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「……」
良かったと言うか、申し訳ないと言うか。
トウタが目を覚ますと、タカ達3人はボコボコにされ、ベッドに腰掛けるユリアの前に正座させられていた。
ユリアは状態異常耐性の指輪を付けていたため、スリープが効かなかったらしい。一応普通に寝ていたものの、トウタとタカ達が争う音で目を覚ましたとのこと。
後はショックガンでタカを返り討ちにし、残りの2人もしこたま痛め付けたという次第。
「で?なんでトウタくんも正座しているの?」
「なんとなく……助けられなかったし……」
「確かにそうね」
ユリアはタカ達の隣で正座するトウタをそのままに、彼らの持ち物をあらためていく。
身分証を取り出すと、3人に不敵な笑みを向けた。
「ずいぶん悪さをしているようね。冒険の途中で死んだことにすれば、気にする人もいなさそう」
「ちょ!ちょっと待って下さい、アネさん!」
少し前はユリアちゃんだのと蔑んでいたタカが、彼女を『アネさん』と呼称するようになっていた。
「なんで、私が待つ必要があるのかしら?」
「いや、それは……なあ?」
タカ達3人は顔を見合わせるが、さしたる反論は思い浮かばない様だ。
無様を晒す彼らを鼻で笑いながら、ユリアは悪の親玉みたいにふんぞり返った。
「生まれてから死ぬまでの話をしてよ。貴方達1人ずつ」
「え?アネさん?」
「生涯全ての身の上話をして、って言ってるのが分からない?」
「俺達生きてっけど……」
「あら?私は貴方達を殺すつもりよ。もう、死んだも同然じゃない」
「ひ!」
タカ達は即座に抵抗しようとしたが、ユリアに『ショックガン』の指輪を向けられて動きを止める。
あの攻撃は痛かったと、トウタは自分の腹を撫でた。
「1人ずつ自分の生い立ちを話して、私が興味を持ったら、死なないで済むかもしれないわよ。一番詳しく話した1人だけを助ける!ってのはどうかしら?」
ユリアは悪女のように微笑んだ。
それらしいことを言っているが、要するに情報収集をしたいのだろう。
3人からこの世界の常識や社会システムなどを知ることが出来れば、役に立つ可能性が高い。
(自分を襲おうとした相手から情報収取なんて…ユリアちゃんは豪胆だね……)
トウタは立ち上がり、扉へと向かう。長い話になりそうなので、食堂に水を取りに行こうと思ったのだ。
しかし、視線を感じて振り返ると、不安そうなユリアと目が合った。
「……僕はなんてバカなんだ」
トウタは拳を握り、自身の無能を呪った。
ユリアは普通の高校生の女の子だ。見知らぬ世界に飛ばされた上に、寝ている間に襲われそうになった。
気にしてない訳が無かった。
(危険な相手からでも情報を集めないといけない……だから、無理をしてでも強がっている…そんな事、考えなくても分かるだろうに……!)
トウタはドアの鍵が閉まっている事を確認し、荷物から手甲を出して装備する。
ユリアの側に戻ると、彼女を守る様に腰掛けた。
「ごめんね、次はちゃんと守るから」
「ん。期待してる」
不思議そうな顔をしているタカ達に、ユリアは再度話を促した。
3人は意味の無い話し合いの後、タカが最初に語りを始めた。
彼らの話は取り留めなく、その全てが知らぬこと。
彼らが常識として語る世界は、トウタの育った場所とは全く異なるものだった。
自分達がどんな所に来てしまったのかと、深い深い不安を呼び覚ます夜となった。
良かったと言うか、申し訳ないと言うか。
トウタが目を覚ますと、タカ達3人はボコボコにされ、ベッドに腰掛けるユリアの前に正座させられていた。
ユリアは状態異常耐性の指輪を付けていたため、スリープが効かなかったらしい。一応普通に寝ていたものの、トウタとタカ達が争う音で目を覚ましたとのこと。
後はショックガンでタカを返り討ちにし、残りの2人もしこたま痛め付けたという次第。
「で?なんでトウタくんも正座しているの?」
「なんとなく……助けられなかったし……」
「確かにそうね」
ユリアはタカ達の隣で正座するトウタをそのままに、彼らの持ち物をあらためていく。
身分証を取り出すと、3人に不敵な笑みを向けた。
「ずいぶん悪さをしているようね。冒険の途中で死んだことにすれば、気にする人もいなさそう」
「ちょ!ちょっと待って下さい、アネさん!」
少し前はユリアちゃんだのと蔑んでいたタカが、彼女を『アネさん』と呼称するようになっていた。
「なんで、私が待つ必要があるのかしら?」
「いや、それは……なあ?」
タカ達3人は顔を見合わせるが、さしたる反論は思い浮かばない様だ。
無様を晒す彼らを鼻で笑いながら、ユリアは悪の親玉みたいにふんぞり返った。
「生まれてから死ぬまでの話をしてよ。貴方達1人ずつ」
「え?アネさん?」
「生涯全ての身の上話をして、って言ってるのが分からない?」
「俺達生きてっけど……」
「あら?私は貴方達を殺すつもりよ。もう、死んだも同然じゃない」
「ひ!」
タカ達は即座に抵抗しようとしたが、ユリアに『ショックガン』の指輪を向けられて動きを止める。
あの攻撃は痛かったと、トウタは自分の腹を撫でた。
「1人ずつ自分の生い立ちを話して、私が興味を持ったら、死なないで済むかもしれないわよ。一番詳しく話した1人だけを助ける!ってのはどうかしら?」
ユリアは悪女のように微笑んだ。
それらしいことを言っているが、要するに情報収集をしたいのだろう。
3人からこの世界の常識や社会システムなどを知ることが出来れば、役に立つ可能性が高い。
(自分を襲おうとした相手から情報収取なんて…ユリアちゃんは豪胆だね……)
トウタは立ち上がり、扉へと向かう。長い話になりそうなので、食堂に水を取りに行こうと思ったのだ。
しかし、視線を感じて振り返ると、不安そうなユリアと目が合った。
「……僕はなんてバカなんだ」
トウタは拳を握り、自身の無能を呪った。
ユリアは普通の高校生の女の子だ。見知らぬ世界に飛ばされた上に、寝ている間に襲われそうになった。
気にしてない訳が無かった。
(危険な相手からでも情報を集めないといけない……だから、無理をしてでも強がっている…そんな事、考えなくても分かるだろうに……!)
トウタはドアの鍵が閉まっている事を確認し、荷物から手甲を出して装備する。
ユリアの側に戻ると、彼女を守る様に腰掛けた。
「ごめんね、次はちゃんと守るから」
「ん。期待してる」
不思議そうな顔をしているタカ達に、ユリアは再度話を促した。
3人は意味の無い話し合いの後、タカが最初に語りを始めた。
彼らの話は取り留めなく、その全てが知らぬこと。
彼らが常識として語る世界は、トウタの育った場所とは全く異なるものだった。
自分達がどんな所に来てしまったのかと、深い深い不安を呼び覚ます夜となった。
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