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第4話 ダークエッグ
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ジュガ達は慎重にその能力を駿にコピーした後、統合次元体内に訓練用の亜空間を作り出し、駿は暫く、その空間で能力の操作を訓練していた。
「派遣隊(ソルジャー)がテラに行ったみたい。」アイが心配そうに報告した。
「あまり派手にやって欲しくないけど。僕等も万全の準備を整えて於こう。下手をしたら僕の古里が無くなってしまうかも知れないからね。」
ケイが心配そうに話した。訓練空間から戻ったジュガが
「順調だけど、駿の美幸への思いが強すぎるのが気がかりね。」
訓練空間での鍛錬は、駿の感覚では半年程続いた様に思えていたが、そんな時間を過ごしていた最後の仕上げとして、謂わば卒業試験の様な課題をこなしていた時に、いきなり別空間に移送された駿が目覚めると、そこは見た事の無い施設、巨大な装置の中とも思える一種の部屋に居た。
「目が覚めた?いきなり転送して悪かったわね。一寸急いでいたもんで。」ジュガが駿の顔を覗き込みながら言った。
「ここ、何所?」
「うんーん、君達の表現で言うなら宇宙船の中かな。」
「宇宙船?て事は、今宇宙を飛んでるの。」
「ああ、超光速で、所謂ワープ航行で、ある星へ向かってる。」そう言うと、ケイが装置を作動させたのか周囲の白い壁が素通しになって、まるでプラネタリュームに居るように星々が見えた。只一寸違う所は、後方の星の光は無く、左右の星々は光の残像だけを残して消えていっていた。
「惑星コボル、僕らの時代では時空凍結されてしまった惑星で、調査しようにも手が出せない場所さ。この時代なら、まだ何とか成りそうだけどね。」
「そこへ行って如何するんだ?」
「取り合えずは、テラ(地球)での出来事との関連の調査、出来れば、今回の虚無空間の発動の原因を探りたい。」
「その星は、地球の事件と関係がある訳なんだな。」
「うん、エッグの時空揺らぎの足跡をたどったら、コボルにたどり着いた訳さ。」
「曰く付きの惑星だからね、私たちの世界では。古いデータによると地球に良く似た惑星らしいけど、行ってみないと良く分からないね。この時代では、亜空間チューブがまだ造られていないので、実際に飛んで行かなきゃ成らないのが面倒だけど。」
「4.7百光年は、一寸遠いけどね。」
「4.7百光年?行くのに数百年も掛かるじゃないか!」
「大丈夫、この船は速いから、銀河平面をアナログ時計で考えると、3時の位置から21時の場所へ直線で飛んでるような状況かな。」
その惑星は、何かの呪いを掛けられたか様に、惑星表面には異様な雲が渦を巻き、食べ物に例えるなら、腐っている様な状況にさえ見えた。
「星(惑星)が泣いているわ。」とアイが言うと
「どんな状況だ。」ケイの質問に、アイがビュワーを展開してから
「星の核がやられている。恐らく、虚無空間の触手が侵入して星の生命エネルギーを吸いつくしているわ。」
船が惑星の周回軌道に乗ろうとした時、蛇の様な黒い触手の攻撃を受けた。
「ダメだ、これじゃぁー近づけない。あの触手をなんとかしなきゃ!」とジュガが言いながら、一時的に、攻撃範囲の外に退避してから、
「探査機を送るわ。」と言って、幾つかの光の玉を発射した。
「周囲に、時空の歪みがある。」ケイの報告を、アイがビュワーに映し出すと「この星系の中心からね。」
「じゃー太陽もやられているのか?」すかさず、ケイが長距離スキャナーで恒星を映し出した。
「まだ大丈夫そうだが、ダークエッグの通り道の様だな。」
「太陽に引き寄せられてから、その勢いで、あの惑星に取り付いたか。」
「ひも状の歪みに芯の様なものがあるわ。亜空間トンネルに近い波動パターンを持っているわ。」
「そうか、それなら、そこを通して触手の中心部にフォトン魚雷を打ち込もう。」
「ダメよ。そんな事したら、惑星の核が崩壊してしまうわ。」
「それなら、僕らが行って、コアを破壊しよう。」
