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愛は変態を助長させる
44:帰り道と女神
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僕たちはカフェを出て
解散になった。
今日は顔合わせだけのつもりだから
またよろしく、と先輩さんに
言われたのだ。
そしてこっそり
「姉が振り回してごめん」と
囁いてくれる。
僕と真翔さんは
内心ほっとしながら
お礼を言った。
カフェ代も気が付けば
綾子さんが支払ってくれていたらしい。
先輩さんは「迷惑料だと思って
おごられといて」と言うし
僕も真翔さんも
恐縮しながらありがたく
ご馳走になることにした。
たった1杯のお茶とケーキで
ものすごい金額だったし。
「悠子」
僕たちが別れる前に
綾子さんが何やら手帳に書いて
僕に渡した。
「帰る前にここに寄って帰りなさい。
いいわね?」
念を押すように言われ
僕は、断ることもできずに頷く。
「じゃあね。
旅行楽しみにしているわ」
綾子さんはそう言うと、
楽しそうに笑って駅の方へ歩いて行く。
「ほんと、ごめん。
また埋め合わせするから」
先輩さんも慌てた様子で
僕たちにそれだけ言って
綾子さんを追いかけて行く。
「先輩さん……綾子さんに
振り回されていそうですね」
僕はその後ろ姿を見ながら
思わず言ってしまった。
「そうだね。
凄い女性だったね」
真翔さんも苦笑している。
「でも、面倒見が良い
優しい人でした」
僕はお店で僕が知らないことを
沢山教えて貰ったことを
真翔さんに話した。
「強引だったけど、
楽しかったです」
「それは良かった」
真翔さんは僕の手のメモを見て
「それでどこに行けばいいのかな?」
という。
僕はメモを広げてみた。
どうやらこの百貨店の中にある場所みたいだ。
僕と真翔さんはメモの通り
エレベーターに乗って
カフェがあった階よりも、
もっと上の階に行く。
エレベーターを降りると
受付みたいな場所があって、
【外商】って文字が書いてあった。
真翔さんが僕の代わりに
受付の人に話をして
綾子さんに渡されたメモを見せる。
すると受付けの人は
どこかに電話をして
「少しお待ちください」と
頭を下げた。
僕と真翔さんは
首を傾げるしかできない。
少しすると、
40代ぐらいのスーツを着た
男性が、若い男性社員みたいな
人を引き連れてやってきた。
手には沢山の紙袋を持っている。
「綾子様の妹様ですね」
いえ、違います。
そう言えたらどんなに良かったか。
「お名前は悠子様と伺っておりますが
合っておりますか?」
「……は、い」
「では、こちらを」
沢山の紙袋を見せられて
僕と真翔さんは、
意味が分からないし
受け取れないと主張する。
けれど、男性は
「綾子様が悠子様への
プレゼントと言っておりました。
辞退は許さないので
必ず受け取るように誘導せよと
我々にも指示がでておりまして」
ハンカチで汗を拭きながら言う男性に
これ以上は拒否もできなくて。
僕は仕方なくそれを受け取ることにした。
僕と真翔さんが
二人で持っても手いっぱいに
なるほどの紙袋だ。
「……とりあえず、
アパートに戻ろうか」
「はい」
僕と真翔さんはそのまま
駅に向かったけれど、
荷物の多さに疲れてしまって
真翔さんの提案で
タクシーに乗ることにした。
タクシーに乗るのは
これで人生二度目だ。
最近、贅沢に慣れてきてしまったかも。
僕がタクシーに乗っていると
スマホに着信があり、
見ると通信アプリに綾子さんからの
メッセージが入っていた。
『プレゼントは受け取ったかしら?
