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「好き」
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「あっかんぞ…っかんぞぉっすき、だいすきっ」
喘ぎながら名前を呼んで告白され、更に高揚する。ばちゅ、ばちゅっと腰を早めて中に出した。
(はっ…夢か…)
朝勃ちしている股間を触りながらしばらく反芻して、布団から出て便所に行って出した。
(…朝っぱらから何やってんだ俺は…)
ドロ…と手についた白濁を拭いながら呆れる。
(会いたいな)
ぐ、と噛み締めて決めた。今日の仕事が終わったら会いに行こう。
茶と偽って媚薬を盛った篠崎を犯してから四ヶ月。お茶会の誘いからお出かけまで、何一つとして誘われなかった。なんなら避けられているようで声すらかけて来ない。
しかし、この間化け猫の龍進が経営する龍堂茶屋でたまたま鉢合わせた時は、気まずそうに、でも何か言いたそうにチラチラとこちらを伺ってきていた。
(そろそろ許してくれる…のかな)
ぱしゃぱしゃと顔を洗い、身支度をして朝ごはんを食べる。ほかほかの白米に卵を割り醤油をかけてかきこんだ。
「朝食(あさばみ)課長、おはようございます」
「ああ坂田、おはよう」
部下がくれた挨拶にさらっと返して仕事に入る。
「坂田、昨日出してくれたこれ、数字が間違ってるから直してくれないか」
「あ、本当だ。すみません。すぐ直します」
「朝食くんおはよう。これ、この計算だと次月の予算を超えるのだがもう少しなんとか出来ないかね?」
「部長、おはようございます。そうですね…やってみます」
ぱちぱちと算盤を弾きながら暦表とにらめっこして思案する。
(雑費を削って…いや、例年を見るとこれでかつかつか。…難しいな…)
なんとか案をひねりだして部長に提案し、仕事を終えて昼休憩に入った。
「朝食くん、お昼、一緒にどうかな?」
「あ、はい。では是非」
からん、と扉を開け洋食屋へ入る。昼時ということもあり混んでいたが席はあった。
漢三はナポリタンを、部長はカレーを頂きながら仕事について話していた。
「…ところで朝食くん、君は今良い人はいるのかな」
「ン゛ン゛ッ…げほっ…それはどういうことでしょうか」
「うちの親戚が見合いの相手を探していてね。君ならと思ったんだけど…」
「…そうですか…。すみません、俺は心に決めた人がいるので」
「!…そうなのか、悪いことをしたね。どんな人なんだい?聞いても良いかな」
「あ…ええと…誰にでも優しくて、笑顔が…その…かわいい…です」
顔を赤らめてぼそぼそと言う漢三に部長は目を細めて微笑んだ。
「幸せになっておくれよ」
「…ありがとうございます」
苦笑いを返した。
部長のせいで篠崎のことを思い出してしまい、午後の仕事は彼のことで頭がいっぱいで手につかなかった。
「すまんが先に失礼する。あまり根を詰めすぎるなよ」
部下に声をかけて退社する。電車に乗って住んでいる街へと帰った。駅を出ると早歩きで篠崎の家へ直行した。
コンコン、と玄関のドアノッカーを叩く。返事がなく、鍵も開いていたので中に入ると、風呂上りなのかしっとりと濡れた髪を下ろした彼が台所に立っていた。
「篠崎」
「っえ、漢三…?」
びくっと肩を震わせて、剥いていたじゃがいもの皮をぽとりと落としながら篠崎が振り返る。
漢三は、へにゃ、と眉を下げて、「久しぶり」と微笑んだ。
「ぁ…うん、久しぶり…」
