【R18】完結・女なのにBL世界?!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

たたら

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女ですけどBL世界に転生してもいいんですか?

8:女神の愛し子と出会い<王子SIDE>

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あの日、私は胸騒ぎがしていた。

いや、あの日だけではない。
ずっと、嫌な気分がしていた。


私は土魔法を得意としているが、
大気に交じる<魔素>を取り込むと、
大地が揺れるような感覚がするのだ。


最初は、小さな違和感だった。
それが、どんどん大きくなり、

今では魔法を使った後、
足りなくなった<魔素>を
体内に取り込もうとすると、
体がぐらぐら揺れてしまう。



まるでこの<魔素>は
取り込んではいけないと
大気がそう伝えているような気がした。


ただ、誰もそんな話はしていないので、
私は「気のせい」だと思うように努めた。


そうでなければ、この世界に異変が
起こっているのではないかと
不安に感じてしまうからだ。


あの日の朝、
私は朝食を取っていると
謁見の間に来るようにと侍従が呼びに来た。



謁見の間ということは、
父に会うのではなく、
国王に会うということ。


つまりは金聖騎士団の任務の話かもしれない。


私は手早く騎士団の服に着替え、
謁見の間に向かう。


謁見の間にたどり着くと、
大きな扉の前に立っていた護衛騎士が
敬礼をしてすぐに扉を開いた。


重く大きな扉は、
中の声が聞こえないように
わざと重厚なつくりにしているらしい。


足を踏み入れると、
すでにそこには私以外の金聖騎士団のメンバーが
勢ぞろいしていた。


「遅くなりました」
私は王の椅子の傍に立つ宰相に礼を取り、ヴァレリアンの横に立つ。


すでに人払いをしているのか、
侍従の姿も、王宮勤めの人間もいない。


いったい、どんな話があるのか…。


緊張する間もなく、
すぐに、王が姿を現した。


私たちはすぐに膝をつく。


「よいよい。楽にするがいい」


王は顔を上げるように言い、
私たちは顔を上げて王を見た。


黄金の髪に、黄金の瞳。


まさに国王と呼ぶにふさわしい
威厳のある堂々とした佇まいだ。


わが父ながら、確かに憧れる。


王は宰相に促すように視線を向け、
そしてその横にいる銀髪の人物に視線を向けた。


宰相はうなずき、そして口を開く。


「そなたたち、近頃の<魔素>をどう思う?」


唐突な質問だった。


だが、その質問で私は、
私が感じていた違和感を宰相も、王も
感じていたのだと確信を持つことができた。


ヴァレリアンが、恐れながら…と重たい口を開く。


「最近の大気にある<魔素>は
不純なものがかなり混ざっていると感じられます」


そう。
大地の<魔素>なのに、それ以外の<魔素>が
まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのように混ざっている。


そんな感じだった。


私も、そして他のメンバーも同じように感じていたのだろう。
言葉に出すことはないが、うなずいて肯定を示す。


「じつは、そのことについて
神殿から報告があがっているのだ」


宰相の言葉に、傍に控えていた銀髪の男性が
一歩、前に出た。


白い法衣を着た年配の男性…。
この世界で唯一、女神の声が聞こえるという
枢機卿だ。


ケインの父であることは周知の事実だが、
ケインと枢機卿が親子らしくしている姿を
見たことが無い。


枢機卿は短い銀髪が隠れるほどの
長い帽子をかぶり、手には鏡のようなものを持っている。


「じつは、女神さまよりご神託がありました」


枢機卿の声は震えているように聞こえた。


「この世界は、崩壊に向かっている…と」


思わず息をのんだ。



「この数年、聖樹が枯れてきているのはご存じでしょう」


聖樹。
それは、この国にあるすべての神殿に植えられている
女神の力が宿った樹木のことだ。


この世界では、神殿に祈りを捧げ、
聖樹の実を食べることで、子どもを宿すことができる。


つまり、聖樹がなければ子どもは生まれず、
人間たちはいずれ、滅びる道を辿ることになる。


ただ、神殿の聖樹が枯れてきている、
もしくは異常が起きているという
報告が上がってきた地域は
王都よりかなり遠い場所であり、


王宮内でも神殿内でも、
ただ、樹木に宿った女神の力が
弱くなっただけだ、という意見も多くあった。


聖樹は、王宮のそばにある大神殿で守られた大聖樹の枝を
接ぎ木して下賜されたものだ。


だからこそ、大聖樹の枝をまた接ぎ木すれば
大丈夫だろうと、そう思われていたのだ。


だが、最近の聖樹の異常を訴える陳情書は
どんどん数を増やしている。


そしてこの大気中の<魔素>の異常だ。


何かが起こっている、と言わざる負えない。


「そして崩壊を止めるために、
女神さまは、力の結晶を私たちに与えると
そう告げてくださったのです」


枢機卿の言葉が終わるとすぐ、
王が言う。



「この国を、いや、世界を救うには、
その女神の力の結晶が必要というわけだ。

そこでだ。


ちょっと行って探してきてくれ」


まるで迷子になった犬を探してきてくれ。
というかのように、


軽く、調子よく、けれど真剣な表情で
国王は言う。


誰も、何も言えなかった。


「……それで、その力の結晶とは
どんなものなのでしょうか。

どこを探せばいいか、手掛かりはあるのですか?」


若干、苛立ちを含んだ声で
ヴァレリアンが声を出す。


さすが、金聖騎士団長だ。
率先して王と対峙してくれる。


「それがさっぱりわからんそうだ」


王の言葉に、また空気が固まる。


「いえ、ですが、大体の場所ならわかります」


枢機卿は慌てたように手に持っていた鏡を見せた。


この鏡に、大きな泉と森が見えました。


おそらく、その場所に力の結晶が生まれるのでしょう。



……この国に、大きな泉と森が
どれだけあると思うんだ!?


と、誰もが思っただろうが、
誰ひとり、声を出すことはなかった。



王は呆然とする私たちを残し、
よろしく、と軽い口調で去っていく。


その後ろを宰相が、そして枢機卿が続き、
謁見の間には、金聖騎士団メンバーのみが残った。


「本気か…」
ヴァレリアンが呟いた。


全員がヴァレリアンを見る。
こんな時に頼れるのは騎士団長しかいない。


「やるしかないな。
とにかく全員、俺の執務室に集合。

スタンリーはこの国の地図を準備してきてくれ。

大きな泉、森をチェックして
手当たり次第に探していこう」


それが途方もない作業だということは
誰もが理解できた。


けれども、私たち金聖騎士団のみに命じられたということは、
この任務が極秘であり、誰の手も借りれないことを意味している。


「よし、行くぞ」
頼れる団長の声に励まされ、
私たちは謁見の間を後にした。






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