たくて動かない。
夢かと思ったけど、ここは白い女神ちゃんの世界に似ている気がする。

でも、女神ちゃんはいない。


『すまん!』

女神ちゃんの声が頭に響いた。


女神ちゃん?

『あれは、想定外じゃった』

悲痛な声に、さっきの黒いヤツのことを
言っているのだとわかる。


「あれ、なんだったの?
バグ?」

『あれは…【試練】だったのじゃ」

「試練?」


『そうじゃ…言いにくい…のじゃが、
この世界は本当は【聖女の逆ハー、らぶらぶ世界】だったのじゃ!』


…………。


『そんでな、めちゃくちゃ可愛い幼い女の子に
ありったけの祝福を与えてな。

世界にはびこる闇を、ばっさ、ばっさと聖剣で切り裂いてな。

そんで可愛い幼女が成長してくなかで、聖なる力に目覚め、
性愛に目覚め、ハーレムを作りながら
世界を治める壮大な世界にするつもりだったんじゃ!』


ツッコミどころ満載だけど、もういい。
もう違う世界になったんだから。

じゃあ、なんで今はこんなに違う世界になったわけ?

この世界、幼女どころか女の子もいないじゃん。


『幼女より美少年がイイことに気が付いたからじゃ!』


誰だよ、女神ちゃんはやっぱり神だとか言ったやつ。
……私だけど。


『じゃが、路線変更するにも、世界創造試験の提出終了日が
迫っておっての。もうとにかく詰め込むだけ詰め込んで、
なんとか提出したのじゃ。

じゃが…回収し忘れている<試練>があちこちあっての。

わしはそれを見つけて、削除しておったのじゃが、
わしが悠子に渡した【癒しの力】に反応して、
聖女が成長するために
仕込んでおった<試練>のトラップが発動してしまったのじゃ。

……あれは、聖女の癒しの力でなくては、倒せん。
人間たちの力では、倒せるはずもない。

助かった、悠子。
礼を言う」


あー、女神ちゃんが私の名前を初めて
親しみを込めて呼んだ。


怒るとか、わめくとかしてもいいとは思う。

本当に大変で、死ぬかと思って、あの人たちが
死んでしまうかと思って。

怖くて、辛くて、もし女神ちゃんがエロい世界を
作りたいがためだけに、あんな黒いヤツを
私たちに、けしかけたのだとしたら、
許さない!とか思ったけど。

もう、なんか、どうでも良くなってきた。

喉元過ぎれば熱さを忘れるってやつかもしれないけど。

行き当たりばったりの女神ちゃんに、
計画性とか、そういうのを求めたらダメなんだ。

きちんと世界を構築しているわけではないから
バグなんて生まれるはずもなくて。

むしろ、女神ちゃんの思い付きがバグみたいなもんだ。

なんとなく愉しそう>で世界を創って、
もっと面白そうなことがあったら、
それを世界に組み込んで。

子どもが積み木遊びをするように。

ブロックで街を作って遊ぶように、
女神ちゃんは世界を創って遊んでいる。

ただそこに、人間や動植物という<命>があるだけだ。


人間とは感覚が違うんだ。

私はこのとき、そう確信した。

女神ちゃんは、きっと私と出会い、
初めて人間…<命>を持つものと会話したんだと思う。


そこで人間の感情を知り、そして多分だけど、
私との友情を感じてくれた。

だから、私は今、生き残れたのだ、と思った。



「私のために<試練>を削除してくれてたの?」

あの森の<試練>は間に合わなかったけど。

『本当は削除しなくても問題ないと思っておった。
<試練>のトラップは聖女が与えた<癒しの力>にしか
反応せんからな。

じゃが、悠子に<癒しの力>を与えて
トラップのことを思い出したのじゃ。


急いで色々探してみたが、
わしもどこにトラップを仕掛けたのか忘れてしもうて、
今回は……間に合わんかった』

しょんぼりする声に、いいよ、と言ってあげたい。
言ってあげたいけど…


「もしかして、トラップを仕掛けた数も、
場所もわからなくて、ついでに、削除したトラップの数も
メモしてないからわからないとか言わないよね?」


『………。』


息を飲む女神ちゃんの声がして、本気か。
子どもか。子どもの遊びか?仕事だろうが!

