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愛は変態を助長させる
23:嫉妬はしない……と思う【真翔SIDE】
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翌朝、俺が目を覚ますと
すでに悠子ちゃんはいなかった。
慌てて時計を見ると、
まだ早朝で時間はある。
慌てて出勤しなくても
大丈夫そうだ。
ベットから下りると、
俺の着替えがベット横に
置いてある。
悠子ちゃんが準備してくれたのだろう。
これだけで俺は
新婚みたいだと嬉しくなる。
キッチンから音が聞こえてきて
美味しそうな匂いがするので
悠子ちゃんは朝食を
作ってくれているのかもしれない。
「おはよう」
俺がキッチンに顔を出すと
悠子ちゃんがおはようございます、と
返事をしてくれた。
キッチンの小さなテーブルには
二人分の朝ご飯が乗っている。
昨日俺がここで悠子ちゃんを
抱いたのだと思うと
感慨深い。
「あの、真翔さん」
俺がテーブルに座ると、
悠子ちゃんがみそ汁を
お椀に入れて持って来てくれた。
ご飯とみそ汁と塩サケと卵焼き。
シンプルだけれど、
俺は悠子ちゃんが作る和食が大好きだった。
俺の母はずっと働いていたから
朝は食べないかパン食だったし、
夜食べるのは、買って来た総菜か
レトルトのようなものが多かった。
だからだろうか。
悠子ちゃんが作るものは
すべて新鮮で、美味しい。
「今日はお弁当を作ったんです」
おずおずと、悠子ちゃんが
お弁当箱を見せた。
蓋がしてあって
中身は見れないけれど
かなり大きな弁当箱に見える。
「持って行ってもらえますか?」
「もちろん!」
俺は嬉しくて即答した。
すると悠子ちゃんは
ほっとしたような顔をする。
「良かった。
先輩さんの分もあるので
もしよかったら
お二人で食べてくださいね」
え?
先輩の分も?
「昨日は楽しかったですし、
沢山食べたのに、
奢ってもらって
申し訳なくて」
そんなことを言われたら
拒否などできない。
だが悠子ちゃんの
手料理を先輩が食べるのは……。
いやいや、嫉妬はダメだ。
これは悠子ちゃんの優しさなんだから。
俺は笑顔でお弁当を受け取り、
朝ご飯を食べたけれど
胸の奥はもやもやしている。
俺だけの悠子ちゃんでいて欲しい。
俺だけを見ていて欲しい。
そう思うのは俺の勝手だ。
俺の気持ちを悠子ちゃんに
押し付けるのはダメだ。
それに悠子ちゃんは
俺のことを愛してるって
言ってくれたじゃないか。
それを信じないで、どうするんだ。
いや、信じている。
信じてるが、それでも……。
もんもんとしているうちに
朝の時間はあっというまに過ぎてしまい、
俺は出勤しなければならなくなる。
「……行きたくない。
悠子ちゃんとずっと一緒にいたい」
こんなヘタレなことを
俺が言う日が来るとは。
悠子ちゃんはしがみつくように
抱きしめる俺の背に腕を回し、
「僕もです」って言う。
そして。
「一緒に旅行に行くの、
楽しみです。
旅行なら一日ずっと一緒ですね」
そう笑う悠子ちゃんの顔が可愛くて。
「そう、だね。
じゃあ休暇をもらうために
頑張って仕事してくるよ」
俺は、がぜん、やる気がでた。
まずは先輩に夏季休暇が
どうなっているのか聞かなければ。
俺が悠子ちゃんのアパートから
意気揚々と出勤すると、
事務所に着くなり先輩が声を掛けて来た。
俺も挨拶をした後、
すぐに昨夜のお礼を言う。
先輩はそれをおざなりに受け取り
「そんなことより、
昨日は彼女の所に泊まらなかったのか?」
何ていう。
俺は一瞬、慌てたが、
先輩は俺がきちんと着替えているので
悠子ちゃんの家に
泊まらなかったと判断したようだ。
俺はすでに悠子ちゃんの家に
着替えや私物も置いているから
泊まっても問題はないのだが
そこまで言う必要もないし、
俺は曖昧に笑ってごまかした。
先輩の机は俺の隣なので
俺がデスクに座っても
先輩は俺に話しかけてくる。
「あんな可愛い彼女がいて
柊はいいよな」
「先輩だって、
美人の彼女がいるじゃないですか」
別れても別れても
すぐに美人の彼女ができる
先輩の方が凄いと思う。
まぁ、俺は
多くの女性よりも
悠子ちゃんがいればそれで満足だけど。
「まぁ、そうだけど。
あの子は新鮮だったんだよ」
でしょうね。
悠子ちゃんは先輩の彼女たちとは
全く違うタイプだ。
「だからさ、
今度ダブルデートしようぜ」
絶対に嫌だ。
絶対に嫌だが、
絶対に嫌だ、とは言えない。
俺は言葉に詰まり、
そうだ、と先輩に悠子ちゃんの
お弁当を見せた。
「俺の彼女が、昨日のお礼に
お弁当を作ってくれたんです。
量が多いので先輩もどうぞ、と
言ってました」
「え?