「でも、もう少し近づかないと、量子化転送も無理よ。」
「くそー、あの黒い触手がじゃまだな。」
「それなら、惑星の周りに、亜空間ネットを張れば!」
「そうか、駿、いいアイデアだ。」
船は、惑星の周りを幾周もまわり、クラス5レベルのプラズマ流の帯で取り囲み、触手の動きを封じ込めると、転送可能距離まで近づき、アイを船に残して3者はコアに突入した。歪みの芯部分のトンネルを通りながら、コアに近づくと、惑星の核の近くに、巨大な空間が形成されていて、大きな石英の結晶が周囲から生えていて、まるで剣山の中にいる様であった。コアの存在は、直ぐに分かり、黒い卵の様なその存在は、周りの石英を通してある種の波動エネルギーを放っていた。コアの攻撃を受ける前に、ジュガとケイが位相転換バリアとクロノバリアを使い、コアの封じ込め作業を行いながら、駿が亜空間トンネルの入り口を作り出しコアを牢獄空間へと押し込んだ。コアの封じ込めに成功した事で、惑星を覆っていた黒い触手が消滅したが、依然、惑星の周りの時空の歪は残ったままだった。
ジュガ達は、慎重に周囲の石英の針の壁を探査した後、壁に穴をあけ周囲のマグマを流入させ、空間に満たすと、惑星の地表に転移した。
地表は硫黄のガスで覆われていて、そのガスが大きな渦となり絡まり合い、密度の濃い所は、竜が暴れている様にも見えた。
「本当に、腐っている。」と駿が言うと
「あの触手が、暴れる度に地表の岩石を分解してしまい、気化し易い硫黄が大気中に放出された結果だな。」とケイが周囲の探査結果を報告した。
「もう一つコアが有ったみたいだけど逃げられたわ。」船にいるアイから報告があり、
「それが地球に行ったのか。何方にしても、この星域の歪が残っている以上またコアが送り込まれてくるから、星域ごと凍結するしかなかった訳か。」
「じゃーここを凍結したのは、僕らって事なの?」
「そうね、因果律からするとそう成るわね。」
「残念だが、この惑星の生命体は救えなかったな。」
「早く対処しないと、地球もこう成ってしまう。」
「ああ、でも、まだ時間はある。何故なら、この惑星が凍結された時間は、駿のいた地球時間よりも2百年程度前の話だからな。」
「派遣隊(ソルジャー)がテラに行ったみたい。」アイが心配そうに報告した。
「あまり派手にやって欲しくないけど。僕等も万全の準備を整えて於こう。下手をしたら僕の古里が無くなってしまうかも知れないからね。」
ケイが心配そうに話した。訓練空間から戻ったジュガが
「順調だけど、駿の美幸への思いが強すぎるのが気がかりね。」
訓練空間での鍛錬は、駿の感覚では半年程続いた様に思えていたが、そんな時間を過ごしていた最後の仕上げとして、謂わば卒業試験の様な課題をこなしていた時に、いきなり別空間に移送された駿が目覚めると、そこは見た事の無い施設、巨大な装置の中とも思える一種の部屋に居た。
「目が覚めた?いきなり転送して悪かったわね。一寸急いでいたもんで。」ジュガが駿の顔を覗き込みながら言った。
「ここ、何所?」
「うんーん、君達の表現で言うなら宇宙船の中かな。」
「宇宙船?て事は、今宇宙を飛んでるの。」
「ああ、超光速で、所謂ワープ航行で、ある星へ向かってる。」そう言うと、ケイが装置を作動させたのか周囲の白い壁が素通しになって、まるでプラネタリュームに居るように星々が見えた。只一寸違う所は、後方の星の光は無く、左右の星々は光の残像だけを残して消えていっていた。
「惑星コボル、僕らの時代では時空凍結されてしまった惑星で、調査しようにも手が出せない場所さ。この時代なら、まだ何とか成りそうだけどね。」
「そこへ行って如何するんだ?」
「取り合えずは、テラ(地球)での出来事との関連の調査、出来れば、今回の虚無空間の発動の原因を探りたい。」
「その星は、地球の事件と関係がある訳なんだな。」
「うん、エッグの時空揺らぎの足跡をたどったら、コボルにたどり着いた訳さ。」
「曰く付きの惑星だからね、私たちの世界では。古いデータによると地球に良く似た惑星らしいけど、行ってみないと良く分からないね。この時代では、亜空間チューブがまだ造られていないので、実際に飛んで行かなきゃ成らないのが面倒だけど。」