篠崎は剥き途中のじゃがいもを桶の水の中に入れ、包丁を置いて前掛けで手を拭きながら気まずそうにこちらにきた。
「どうしたん?急に」
「…会いたくて」
「…そう…あ、茶でも飲む…?作り置きの麦茶やけど」
「もらおうかな」
漢三が椅子に掛けると、とぽぽ、とガラスのコップに麦茶を注いで渡してくれた。受け取る際に指先が触れてどきりとする。
ごく、と一口飲んで口を開く。
「…あのさ。」
「…なに?」
「あん時は…ごめんな」
「…」
「また一緒に茶が飲みたい」
「…もうええよ」
「っ…それは、もう嫌「違う」
苦しそうな顔をした漢三の言葉を遮る。
「違うんよ、許す…ってことや」
「篠崎…」
「ほいほい飲んだウチも悪かったしな。…あと意地張りすぎた。…すまん」
泣きそうになるのを堪えて、漢三は絞り出した。
「…ありがとう。」
「…よかったら、今日はうちで食べていかん?まだ作り始めたばっかなんやけど」
「え、いいのか?」
「ん…ええよ」
困ったように微笑んだ篠崎に、ふにゃ、と笑って、漢三は「ありがとう」と椅子から立った。
くつくつ、具材が鍋の中で震える。
「肉じゃが?」
「うん、煮物くらいしか作れんからな。ええか?」
「ああ、好きだ」
篠崎は煮込んだ肉じゃがを小皿についで味見する。「どう?」とそのまま小皿を渡してきた。
「うん、うまい」
「そか、よかった」
にこ、と笑った篠崎を見て胸がきゅんとする。ああ、本当に可愛い。
「…篠崎」
小皿を台に置き篠崎の手をとる。
「…なに?」
「…好きだ」
言ってしまった途端気持ちが溢れて手を引いて抱きしめた。ぼろ、と涙が溢れて頬を伝った。
「篠崎…」
「ん」
ぐず、と鼻をすすると、ぽんぽん、と背中を叩いてあやされて、涙が止まらなくなった。ぎゅう、と胸が締め付けられて、篠崎にしがみついて泣いた。
「すきだ、すきだ…篠崎っ…」
「…ん」
片手で鍋の火を止め、漢三の背中に手を回して抱き寄せる。ぎゅ、と力を入れて抱きしめた。
よしよし、と頭を撫でてやると漢三が身体を離して聞いてきた。
「くちづけ…してもいいか?」
「ん、ええよ」
「ありがと…」
ゆっくりと唇を合わせる。啄むように何度かくちづけて、漢三は身体を離そうとした。
「これ以上のことは…せんの…?」
視線を逸らして篠崎が聞く。
「…いいのか?」
「…うん」
篠崎は頬を赤らめて頷いた。
鍋に蓋をし片付けもほどほどに、荷物を置いて寝室へと向かう。途中篠崎が手を握ってくるから、握り返して微笑んだ。
ぽふ、と篠崎がベッドに腰掛ける。見上げてきた篠崎の寝巻きから胸がのぞいて、ピアスが光った。どく、どく、と心臓がうるさい。
ゴクリ、と唾を飲んで「本当にいいのか?」と確認する。
「ええってゆったやん」
何度も言わせんといて…とぽそりと言われて、じゃあ…と篠崎の右隣に腰掛け、後頭部に手を回して顔を寄せた。
ちゅ…くちゅ、…ちゅ、と啄みながら舌を絡める。
「は…ん…ん……ぁ…ん」
はあ、と熱い吐息が絡んでまた口付ける。
「ぁ……はぁ、んっ」
ちゅう、と舌を吸って口を離した。
とろ、と篠崎の口の端から涎が垂れて、指で拭ってやる。
篠崎をゆっくりとベッドに押し倒して覆いかぶさる。する、と寝巻きの襟から胸にあいたコルセットピアスの付け根に指を這わせた。すす、と金属の通ったでこぼこの皮膚を撫で、そのまま乳首へと向かう。触れるか触れないかのところで擦ると、篠崎がシーツを握りしめた。
「篠崎、俺の手握って」
篠崎の右手に左手の指を絡め、反対の手で帯の蝶々結びの片方を引く。しゅる、と解けて寝巻きをはだけさせた。
