【R18】完結・女なのにBL世界?!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

たたら

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BとLの世界は厳しい激エロの金字塔だった

20:愛されるって、どういうこと?【2】

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はっ、とシーツの中で目を覚ました。


無理やり白い世界に召喚されたから、
あまり時間が取れなかったのか、
それとも女神ちゃんが私の抗議を受け取りたくなかったのか。


なんにせよ、無理やりこの世界に戻ってきてしまった。


しかし。
これは本格的にやばい展開になってきた。


しかも、あの祝福…。


頭が痛い。
と、思ったら、手に、もふ、という感触がした。


「もふ?」


シーツをめくってみると、
白いもこもこが、私の隣でスピスピ眠っていた。


「なに、これ。
可愛い!!!」


白いもこもこは、きっと聖獣だ。
だって背中に白い翼がある。


でも、でも。
これ、見たことがある。


私の近所を良く散歩しているワンちゃんで、
私にすごくなついてくれていた…


なんだっけ。
難しい名前の犬で、飼い主さんが自慢していた…


そう。
シェットランドシープドッグ、だ。


そのワンちゃんにそっくりだ。


毛がふさふさで、飼い主さんの言うことを
いつだって良く聞いていた。


飼い主さんは、私と同じぐらいの男性だったから
本当だったら緊張で何も話せなくなってしまうところだけれど。


あのワンちゃんが私に甘えてくれたので、
自然と飼い主さんとも話せるようになっていた。


飼い主さんだけでなく、私がボールを投げても
ちゃんと取ってきて、ほめて、ほめて、と尻尾を振る姿は
可愛くて、つい笑顔になってしまった。


可愛いワンちゃんを思い出し、
私は白いもこもこを撫でた。


窓が開けっぱなしだったので、
そこから入ってきたのかもしれない。


もしくは、女神ちゃんからのワイロか。


寝ている姿も可愛いけれど、抱っこしてみたい。


そっと抱き上げると、まるい小さな目が開いた。


「ごめん、起きちゃった?」


『ご主人さま!』


可愛い声がする。


「ご、主人さま?」


『なまえ、なまえ!』


「な、なまえ?
名前つけたらいいの?」


急に言われても思いつかない。


「じゃあ、白いからホワイト」

ほら。
女神ちゃんのこと私も言えない。
いきあたりばったりの思い付き。


『ホワイト!』


でも、ワンちゃん聖獣…いや、ホワイトは嬉しそうだ。


気に入ってもらってよかった。


「どうしてここにいるの?
女神ちゃんが何か言ってた?」



『女神様、ご主人を慰める』


あー。
やっぱりワイロだったか。


ごめんよ。
行き当たりばったり女神のせいで君は生まれたんだ。


ぎゅーっと私はホワイトを抱きしめた。


『ご主人様、大好き』


ホワイトがぶんぶん、と尻尾を振っている。


「うん。私も大好き」


こういう愛情のやり取りは、私にもできる。


『大好き、ホワイト。
私が絶対に…この世界を守ってあげるからね」


この世界を軌道に乗せて、
あの行き当たりばったり女神の介入が無くても
きちんと繁栄していく世界にしなくては。


ホワイトも、騎士様たちも、レオも、ブラウンも。
そして、まだ見たことがないけど、この世界に住む人たちも。


あの女神ちゃんに生み出されたとはいえ、
もう今、ここに、みんな生きているんだ。


勝手に創って、勝手に消し去って良いわけがない。


ホワイトを抱きしめて、私は決意と不安から少し泣いてしまった。


トントン、とそこへ、ノックの音がする。


はい、と返事をすると、
安定のママさんキャラのカーティスが入ってきた。


「寝てたのですね、すみません」


「いえ、大丈夫です」
私は慌ててベットから下りた。


「ところで…その、その…聖獣は…?」


カーティスの視線の先には、
ベットの上に乗っているホワイトの姿がある。


「あの、なんだか窓から入ってきてしまったみたいで」


ホワイトは聖獣なのだろうが、まるで犬のように
嬉しそうに尻尾を振って、私の手にじゃれついた。


きっと、私の記憶のワンちゃんから生みだしたから、
行動が聖獣ではなく、ワンちゃん寄りなんだ。


「懐かれているようですね」


少し戸惑うように、カーティスは言う。


「はい、可愛いです。
ご迷惑はかけないので、ここで飼ってもいいですか?」


子犬を拾って「世話は私がするから」と
お母さんにお願いする子どものように言ってしまったが、
カーティスは相変わらず、困惑しているようだ。


「えっと。
ヴァレリアンにも確認するので、
一緒に来てもらえますか?」


「はい」


そうだよね。
ママよりパパの許可が必要だよね。


私はホワイトについてくるように言い聞かせ、
カーティスと一緒に庭に出た。


今は全員で訓練をしている最中らしい。


カーティスは私の部屋から膨大な聖魔法を感じて、
慌てて部屋にきてくれたらしいのだが、
あまりにもその力が強くて部屋に入れなかったらしい。


きっと女神ちゃんのところにいた時のことだよね。


でも、その時のことをカーティスはホワイトがいたから
部屋に入れなかったと勘違いをしているみたいだった。


「聖獣がいたのなら、あの膨大な聖なる力もうなずけます」


うんうん、と一人で納得してくれている。


まぁ、女神ちゃんとの会話は暴露できないので、
私としては助かるけれど。


庭に出ると、騎士様たちが一斉に私を見て固まった。


「訓練中、邪魔してスミマセン」
私は頭を下げる。


そしてホワイトを手招きして抱き上げた。


「面倒見るので、この子、
飼ってもいいですか?」


私が必ず世話をしますから!


