2 / 5
二章 萩野 浩介
しおりを挟む
ハルさんに出逢ってから一週間が経った頃、私の姿は二条堂にあった。
ちょこちょこと二条堂に顔を出していた私だが、ハルさんに呼ばれたのは初めて。メールには簡潔な文が記されていた。
『少し聞きたいことがあるんだが、暇があったら来てもらえないか』
文末に困り顔の犬のスタンプがあるのはちょっと意外。
可愛いスタンプ買ったんだなぁ。
そんなことを考えて少し笑いながら私は二条堂のカウンターに向かった。
カウンターに手をつき、もう片方の手で額を押さえて立つハルさんが見える。
「あ、心音…すまん、助けてくれ」
心底困っているらしいハルさんの腰にくっついているソレを見て、私は思わず吹き出した。
「お、おい笑うな」
ハルさんの腰にしがみついていたのは小さな男の子だった。
「ごめんね、ちょっと面白くて。隠し子?」
「な訳ねぇだろ」
真顔で突っ込まれた。隠し子はねぇか。ちょっとハルさんの真似をしつつ、納得。
「コイツ、ちょっと気になること言っててさ。
俺はあまり小さい子得意じゃないから、心音なら話をちゃんと聞いてやれるかと思って」
なるほど。やってみるね。
そう言うと、ハルさんは助かる、と笑って男の子を椅子に座らせた。
私は早速かがみ込み、その男の子に話しかけた。
俺はその少年ににこやかに話しかける心音を見て、ホッと息を吐いた。俺には上手く聞き出せなかったことも、心音なら優しく、ちゃんと聞けるだろう。
少し、申し訳ない。心音にも、少年にも。
「ハルさん、色々聞けたよ」
少し悲しげな心音の声に我に返り、心音の横にかがむ。
「んー、どうした?」
心音は優しい。だからこそ、悲しそうなのか。
「この子は萩野浩介くん、4歳。
この近くの幼稚園に通ってるらしいんだけど、そこでいじめられたみたい」
驚いた。
「幼稚園児間でいじめってあるのか?
なんか、みんな仲良しって印象だけど」
そもそも幼稚園児でいじめかよ。教育上良くなさすぎだろ。
「幼稚園児だから、じゃないかな。
ほら、遊びで虫を殺しちゃったり、喧嘩の時に力加減を間違えちゃったり、幼稚園児は加減とかわからない子が多いから、悪口もどこまでが言っていいことかよくわからないのかも。まあ、学生も…加減知らない人多いけど」
苦い顔の心音も、恐らく経験者なのだろう。
自分を諦めつつも、存在を認めて欲しい。その姿勢はいじめを受けて、存在を否定された人に多い。
「なるほどな。でもなんでここに?俺は相談所じゃないぞ?助けてやれるかどうか…第一、俺には助ける力は無…」
「少なくとも」
「少なくとも」
私は、遮られて驚くハルさんをぐっと力を入れて睨む。
ハルさんのお陰で少し楽になった、私を忘れてる気がして、ムッとした。
「私は、助けられたよ。私の叔父さんに、ハルさんに」
私は浩介くんに向き合い、笑いかけた。
「ねえ、どうして欲しい?
このお兄さんにどうして欲しくて、ここに来たの?」
浩介くんは唇を噛んで泣きそうな顔をしていたけど、そっと震える声で、気持ちを教えてくれた。
「…僕は、いなくならなきゃ、いけないですか…?」
私を押し除けるように、ハルさんが浩介くんの肩を掴んだ。
ハルさんの顔は見たことがないほど苦しそうだった。
「何、言ってやがる。浩介、お前は何言ってんだ。
お前には、お母さんいるだろ。知ってるぞ。お前、よくここに、お母さんと来てるだろ?
仲良さそうに、楽しそうに手を繋いで、お前はお母さんと来てるだろ…!
お母さんも楽しそうにお前と話してるだろ!
なのに……」
…ハルさんと私の母は、異母姉弟。つまり、ハルさんのお母さんと、私のお婆ちゃんは別の人だ。
ハルさんのお母さんは、ハルさんが中学生の時に亡くなったと昔、聞いたことがあった。
施設に入ったハルさんはずっと一人ぼっちだったと。
唯一のお知り合いも、高校生の時に亡くなってしまったと。
「お前の、お母さんが、お前にいなくなれと願うわけ、ないだろうが!」
ハルさんは泣きそうな顔の浩介くんに向き合い、言葉を叩きつける。子供だから、幼いから。そんなことで容赦はしない。ハルさんは、大事な命のために、声を荒げている。
「浩介!お前はお母さんを置いていくのか!」
浩介くんはハッとしたような顔でハルさんをまじまじと見た。そして声をあげて泣き始めた。
「お兄ちゃん…お姉ちゃん…!