篠崎の胸に手を添える。とくん、とくんと心臓の鼓動が伝わってきた。それすらも愛しくて首筋にキスをする。ぺろ、と舐めると「んん」と小さな声がした。
そのまま舌でつつ、と鎖骨を舐め、そこにあいたピアスのまわりをなぞる。
右手で篠崎の胸を撫でて乳首を指先でひっかくと、握った手にきゅ、と力が入った。
「…あんま、焦らさんといて…」
吐息まじりに囁かれて熱が上がる。
「…煽るなよ」
乳首に舌を這わせ吸い付いた。同時に下も弄ってやる。もう既に勃っていたそれは刺激を受けて更に固く太くなった。
「は、ぁ…っあ、…んっ」
ちゅぱっと乳首から口を離し反対の乳首を責める。ちろちろと舐めて軽く食んだ。
「あっ」
びく、と篠崎の腰が震えて甘い声が出る。
かぷかぷと軽く噛んだり、ぺろぺろと舐めながら、右手を陰茎から後ろの穴へと滑らせた。口を離して言う。
「…脚、開いて」
「…ん…」
言われた通り素直に股を広げた篠崎の穴に指を沈める。ゆっくり、傷つけないように優しく解した。
「…ん、やから…焦らさないでって…っ」
物足りない、という顔の篠崎に胸がきゅんとして虐めたくなる。
くに、くに、と前立腺ではないすれすれのところを擦った。
「…いじわる…っ」
じわ、と涙を溜めて篠崎が自ら腰を振る。気持ちいいところに当てたくてゆるゆると動かすが、漢三がそれを避けて快感を先延ばしにした。
「漢三のばか、やだ、はやく、はやく欲しい…っ」
おねがい、と涙目で強請る篠崎にキスをして指を抜き体勢を整える。
「は、お前が、欲しいって言ったんだからな…」
ギチギチに勃ったそれにベッド横にあったワセリンを塗り、篠崎の穴に当てる。ぷちゅ、と合わせて中心に力を込めてずぶ、と挿れた。
「ぁ、あ…あ♡」
篠崎が身体を逸らせて快感を逃そうとする。
抜ける寸前まで引いて、奥にごつんと当てに行った。
「は、ぁっ♡」
ごちゅんっごちゅ、ぱちゅっ
「あ、かんぞっはげし、あっだめっ」
「…っ欲しいって言ったりダメって言ったりどっちなんだよ…っやめるか?」
「ん、ぁ、やめないでっ」
篠崎の脚を持ち上げて腰を揺らす。そのまま覆いかぶさって更に奥に挿れこんだ。
「んぁ♡あ、あ♡おく、きてる♡」
篠崎の竿も弄ってやりながら腰を突く。
「は、ぁっあ、んぁ、か、んぞ、かんぞっ」
「ンだよ、篠崎…っ」
「きもち…っ」
とろ、と溶けた目で眉を下げ、ぐしゃぐしゃの顔で篠崎は伝えた。ぎゅ、と胸が苦しくなって、漢三も言う。
「俺も気持ちいい…好きだよ、篠崎…っ」
「んっ…あり、がと…っ」
は、はぁ、ぱちゅ、ばちゅ、と互いに腰を揺らして求め合う。
「漢三…っ」
篠崎が両手を広げてハグを強請ったので、抱き起こして対面座位でまた腰を揺らした。
「あ、あっ♡かんぞ、かんぞぉ♡」
ぎゅ、と抱きしめて篠崎が漢三の名を呼ぶ。
「…っく、篠崎…っ」
漢三も篠崎を強く抱きしめて篠崎を呼んだ。
ガツガツと腰を早める。
「はっはっ…篠崎っ篠崎…ッ」
「んぁ♡…あっ♡かんぞぉっ…ん゛んっ」
ガブ、と篠崎の刺青の入った肩口にかじりつく。犬歯が刺さって血が出た。
構わずに腰を打ち付ける。
「んぁ♡あ♡くる、くる、キちゃうっかんぞぉっ♡」
ばちゅばちゅ、ごつっ
「あ♡ぁっ♡あぁーーーッッ♡♡」
びくびく、と身体を縮こまらせて、篠崎はどろりと精液を垂れ流した。どく、どく、と鼓動に合わせて溢れる。
「は、イけたな、えらいな」
口を離し篠崎の頭をするりと撫でて褒める。
「んぁ、あっやだっとま、とまってっ」
「ッ…俺がまだイってないだろ、はぁ、俺もイかせてくれよっ…」