と、熱意を込めてヴァレリアンに詰め寄ったが
ヴァレリアンは、ふい、っと私から目線をそらした。


なぜ?


「えっと、ダメですか?」


「いや、ダメというか…」


ヴァレリアンは困ったように目を合わせてくれない。


私は、スタンリーに目を付けた。

パパとママがダメなら、お兄ちゃんに助けを求めるべきだ。


彼はヴァレリアンとカーティスの幼馴染みたいだったし、
クールな彼なら、二人を説得してくれるかもしれない。


「もふもふだし、可愛いし、悪い子じゃないんです!」


聖獣なんだから、悪いことはしないです。
……たぶん。


頑張って見上げて、スタンリーに訴える。

だが、スタンリーは眼鏡をさりげなくかけなおし、
ヴァレリアンと同じように、私から目を背けた。


なぜ!?


ホワイトを抱っこしたまま、
今度は後ろを振り返った。


まだ固まった状態だったが、残った3人に訴える。

「いい子なんですよ」

「待って、待って、ユウちゃん」

エルヴィンが手を挙げて私が来るのを制した。
愛し子ちゃんではなく、名前を呼ばれた。


「それ、聖獣だよね?」


「そうですけど」


ワンちゃんに見えるけど、たぶん、聖獣だ。


「聖獣って、飼っていいの?」

「え?」


ダメなの?
動物保護団体とかに訴えられる案件なの?


「飼ったらダメとか、決まりがあるんですか?」


「というか、飼える人間なんていないと思うけど」


エルヴィンが困ったような声を出す。


そうか。
聖獣だもんね。

神様の眷属だもんね。


飼わないか、普通は。


でもこの子は、私へのワイロのために
行き当たりばったり女神が創ってしまった聖獣だ。


私がこの子を追い出したら
行くところなんてないかもしれない。


「でも、この子、生まれたばかりで
追い出したら可哀そうです」


「生まれたばかり!?」

エルヴィンは大きな声を出した。

「聖獣の赤ちゃんなんて初めて見た…いや、聖獣を見ることができたのも、
ここに来てから初めてだったが」


横からケインが、ホワイトを見つめながら呟いた。


「そ、そうなんです。
この子は生まれたばかりで、私を頼ってきてくれて。
だから、ほっとけないんです」


必死で訴えると、様子を見ていたバーナードが
カーティスに視線を送った。


カーティスも、それを受けてヴァレリアンを見る。


「わかった、仕方ない」


ヴァレリアンが重い口を開いた。


「しばらくの間ならいい。
ただし、俺たちもずっとこの屋敷に滞在しているわけではないからな。

この聖獣が一人立ちできるようになるまでの間だけだ。

それに、聖獣はもともと、人間にはあまり姿を現さないものだと言われている。
その理由はわからないが、その聖獣が俺たち人間と仲良くすることが
必ずしも良い結果になるとは思えない」


そっか。
聖獣って、そういう位置づけなんだ。


「聖獣に関しては、箝口令を出す。
一切、外に漏れないように。

もちろん、ユウの存在も秘匿だがな」


面倒ごとを増やしてしまったのか。
ほんとに申し訳ない。


「あと、聖獣の世話の仕方なんて
俺たちにはわからんぞ?」

ヴァレリアンが私に言ってきたが、私もそんなものはわからない。
でも。


「それは大丈夫です。この子に聞きますから」


「……聞く…?」


「はい。この子がきっと教えてくれると思います」


私は抱っこしたホワイトをヴァレリアンに見せつけた。



「その聖獣はしゃべるのか?」


「ん-っと、なんとなく、わかる感じです」


脳内で会話ができるのはナイショだもんね。


「そうか」


とヴァレリアンはあきらめたように息を吐いた。


「聖獣の世話は、ユウに任せる」


「はい」


「必要なものがあれば言ってくれ」


「ありがとうございます」


私は素直にお礼を言った。


「よし。では訓練開始。
カーティスはこのまま、ユウについててくれ。

聖獣のことは、後から聞かせてくれればいい」


「わかりました」

カーティスはうなずいて、私の背中を押した。


「部屋に戻りましょう」


訓練の邪魔をしてしまったからか、
強い口調で言われてしまった。


私は逆らうことなく、部屋へと戻る。


聖獣…。
不思議な存在だけど、この子は私のために生まれた子。

ちゃんと育ててあげるからね。


私はぎゅっとホワイトを抱きしめた。





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