それを着て旅行に来ること。
私の前でみすぼらしい恰好はダメよ。
あと下着も必ずセットで来ること。
いいわね!』
文字なのに、
綾子さんの口調が頭に浮かぶようで
僕は笑ってしまった。
申しわけないし、
受け取れないと思ってたけれど。
綾子さんのメッセージを読んで
素直に受け取って感謝しようって思えた。
だから僕は『ありがとうございます。
大切にします』って返事をした。
真翔さんは
「悠子ちゃんはすぐに
誰かを惹きつけるから
目が離せない」
なんて言う。
だから僕は
「真翔さんの方が魅力的だから
僕こそ心配です」って
言ってしまった。
それからタクシーの中なのに
指が絡まって、
きゅって手を繋いで。
アパートの前で
タクシーを降りたけれど、
沢山の荷物を持っていたのに
手は離れなかった。
部屋について、真翔さんと
一緒に袋を開けてみると
中身はお店で僕が試着した
服ばかり入っていた。
あと、下着も。
値札はすべて切られていたけれど
全部を合わせたら、
きっと僕の工場と居酒屋バイトの
一か月分の給料では
賄えないぐらいの
金額だと思う。
真翔さんも驚いていたようだけど
どう見てもサイズは僕に
合わせているし、
今更返品もできないから
貰っておこう、と言う。
そして
「明日、先輩に
このまま貰っていいか
確認しておくよ」
と言ってくれたので、
僕はとりあえずほっとした。
一応、しわにならないように
服は全部ハンガーにかけて
下着は形がくずれないように
そっとクローゼットに入れる。
「すごいお姉さんだったけど
あの下着は……嬉しい、かな」
袋を片付けた後
真翔さんがそんなことを
笑いながら言った。
「嬉しい、ですか?」
「ユウが俺のために
あれを着てくれると思ったら、
楽しみだし、嬉しい」
真翔さんの視線の先には
片付け忘れたスケスケの
キャミソール?があった。
これはベビードールって言うのよ、
なんて綾子さんに言われたやつだ。
「あ、あれは、その」
僕は真っ赤になってしまう。
こんなのを着て寝るとか
恥ずかしくてできそうにない。
でも。
「今度、あれ着て見せて?」
なんて真翔さんに言われたら
僕は頷くしかない。
綾子さん。
綺麗で素敵な女性だったけれど
やっぱり強引で
ちょっとだけ苦手……かもしれない。
解散になった。
今日は顔合わせだけのつもりだから
またよろしく、と先輩さんに
言われたのだ。
そしてこっそり
「姉が振り回してごめん」と
囁いてくれる。
僕と真翔さんは
内心ほっとしながら
お礼を言った。
カフェ代も気が付けば
綾子さんが支払ってくれていたらしい。
先輩さんは「迷惑料だと思って
おごられといて」と言うし
僕も真翔さんも
恐縮しながらありがたく
ご馳走になることにした。
たった1杯のお茶とケーキで
ものすごい金額だったし。
「悠子」
僕たちが別れる前に
綾子さんが何やら手帳に書いて
僕に渡した。
「帰る前にここに寄って帰りなさい。
いいわね?」
念を押すように言われ
僕は、断ることもできずに頷く。
「じゃあね。
旅行楽しみにしているわ」
綾子さんはそう言うと、
楽しそうに笑って駅の方へ歩いて行く。
「ほんと、ごめん。
また埋め合わせするから」
先輩さんも慌てた様子で
僕たちにそれだけ言って
綾子さんを追いかけて行く。
「先輩さん……綾子さんに
振り回されていそうですね」
僕はその後ろ姿を見ながら
思わず言ってしまった。
「そうだね。
凄い女性だったね」
真翔さんも苦笑している。
「でも、面倒見が良い
優しい人でした」
僕はお店で僕が知らないことを
沢山教えて貰ったことを
真翔さんに話した。
「強引だったけど、
楽しかったです」
「それは良かった」
真翔さんは僕の手のメモを見て
「それでどこに行けばいいのかな?」
という。
僕はメモを広げてみた。
どうやらこの百貨店の中にある場所みたいだ。
僕と真翔さんはメモの通り
エレベーターに乗って
カフェがあった階よりも、
もっと上の階に行く。