「あ、はっ、ぁあっやぁ、やだっまたキちゃう!んぁ、あッ、あ……!♡」
びく、と今度は背筋を逸らして篠崎はイッた。どぷ、とまた精液が流れて結合部を濡らす。
「は、はっ何回イくんだよおまえ…っ」
「あ♡やだ、やだやだ、もぉ、むりっ」
がつがつがつ、自重で奥に入る陰茎が、快感で締まる筋肉のせいでありありと感じられてまた波が来る。
「あ、あっやだ、やだぁッ♡♡」
がくがく、と膝を震わせて漢三にしがみついた。
「は、ぁ…っ」
ごろ、と体勢を変え、篠崎を下に寝かせて正常位で突く。
ごちゅごちゅ、ばちゅっと激しく突いて射精に備える。
「ぁ、あっやだ、やだっもうイきたくないッ」
「ぁ、くる、篠崎、イく、イくぞ、出すぞ…っ!」
「んぁ、は、あっ♡ああああぁーーッッッ♡♡」
「く、ぅ…!」
びゅるるッと激しく出た精は篠崎の中にぶちまけられた。
「は、はぁ、まだでる…」
きゅん、きゅんと締め付けられるたびに搾り取られるように精液がびゅる、と出た。
「…はーー…」
「…漢三のばか」
ずび、と鼻をすする篠崎は漢三に腕枕されて丸まっていた。
「ごめんて…ホラ、ほしいっつったからヤダって言ってももっとやれって意味かと思って…」
「欲しいとは言ったけども…!…う、もういい…ウチが悪いわ」
「なぁ、篠崎」
「ん?」
「俺のこと…好きか?」
「…嫌いだったらこんなことせんよ」
「…もう一つ聞かせてくれ。それは俺と同じ好きか?」
「……わるい。ナカ洗ってくる。」
篠崎はよろよろと部屋から出て行ってしまった。
「くそ…」
漢三は一人ベッドに残され、腕で顔を隠しつぶやいた。
「好きとは言ってくれねぇんだな…」
喘ぎながら名前を呼んで告白され、更に高揚する。ばちゅ、ばちゅっと腰を早めて中に出した。
(はっ…夢か…)
朝勃ちしている股間を触りながらしばらく反芻して、布団から出て便所に行って出した。
(…朝っぱらから何やってんだ俺は…)
ドロ…と手についた白濁を拭いながら呆れる。
(会いたいな)
ぐ、と噛み締めて決めた。今日の仕事が終わったら会いに行こう。
茶と偽って媚薬を盛った篠崎を犯してから四ヶ月。お茶会の誘いからお出かけまで、何一つとして誘われなかった。なんなら避けられているようで声すらかけて来ない。
しかし、この間化け猫の龍進が経営する龍堂茶屋でたまたま鉢合わせた時は、気まずそうに、でも何か言いたそうにチラチラとこちらを伺ってきていた。
(そろそろ許してくれる…のかな)
ぱしゃぱしゃと顔を洗い、身支度をして朝ごはんを食べる。ほかほかの白米に卵を割り醤油をかけてかきこんだ。
「朝食(あさばみ)課長、おはようございます」
「ああ坂田、おはよう」
部下がくれた挨拶にさらっと返して仕事に入る。
「坂田、昨日出してくれたこれ、数字が間違ってるから直してくれないか」
「あ、本当だ。すみません。すぐ直します」
「朝食くんおはよう。これ、この計算だと次月の予算を超えるのだがもう少しなんとか出来ないかね?」
「部長、おはようございます。そうですね…やってみます」
ぱちぱちと算盤を弾きながら暦表とにらめっこして思案する。
(雑費を削って…いや、例年を見るとこれでかつかつか。…難しいな…)
なんとか案をひねりだして部長に提案し、仕事を終えて昼休憩に入った。
「朝食くん、お昼、一緒にどうかな?」
「あ、はい。では是非」
からん、と扉を開け洋食屋へ入る。昼時ということもあり混んでいたが席はあった。
漢三はナポリタンを、部長はカレーを頂きながら仕事について話していた。
「…ところで朝食くん、君は今良い人はいるのかな」