と、言いたくなって、やめた。

そうだ、女神ちゃんは子どもと同じだった。
<愉しそう>だけで行動してしまう行き当たりばったりの女神。


……しっかり私が教えて行かなくては。


「あれ? でも今回の件はおかしいと思う。
だって、私があの森に行くまでに、
すでに森ではおかしなことが起きているって話だったもの」


だから私たちはあの森に様子を見に行ったのだ。


逆に、だからこそ、村に馬や馬車を置いていけたので
ある意味助かった。

最悪、すべて失うところだった。
今のところ…私の心の傷以外は、損失ゼロだ。


『じつはな、わしにもわからんことが起きておるのじゃ。
ただ、闇の魔力の元、<闇の魔素>が集まりやすくはなっておる。

理由はわからんが、一つの強い負の感情から生まれた<魔素>に
他の小さな<闇の魔素>が集まり、集合体になるという現象が
あちこちで起きておるのじゃ。

今までは、集合体になってもさほど大きくはならんかったが、
今回は違う。

巨大で人間たちも駆除できんほどのモノもでてきておる』


そういうのは、本来は世界に干渉できない女神ちゃんも
放置はできなくて、できる範囲で削除してくれているらしい。

だが、女神ちゃんも世界すべてを一度に見ることはできない。

それで今回のようなことが起こったらしいのだ。


「ということは、あの村の周囲でも
強い負の感情から<魔素>が生まれたってことになるよね」


つまりは、強い負の感情が起こるようなことがあったってことか。

調べる必要はあるかもしれない。

『あとはな、考えられる理由としては
【世界の自浄作用】かもしれん』


「自浄作用?」


『そうじゃ、世界はわしが創りだした。
じゃが、生き物が増え、手を離れると、世界そのものが
ひとりでに動き出す。

大気に風を起こし、雨を降らし、太陽の光を大地の注ぐ。
木々を作り、動物を活かし、世界を繁栄させていく。

自然にそうなるように、世界は動く。

じゃが、今、人間の数が増え、悪意が増えた。
魔獣が増え、魔物が増え、世界はそれを浄化しようと
したのではないかとわしは思うのじゃ。


人間たちの悪意を集め、それで魔獣を生み出し、
その魔獣で人間たちを間引けは、世界は平和になる。

魔獣は世界が悪意を集めてつくったのじゃから、
世界が<聖なる魔素>を集めれば、魔獣を退治することもできるからの』


恐ろしい話だ。
けど、世界の平和という意味では、素晴らしい方法だと思う。
とっても不本意なやり方だけど。


「じゃあ、どうすればいいんですか?
相手が<世界>じゃ、手も足もでませんよ?」

目に見えない【愛】とやらでも、すでに手こずってるのに、
今度は<世界>を相手にしろなんて、無茶ぶりすぎる。

『大丈夫じゃ、悠。
【愛】が満ち溢れたら、万事解決じゃ』


……愛こそすべて、なんてセリフあったよねー。
遠い目になっちゃうわ。


『本当じゃぞ! 嘘じゃないぞ!」

またどうせ、思い付きで言ってるんでしょ?
みたいなツッコミをしたら、女神ぷんぷんと
怒った声で反論してきた。


『もともと、世界を愛で満たす【聖樹】が枯れているせいで
今は人間たちが悪意を持ちやすくなり<闇の魔素>も生まれやすくなっておる。

じゃから【聖樹】が元に戻り、世界に愛が溢れたら、
自浄作用も必要なくなるはずじゃ!』

なるほど、確かに。

『じゃから、悠子。
頼む、そなただけが頼りなのじゃ』

「わかった。頑張るよ」

どうせ〈やらない、できない〉の選択肢はないんだから。

「なんで女神ちゃん、今回は姿を見せないの?」

『いや…じつは、今、力をあちこちで使ってるのでな。
あまり自我を分散できんのじゃ』


……世界を修正するために、顔を見ることもできないほど
頑張ってるってことかな。


「そうなんだ。ありがとう」

『れ、礼を言われる筋合いはないぞ。
わしの世界じゃからな。

わしが頑張るのは…そ、その当たり前じゃ』

お礼を言われて照れてる女神ちゃんは
声だけでも可愛い。


『しばしの間、聖獣たちも、
そちらに行かせることはできそうにない。

わしもできるだけ、悠子のことは気にしておくが
イレギュラーなことが多すぎるのでな。

気を付けてくれ』


聖獣ちゃんたちも来れない程、大変なのか…。

ちょっと怖い気もするけど、
話を聞いても私にできることは無いから
何も知らないふりをする。

「わかった。心配してくれてありがとう」

『うむ』

「女神ちゃん」

『なんじゃ?』

「落ち着いたら、ぎゅーってして、
あたま撫でで、頑張ったね、って言ってあげる」


『か、か、神であるわしに対して、
不敬じゃぞーーーーーー!』


嬉しそうな叫び声がして、
私が、嬉しいくせに、とつぶやいたとき、
世界が暗転した。


しまった。


また知りたいことを聞きそびれてしまった。



……無念。









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