僕、お母さんに大好きって言ってもらったの…でも僕、いらないって言われたの…!幼稚園のお友達にいらないって…」
ハルさんはくしゃくしゃと浩介くんの頭を撫でた。
「…怒鳴って悪かったな、浩介。
あのな、幼稚園のお友達がいらないって言うならな、自慢してやりゃいいんだよ」
「何を…?」
ハルさんはカウンターの奥、住居スペースに上がり、帽子を取って戻ってきた。
青色のツバ付きの帽子。『West Park』と書いてある。
ハルさんはそれを、浩介くんに被せた。
「お兄ちゃん…?これなぁに?」
「俺からのプレゼント。浩介は俺の友達ですよって証。
自慢してこいよ。僕には、大人のお兄さんの友達がいるんだぜって。大人とちゃんと話せるくらい頭いいんだぜって」
私も、浩介くんのお友達だよ。
声をかけると、浩介くんはパアッと笑ってくれた。
「うん!僕、お兄ちゃんとお姉ちゃんの友達!」
「ただし、約束。
幼稚園のお友達とも、仲良くなろうという気持ちを持つこと。決して自分だけが偉いと思わないこと。いいな?」
浩介くんは唇を結んで、力強く頷いた。
その時、カラカラと二条堂の硝子戸が開く音がした。
「浩介?」
「あ、お母さん!」
浩介くんは、お母さんに飛びついた。ハルさんはカウンターに手をついて立ち上がり、お母さんに頭を下げた。
「店長さん、ご迷惑をお掛けしてすみません」
「いえ、全然。またいらしてください」
ハルさんは浩介くんに軽く目配せし、萩野母子は店を出ていった。
入れ違いに黒い短髪の若い男性が入ってくる。ハルさんの顔が途端に渋くなった。
「よ、晴樹!」
「京一か…」
誰?
俺は京一を住居スペースの居間に叩き込み、心音を招いた。
「紹介する。
コイツは佐伯京一。近くの中学校で体育教師をしている。俺の大学時代の先輩で友人だ」
心音はなるほど、と頷いて京一に頭を下げた。
「ハルさん…えっと、晴樹さんの姪の桂木心音です。
近くに住んでいて、最近そのことを知って会いに来ました」
京一はパッと納得の笑顔を浮かべた。
「あー!ポーチの子?かっわいいね!フリー?」
俺はノンタイムで京一の腹にグーを突き込んだ。
「うげっ!
ちょ、晴樹…何すんの…結構、効いたぜ…」
「黙れ欲の塊。人の姪を口説くな吊るすぞ」
「ひえぇ…晴樹ちゃんいつからそんなに凶暴に…」
心音は俺たちのやりとりが面白かったのか、ケラケラと笑っている。楽しそうならまあいいか。
京一さんと言い合うハルさんは少し幼くて、すごく楽しそうだった。
「あ、心音ちゃんさ。晴樹のこと、ハルって呼んでんだよね?
俺はケイでいいよー。敬語もなし!俺も心音ちゃんって呼ぶからさ、おあいこってことで」
「あ、うん!わかった」
なんか今、ハルって強調した…?何かあるのかな。
帰りはケイさんが送ってくれることになった。
ハルさんはまたな、と笑って送り出してくれた。
「ねえ、心音ちゃん」
「?」
「晴樹のことさ、知りたいと思わないの?
君の知らない晴樹の過去、君の知らない晴樹の姿を」
ケイさんはその短髪を風に揺らしながら、まっすぐに私を見ていた。
私の、知らないハルさん。
そりゃあ…
「知りたい。でも、ハルさんが許可してくれてから、知りたいと思う」
ケイさんはおかしそうに笑った。
「そっか。
じゃあ、晴樹の許しがないけど、すぐに知りたいって時は俺に連絡して。俺の知ってることなら教える」
ちょっと意外。ケイさんは軽いけど、過去とかはちゃんと守る人な気がしていた。そう言うとケイさんは笑った。
「うん、俺も普段ならそうだよ。
でも、晴樹は君にハルって呼び名を許してるからさ。君なら、晴樹の横にいられると思って」
ハル、という呼び名はハルさんにとって特別なのかな。
「いつか、本人から聞きたい」
「ま、それが一番だよね」
そうこうしてる内に、私の家の前に着く。
「へえ、アパート?いいね」
ケイさんは鼻歌交じりに私に連絡先を教え、去っていった。
私は自室に入って、ベッドにごろりと転がった。
私の知らないハルさん…か。
店に戻ってきた京一を睨む。
「余計なこと言ってねぇよな?」
「言わないよ、信用しろって」
京一は苦笑し、俺に何かを投げてきた。キャッチすると、缶コーヒーだった。
「お前、ブラックだろ?