彼女の手作り弁当!?」
先輩は目を見開き、
それは楽しみだ、と嬉しそうな顔をした。
その後すぐに業務開始時間になり
俺と先輩はそのまま仕事になったが、
俺は先輩の嬉しそうな顔がひっかかって仕方がない。
まさか悠子ちゃんに惚れたりしてないよな?
大丈夫だよな?
昼休みは事務所の屋上に行き、
悠子ちゃんのお弁当を
食べることにする。
ペットボトルのお茶だけ買って、
ベンチの上にお弁当を広げて、
俺と先輩は、屋上のコンクリートの上に座った。
弁当は大きな透明の入れ物に
おむすびが三列に並んで入っていて、
箱の蓋に「シャケ」「おかか」
「昆布」と書いたシールが貼ってある。
おそらくおむすびの具が
わかるようになっているのだろう。
もう一つの入れ物を開けると、
ものすごく美味しそうな。
けれど可愛らしいお弁当が出て来た。
卵焼きに、ウインナー、
からあげ、小さなハンバーグ。
ササミが入ったサラダに、
ベーコンのアスパラまきまである。
色どりも綺麗だったし、
ところどころに、
悠子ちゃんらしさが入っていた。
たとえば、ウインナーは
タコさんウインナーだったし、
ハンバーグにはケチャップで
花まるが書いてある。
具材と具材の間を仕切る
チシャ菜が色どりを
綺麗にしていたし、
サラダの中にある
赤や黄色のパプリカも
見ているだけで食欲がわく。
「旨そうだな」
先輩は蓋を開けるなり、
じっと中身を見つめていた。
「えぇ、彼女は料理も
得意なんです」
俺は少し自慢げに言って
先輩にどうぞ、と
一緒に入っていた割り箸を渡した。
先輩はお礼を言いながら
まっさきに卵焼きを摘まむ。
「……美味しいな」
「はい」
先輩の顔が一瞬、泣きそうに
歪んだのを見たけれど、
俺は何も言わずに
おにぎりをかじった。
「……誰かの手料理なんて
何十年ぶりかな」
先輩はそんなことを言いながら
ばくばくと悠子ちゃんの
お弁当を食べていく。
俺のために悠子ちゃんが
作ってくれた弁当なんだぞ、と
内心は思っていたけれど。
嬉しそうに食べる先輩に
俺は何も言えずに
ひたすらおにぎりを食べていた。
すでに悠子ちゃんはいなかった。
慌てて時計を見ると、
まだ早朝で時間はある。
慌てて出勤しなくても
大丈夫そうだ。
ベットから下りると、
俺の着替えがベット横に
置いてある。
悠子ちゃんが準備してくれたのだろう。
これだけで俺は
新婚みたいだと嬉しくなる。
キッチンから音が聞こえてきて
美味しそうな匂いがするので
悠子ちゃんは朝食を
作ってくれているのかもしれない。
「おはよう」
俺がキッチンに顔を出すと
悠子ちゃんがおはようございます、と
返事をしてくれた。
キッチンの小さなテーブルには
二人分の朝ご飯が乗っている。
昨日俺がここで悠子ちゃんを
抱いたのだと思うと
感慨深い。
「あの、真翔さん」
俺がテーブルに座ると、
悠子ちゃんがみそ汁を
お椀に入れて持って来てくれた。
ご飯とみそ汁と塩サケと卵焼き。
シンプルだけれど、
俺は悠子ちゃんが作る和食が大好きだった。
俺の母はずっと働いていたから
朝は食べないかパン食だったし、
夜食べるのは、買って来た総菜か
レトルトのようなものが多かった。
だからだろうか。
悠子ちゃんが作るものは
すべて新鮮で、美味しい。
「今日はお弁当を作ったんです」
おずおずと、悠子ちゃんが
お弁当箱を見せた。
蓋がしてあって
中身は見れないけれど
かなり大きな弁当箱に見える。
「持って行ってもらえますか?」
「もちろん!」
俺は嬉しくて即答した。
すると悠子ちゃんは
ほっとしたような顔をする。
「良かった。
先輩さんの分もあるので
もしよかったら
お二人で食べてくださいね」
え?
先輩の分も?