「ン゛ン゛ッ…げほっ…それはどういうことでしょうか」
「うちの親戚が見合いの相手を探していてね。君ならと思ったんだけど…」
「…そうですか…。すみません、俺は心に決めた人がいるので」
「!…そうなのか、悪いことをしたね。どんな人なんだい?聞いても良いかな」
「あ…ええと…誰にでも優しくて、笑顔が…その…かわいい…です」
顔を赤らめてぼそぼそと言う漢三に部長は目を細めて微笑んだ。
「幸せになっておくれよ」
「…ありがとうございます」
苦笑いを返した。
部長のせいで篠崎のことを思い出してしまい、午後の仕事は彼のことで頭がいっぱいで手につかなかった。
「すまんが先に失礼する。あまり根を詰めすぎるなよ」
部下に声をかけて退社する。電車に乗って住んでいる街へと帰った。駅を出ると早歩きで篠崎の家へ直行した。
コンコン、と玄関のドアノッカーを叩く。返事がなく、鍵も開いていたので中に入ると、風呂上りなのかしっとりと濡れた髪を下ろした彼が台所に立っていた。
「篠崎」
「っえ、漢三…?」
びくっと肩を震わせて、剥いていたじゃがいもの皮をぽとりと落としながら篠崎が振り返る。
漢三は、へにゃ、と眉を下げて、「久しぶり」と微笑んだ。
「ぁ…うん、久しぶり…」
篠崎は剥き途中のじゃがいもを桶の水の中に入れ、包丁を置いて前掛けで手を拭きながら気まずそうにこちらにきた。
「どうしたん?急に」
「…会いたくて」
「…そう…あ、茶でも飲む…?作り置きの麦茶やけど」
「もらおうかな」
漢三が椅子に掛けると、とぽぽ、とガラスのコップに麦茶を注いで渡してくれた。受け取る際に指先が触れてどきりとする。
ごく、と一口飲んで口を開く。
「…あのさ。」
「…なに?」
「あん時は…ごめんな」
「…」
「また一緒に茶が飲みたい」
「…もうええよ」
「っ…それは、もう嫌「違う」
苦しそうな顔をした漢三の言葉を遮る。
「違うんよ、許す…ってことや」
「篠崎…」
「ほいほい飲んだウチも悪かったしな。…あと意地張りすぎた。…すまん」
泣きそうになるのを堪えて、漢三は絞り出した。
「…ありがとう。」
「…よかったら、今日はうちで食べていかん?まだ作り始めたばっかなんやけど」
「え、いいのか?」
「ん…ええよ」
困ったように微笑んだ篠崎に、ふにゃ、と笑って、漢三は「ありがとう」と椅子から立った。
くつくつ、具材が鍋の中で震える。
「肉じゃが?」
「うん、煮物くらいしか作れんからな。ええか?」
「ああ、好きだ」
篠崎は煮込んだ肉じゃがを小皿についで味見する。「どう?」とそのまま小皿を渡してきた。
「うん、うまい」
「そか、よかった」
にこ、と笑った篠崎を見て胸がきゅんとする。ああ、本当に可愛い。
「…篠崎」
小皿を台に置き篠崎の手をとる。
「…なに?」
「…好きだ」
言ってしまった途端気持ちが溢れて手を引いて抱きしめた。ぼろ、と涙が溢れて頬を伝った。
「篠崎…」
「ん」
ぐず、と鼻をすすると、ぽんぽん、と背中を叩いてあやされて、涙が止まらなくなった。ぎゅう、と胸が締め付けられて、篠崎にしがみついて泣いた。
「すきだ、すきだ…篠崎っ…」
「…ん」
片手で鍋の火を止め、漢三の背中に手を回して抱き寄せる。ぎゅ、と力を入れて抱きしめた。
よしよし、と頭を撫でてやると漢三が身体を離して聞いてきた。
「くちづけ…してもいいか?」
「ん、ええよ」
「ありがと…」
ゆっくりと唇を合わせる。啄むように何度かくちづけて、漢三は身体を離そうとした。
「これ以上のことは…せんの…?」
視線を逸らして篠崎が聞く。
「…いいのか?」