「4.7百光年は、一寸遠いけどね。」
「4.7百光年?行くのに数百年も掛かるじゃないか!」
「大丈夫、この船は速いから、銀河平面をアナログ時計で考えると、3時の位置から21時の場所へ直線で飛んでるような状況かな。」
その惑星は、何かの呪いを掛けられたか様に、惑星表面には異様な雲が渦を巻き、食べ物に例えるなら、腐っている様な状況にさえ見えた。
「星(惑星)が泣いているわ。」とアイが言うと
「どんな状況だ。」ケイの質問に、アイがビュワーを展開してから
「星の核がやられている。恐らく、虚無空間の触手が侵入して星の生命エネルギーを吸いつくしているわ。」
船が惑星の周回軌道に乗ろうとした時、蛇の様な黒い触手の攻撃を受けた。
「ダメだ、これじゃぁー近づけない。あの触手をなんとかしなきゃ!」とジュガが言いながら、一時的に、攻撃範囲の外に退避してから、
「探査機を送るわ。」と言って、幾つかの光の玉を発射した。
「周囲に、時空の歪みがある。」ケイの報告を、アイがビュワーに映し出すと「この星系の中心からね。」
「じゃー太陽もやられているのか?」すかさず、ケイが長距離スキャナーで恒星を映し出した。
「まだ大丈夫そうだが、ダークエッグの通り道の様だな。」
「太陽に引き寄せられてから、その勢いで、あの惑星に取り付いたか。」
「ひも状の歪みに芯の様なものがあるわ。亜空間トンネルに近い波動パターンを持っているわ。」
「そうか、それなら、そこを通して触手の中心部にフォトン魚雷を打ち込もう。」
「ダメよ。そんな事したら、惑星の核が崩壊してしまうわ。」
「それなら、僕らが行って、コアを破壊しよう。」
「でも、もう少し近づかないと、量子化転送も無理よ。」
「くそー、あの黒い触手がじゃまだな。」
「それなら、惑星の周りに、亜空間ネットを張れば!」
「そうか、駿、いいアイデアだ。」
船は、惑星の周りを幾周もまわり、クラス5レベルのプラズマ流の帯で取り囲み、触手の動きを封じ込めると、転送可能距離まで近づき、アイを船に残して3者はコアに突入した。歪みの芯部分のトンネルを通りながら、コアに近づくと、惑星の核の近くに、巨大な空間が形成されていて、大きな石英の結晶が周囲から生えていて、まるで剣山の中にいる様であった。コアの存在は、直ぐに分かり、黒い卵の様なその存在は、周りの石英を通してある種の波動エネルギーを放っていた。コアの攻撃を受ける前に、ジュガとケイが位相転換バリアとクロノバリアを使い、コアの封じ込め作業を行いながら、駿が亜空間トンネルの入り口を作り出しコアを牢獄空間へと押し込んだ。コアの封じ込めに成功した事で、惑星を覆っていた黒い触手が消滅したが、依然、惑星の周りの時空の歪は残ったままだった。
ジュガ達は、慎重に周囲の石英の針の壁を探査した後、壁に穴をあけ周囲のマグマを流入させ、空間に満たすと、惑星の地表に転移した。
地表は硫黄のガスで覆われていて、そのガスが大きな渦となり絡まり合い、密度の濃い所は、竜が暴れている様にも見えた。
「本当に、腐っている。」と駿が言うと
「あの触手が、暴れる度に地表の岩石を分解してしまい、気化し易い硫黄が大気中に放出された結果だな。」とケイが周囲の探査結果を報告した。
「もう一つコアが有ったみたいだけど逃げられたわ。」船にいるアイから報告があり、
「それが地球に行ったのか。何方にしても、この星域の歪が残っている以上またコアが送り込まれてくるから、星域ごと凍結するしかなかった訳か。」
「じゃーここを凍結したのは、僕らって事なの?」
「そうね、因果律からするとそう成るわね。」
「残念だが、この惑星の生命体は救えなかったな。」
「早く対処しないと、地球もこう成ってしまう。」
「ああ、でも、まだ時間はある。何故なら、この惑星が凍結された時間は、駿のいた地球時間よりも2百年程度前の話だからな。」
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