エレベーターを降りると
受付みたいな場所があって、
【外商】って文字が書いてあった。
真翔さんが僕の代わりに
受付の人に話をして
綾子さんに渡されたメモを見せる。
すると受付けの人は
どこかに電話をして
「少しお待ちください」と
頭を下げた。
僕と真翔さんは
首を傾げるしかできない。
少しすると、
40代ぐらいのスーツを着た
男性が、若い男性社員みたいな
人を引き連れてやってきた。
手には沢山の紙袋を持っている。
「綾子様の妹様ですね」
いえ、違います。
そう言えたらどんなに良かったか。
「お名前は悠子様と伺っておりますが
合っておりますか?」
「……は、い」
「では、こちらを」
沢山の紙袋を見せられて
僕と真翔さんは、
意味が分からないし
受け取れないと主張する。
けれど、男性は
「綾子様が悠子様への
プレゼントと言っておりました。
辞退は許さないので
必ず受け取るように誘導せよと
我々にも指示がでておりまして」
ハンカチで汗を拭きながら言う男性に
これ以上は拒否もできなくて。
僕は仕方なくそれを受け取ることにした。
僕と真翔さんが
二人で持っても手いっぱいに
なるほどの紙袋だ。
「……とりあえず、
アパートに戻ろうか」
「はい」
僕と真翔さんはそのまま
駅に向かったけれど、
荷物の多さに疲れてしまって
真翔さんの提案で
タクシーに乗ることにした。
タクシーに乗るのは
これで人生二度目だ。
最近、贅沢に慣れてきてしまったかも。
僕がタクシーに乗っていると
スマホに着信があり、
見ると通信アプリに綾子さんからの
メッセージが入っていた。
『プレゼントは受け取ったかしら?
それを着て旅行に来ること。
私の前でみすぼらしい恰好はダメよ。
あと下着も必ずセットで来ること。
いいわね!』
文字なのに、
綾子さんの口調が頭に浮かぶようで
僕は笑ってしまった。
申しわけないし、
受け取れないと思ってたけれど。
綾子さんのメッセージを読んで
素直に受け取って感謝しようって思えた。
だから僕は『ありがとうございます。
大切にします』って返事をした。
真翔さんは
「悠子ちゃんはすぐに
誰かを惹きつけるから
目が離せない」
なんて言う。
だから僕は
「真翔さんの方が魅力的だから
僕こそ心配です」って
言ってしまった。
それからタクシーの中なのに
指が絡まって、
きゅって手を繋いで。
アパートの前で
タクシーを降りたけれど、
沢山の荷物を持っていたのに
手は離れなかった。
部屋について、真翔さんと
一緒に袋を開けてみると
中身はお店で僕が試着した
服ばかり入っていた。
あと、下着も。
値札はすべて切られていたけれど
全部を合わせたら、
きっと僕の工場と居酒屋バイトの
一か月分の給料では
賄えないぐらいの
金額だと思う。
真翔さんも驚いていたようだけど
どう見てもサイズは僕に
合わせているし、
今更返品もできないから
貰っておこう、と言う。
そして
「明日、先輩に
このまま貰っていいか
確認しておくよ」
と言ってくれたので、
僕はとりあえずほっとした。
一応、しわにならないように
服は全部ハンガーにかけて
下着は形がくずれないように
そっとクローゼットに入れる。
「すごいお姉さんだったけど
あの下着は……嬉しい、かな」
袋を片付けた後
真翔さんがそんなことを
笑いながら言った。
「嬉しい、ですか?」
「ユウが俺のために
あれを着てくれると思ったら、
楽しみだし、嬉しい」
真翔さんの視線の先には
片付け忘れたスケスケの
キャミソール?があった。
これはベビードールって言うのよ、
なんて綾子さんに言われたやつだ。
「あ、あれは、その」
僕は真っ赤になってしまう。
こんなのを着て寝るとか
恥ずかしくてできそうにない。
でも。
「今度、あれ着て見せて?」
なんて真翔さんに言われたら
僕は頷くしかない。
綾子さん。
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