「…うん」
篠崎は頬を赤らめて頷いた。
鍋に蓋をし片付けもほどほどに、荷物を置いて寝室へと向かう。途中篠崎が手を握ってくるから、握り返して微笑んだ。
ぽふ、と篠崎がベッドに腰掛ける。見上げてきた篠崎の寝巻きから胸がのぞいて、ピアスが光った。どく、どく、と心臓がうるさい。
ゴクリ、と唾を飲んで「本当にいいのか?」と確認する。
「ええってゆったやん」
何度も言わせんといて…とぽそりと言われて、じゃあ…と篠崎の右隣に腰掛け、後頭部に手を回して顔を寄せた。
ちゅ…くちゅ、…ちゅ、と啄みながら舌を絡める。
「は…ん…ん……ぁ…ん」
はあ、と熱い吐息が絡んでまた口付ける。
「ぁ……はぁ、んっ」
ちゅう、と舌を吸って口を離した。
とろ、と篠崎の口の端から涎が垂れて、指で拭ってやる。
篠崎をゆっくりとベッドに押し倒して覆いかぶさる。する、と寝巻きの襟から胸にあいたコルセットピアスの付け根に指を這わせた。すす、と金属の通ったでこぼこの皮膚を撫で、そのまま乳首へと向かう。触れるか触れないかのところで擦ると、篠崎がシーツを握りしめた。
「篠崎、俺の手握って」
篠崎の右手に左手の指を絡め、反対の手で帯の蝶々結びの片方を引く。しゅる、と解けて寝巻きをはだけさせた。
篠崎の胸に手を添える。とくん、とくんと心臓の鼓動が伝わってきた。それすらも愛しくて首筋にキスをする。ぺろ、と舐めると「んん」と小さな声がした。
そのまま舌でつつ、と鎖骨を舐め、そこにあいたピアスのまわりをなぞる。
右手で篠崎の胸を撫でて乳首を指先でひっかくと、握った手にきゅ、と力が入った。
「…あんま、焦らさんといて…」
吐息まじりに囁かれて熱が上がる。
「…煽るなよ」
乳首に舌を這わせ吸い付いた。同時に下も弄ってやる。もう既に勃っていたそれは刺激を受けて更に固く太くなった。
「は、ぁ…っあ、…んっ」
ちゅぱっと乳首から口を離し反対の乳首を責める。ちろちろと舐めて軽く食んだ。
「あっ」
びく、と篠崎の腰が震えて甘い声が出る。
かぷかぷと軽く噛んだり、ぺろぺろと舐めながら、右手を陰茎から後ろの穴へと滑らせた。口を離して言う。
「…脚、開いて」
「…ん…」
言われた通り素直に股を広げた篠崎の穴に指を沈める。ゆっくり、傷つけないように優しく解した。
「…ん、やから…焦らさないでって…っ」
物足りない、という顔の篠崎に胸がきゅんとして虐めたくなる。
くに、くに、と前立腺ではないすれすれのところを擦った。
「…いじわる…っ」
じわ、と涙を溜めて篠崎が自ら腰を振る。気持ちいいところに当てたくてゆるゆると動かすが、漢三がそれを避けて快感を先延ばしにした。
「漢三のばか、やだ、はやく、はやく欲しい…っ」
おねがい、と涙目で強請る篠崎にキスをして指を抜き体勢を整える。
「は、お前が、欲しいって言ったんだからな…」
ギチギチに勃ったそれにベッド横にあったワセリンを塗り、篠崎の穴に当てる。ぷちゅ、と合わせて中心に力を込めてずぶ、と挿れた。
「ぁ、あ…あ♡」
篠崎が身体を逸らせて快感を逃そうとする。
抜ける寸前まで引いて、奥にごつんと当てに行った。
「は、ぁっ♡」
ごちゅんっごちゅ、ぱちゅっ
「あ、かんぞっはげし、あっだめっ」
「…っ欲しいって言ったりダメって言ったりどっちなんだよ…っやめるか?」
「ん、ぁ、やめないでっ」
篠崎の脚を持ち上げて腰を揺らす。そのまま覆いかぶさって更に奥に挿れこんだ。
「んぁ♡あ、あ♡おく、きてる♡」
篠崎の竿も弄ってやりながら腰を突く。
「は、ぁっあ、んぁ、か、んぞ、かんぞっ」