「昨日は楽しかったですし、
沢山食べたのに、
奢ってもらって
申し訳なくて」
そんなことを言われたら
拒否などできない。
だが悠子ちゃんの
手料理を先輩が食べるのは……。
いやいや、嫉妬はダメだ。
これは悠子ちゃんの優しさなんだから。
俺は笑顔でお弁当を受け取り、
朝ご飯を食べたけれど
胸の奥はもやもやしている。
俺だけの悠子ちゃんでいて欲しい。
俺だけを見ていて欲しい。
そう思うのは俺の勝手だ。
俺の気持ちを悠子ちゃんに
押し付けるのはダメだ。
それに悠子ちゃんは
俺のことを愛してるって
言ってくれたじゃないか。
それを信じないで、どうするんだ。
いや、信じている。
信じてるが、それでも……。
もんもんとしているうちに
朝の時間はあっというまに過ぎてしまい、
俺は出勤しなければならなくなる。
「……行きたくない。
悠子ちゃんとずっと一緒にいたい」
こんなヘタレなことを
俺が言う日が来るとは。
悠子ちゃんはしがみつくように
抱きしめる俺の背に腕を回し、
「僕もです」って言う。
そして。
「一緒に旅行に行くの、
楽しみです。
旅行なら一日ずっと一緒ですね」
そう笑う悠子ちゃんの顔が可愛くて。
「そう、だね。
じゃあ休暇をもらうために
頑張って仕事してくるよ」
俺は、がぜん、やる気がでた。
まずは先輩に夏季休暇が
どうなっているのか聞かなければ。
俺が悠子ちゃんのアパートから
意気揚々と出勤すると、
事務所に着くなり先輩が声を掛けて来た。
俺も挨拶をした後、
すぐに昨夜のお礼を言う。
先輩はそれをおざなりに受け取り
「そんなことより、
昨日は彼女の所に泊まらなかったのか?」
何ていう。
俺は一瞬、慌てたが、
先輩は俺がきちんと着替えているので
悠子ちゃんの家に
泊まらなかったと判断したようだ。
俺はすでに悠子ちゃんの家に
着替えや私物も置いているから
泊まっても問題はないのだが
そこまで言う必要もないし、
俺は曖昧に笑ってごまかした。
先輩の机は俺の隣なので
俺がデスクに座っても
先輩は俺に話しかけてくる。
「あんな可愛い彼女がいて
柊はいいよな」
「先輩だって、
美人の彼女がいるじゃないですか」
別れても別れても
すぐに美人の彼女ができる
先輩の方が凄いと思う。
まぁ、俺は
多くの女性よりも
悠子ちゃんがいればそれで満足だけど。
「まぁ、そうだけど。
あの子は新鮮だったんだよ」
でしょうね。
悠子ちゃんは先輩の彼女たちとは
全く違うタイプだ。
「だからさ、
今度ダブルデートしようぜ」
絶対に嫌だ。
絶対に嫌だが、
絶対に嫌だ、とは言えない。
俺は言葉に詰まり、
そうだ、と先輩に悠子ちゃんの
お弁当を見せた。
「俺の彼女が、昨日のお礼に
お弁当を作ってくれたんです。
量が多いので先輩もどうぞ、と
言ってました」
「え?
彼女の手作り弁当!?」
先輩は目を見開き、
それは楽しみだ、と嬉しそうな顔をした。
その後すぐに業務開始時間になり
俺と先輩はそのまま仕事になったが、
俺は先輩の嬉しそうな顔がひっかかって仕方がない。
まさか悠子ちゃんに惚れたりしてないよな?
大丈夫だよな?
昼休みは事務所の屋上に行き、
悠子ちゃんのお弁当を
食べることにする。
ペットボトルのお茶だけ買って、
ベンチの上にお弁当を広げて、
俺と先輩は、屋上のコンクリートの上に座った。
弁当は大きな透明の入れ物に
おむすびが三列に並んで入っていて、
箱の蓋に「シャケ」「おかか」
「昆布」と書いたシールが貼ってある。
おそらくおむすびの具が
わかるようになっているのだろう。
もう一つの入れ物を開けると、
ものすごく美味しそうな。
けれど可愛らしいお弁当が出て来た。
卵焼きに、ウインナー、
からあげ、小さなハンバーグ。
ササミが入ったサラダに、
ベーコンのアスパラまきまである。
色どりも綺麗だったし、
ところどころに、
悠子ちゃんらしさが入っていた。
たとえば、ウインナーは
タコさんウインナーだったし、
ハンバーグにはケチャップで
花まるが書いてある。
具材と具材の間を仕切る
チシャ菜が色どりを
綺麗にしていたし、
サラダの中にある
赤や黄色のパプリカも
見ているだけで食欲がわく。
「旨そうだな」
先輩は蓋を開けるなり、
じっと中身を見つめていた。
「えぇ、彼女は料理も
得意なんです」
俺は少し自慢げに言って
先輩にどうぞ、と
一緒に入っていた割り箸を渡した。
先輩はお礼を言いながら
まっさきに卵焼きを摘まむ。
「……美味しいな」
「はい」
先輩の顔が一瞬、泣きそうに
歪んだのを見たけれど、
俺は何も言わずに
おにぎりをかじった。
「……誰かの手料理なんて
何十年ぶりかな」
先輩はそんなことを言いながら
ばくばくと悠子ちゃんの
お弁当を食べていく。
俺のために悠子ちゃんが
作ってくれた弁当なんだぞ、と
内心は思っていたけれど。
嬉しそうに食べる先輩に
俺は何も言えずに
ひたすらおにぎりを食べていた。
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