「ンだよ、篠崎…っ」
「きもち…っ」
とろ、と溶けた目で眉を下げ、ぐしゃぐしゃの顔で篠崎は伝えた。ぎゅ、と胸が苦しくなって、漢三も言う。
「俺も気持ちいい…好きだよ、篠崎…っ」
「んっ…あり、がと…っ」
は、はぁ、ぱちゅ、ばちゅ、と互いに腰を揺らして求め合う。
「漢三…っ」
篠崎が両手を広げてハグを強請ったので、抱き起こして対面座位でまた腰を揺らした。
「あ、あっ♡かんぞ、かんぞぉ♡」
ぎゅ、と抱きしめて篠崎が漢三の名を呼ぶ。
「…っく、篠崎…っ」
漢三も篠崎を強く抱きしめて篠崎を呼んだ。
ガツガツと腰を早める。
「はっはっ…篠崎っ篠崎…ッ」
「んぁ♡…あっ♡かんぞぉっ…ん゛んっ」
ガブ、と篠崎の刺青の入った肩口にかじりつく。犬歯が刺さって血が出た。
構わずに腰を打ち付ける。
「んぁ♡あ♡くる、くる、キちゃうっかんぞぉっ♡」
ばちゅばちゅ、ごつっ
「あ♡ぁっ♡あぁーーーッッ♡♡」
びくびく、と身体を縮こまらせて、篠崎はどろりと精液を垂れ流した。どく、どく、と鼓動に合わせて溢れる。
「は、イけたな、えらいな」
口を離し篠崎の頭をするりと撫でて褒める。
「んぁ、あっやだっとま、とまってっ」
「ッ…俺がまだイってないだろ、はぁ、俺もイかせてくれよっ…」
「あ、はっ、ぁあっやぁ、やだっまたキちゃう!んぁ、あッ、あ……!♡」
びく、と今度は背筋を逸らして篠崎はイッた。どぷ、とまた精液が流れて結合部を濡らす。
「は、はっ何回イくんだよおまえ…っ」
「あ♡やだ、やだやだ、もぉ、むりっ」
がつがつがつ、自重で奥に入る陰茎が、快感で締まる筋肉のせいでありありと感じられてまた波が来る。
「あ、あっやだ、やだぁッ♡♡」
がくがく、と膝を震わせて漢三にしがみついた。
「は、ぁ…っ」
ごろ、と体勢を変え、篠崎を下に寝かせて正常位で突く。
ごちゅごちゅ、ばちゅっと激しく突いて射精に備える。
「ぁ、あっやだ、やだっもうイきたくないッ」
「ぁ、くる、篠崎、イく、イくぞ、出すぞ…っ!」
「んぁ、は、あっ♡ああああぁーーッッッ♡♡」
「く、ぅ…!」
びゅるるッと激しく出た精は篠崎の中にぶちまけられた。
「は、はぁ、まだでる…」
きゅん、きゅんと締め付けられるたびに搾り取られるように精液がびゅる、と出た。
「…はーー…」
「…漢三のばか」
ずび、と鼻をすする篠崎は漢三に腕枕されて丸まっていた。
「ごめんて…ホラ、ほしいっつったからヤダって言ってももっとやれって意味かと思って…」
「欲しいとは言ったけども…!…う、もういい…ウチが悪いわ」
「なぁ、篠崎」
「ん?」
「俺のこと…好きか?」
「…嫌いだったらこんなことせんよ」
「…もう一つ聞かせてくれ。それは俺と同じ好きか?」
「……わるい。ナカ洗ってくる。」
篠崎はよろよろと部屋から出て行ってしまった。
「くそ…」
漢三は一人ベッドに残され、腕で顔を隠しつぶやいた。
「好きとは言ってくれねぇんだな…」
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ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
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※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
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