俺、ブラック飲めないんだよね、苦くて」
「ガキかよ…まあ、いいけどさ。ありがとな」
二人で並んで、缶コーヒーを啜る。
「ねえ、晴樹。まだお前は、ろく…」
「その名は出すな」
俺は京一を遮り、コーヒーを啜った。
その名は、出すな。まだ、整理できてないから。
まだ、前に進めてないから。
萩野 浩介
入店日:5/5
ちょこちょこと二条堂に顔を出していた私だが、ハルさんに呼ばれたのは初めて。メールには簡潔な文が記されていた。
『少し聞きたいことがあるんだが、暇があったら来てもらえないか』
文末に困り顔の犬のスタンプがあるのはちょっと意外。
可愛いスタンプ買ったんだなぁ。
そんなことを考えて少し笑いながら私は二条堂のカウンターに向かった。
カウンターに手をつき、もう片方の手で額を押さえて立つハルさんが見える。
「あ、心音…すまん、助けてくれ」
心底困っているらしいハルさんの腰にくっついているソレを見て、私は思わず吹き出した。
「お、おい笑うな」
ハルさんの腰にしがみついていたのは小さな男の子だった。
「ごめんね、ちょっと面白くて。隠し子?」
「な訳ねぇだろ」
真顔で突っ込まれた。隠し子はねぇか。ちょっとハルさんの真似をしつつ、納得。
「コイツ、ちょっと気になること言っててさ。
俺はあまり小さい子得意じゃないから、心音なら話をちゃんと聞いてやれるかと思って」
なるほど。やってみるね。
そう言うと、ハルさんは助かる、と笑って男の子を椅子に座らせた。
私は早速かがみ込み、その男の子に話しかけた。
俺はその少年ににこやかに話しかける心音を見て、ホッと息を吐いた。俺には上手く聞き出せなかったことも、心音なら優しく、ちゃんと聞けるだろう。
少し、申し訳ない。心音にも、少年にも。
「ハルさん、色々聞けたよ」
少し悲しげな心音の声に我に返り、心音の横にかがむ。
「んー、どうした?」
心音は優しい。だからこそ、悲しそうなのか。
「この子は萩野浩介くん、4歳。
この近くの幼稚園に通ってるらしいんだけど、そこでいじめられたみたい」
驚いた。
「幼稚園児間でいじめってあるのか?
なんか、みんな仲良しって印象だけど」
そもそも幼稚園児でいじめかよ。教育上良くなさすぎだろ。
「幼稚園児だから、じゃないかな。
ほら、遊びで虫を殺しちゃったり、喧嘩の時に力加減を間違えちゃったり、幼稚園児は加減とかわからない子が多いから、悪口もどこまでが言っていいことかよくわからないのかも。まあ、学生も…加減知らない人多いけど」
苦い顔の心音も、恐らく経験者なのだろう。
自分を諦めつつも、存在を認めて欲しい。その姿勢はいじめを受けて、存在を否定された人に多い。
「なるほどな。でもなんでここに?俺は相談所じゃないぞ?助けてやれるかどうか…第一、俺には助ける力は無…」
「少なくとも」
「少なくとも」
私は、遮られて驚くハルさんをぐっと力を入れて睨む。
ハルさんのお陰で少し楽になった、私を忘れてる気がして、ムッとした。
「私は、助けられたよ。私の叔父さんに、ハルさんに」
私は浩介くんに向き合い、笑いかけた。
「ねえ、どうして欲しい?
このお兄さんにどうして欲しくて、ここに来たの?」
浩介くんは唇を噛んで泣きそうな顔をしていたけど、そっと震える声で、気持ちを教えてくれた。
「…僕は、いなくならなきゃ、いけないですか…?」
私を押し除けるように、ハルさんが浩介くんの肩を掴んだ。
ハルさんの顔は見たことがないほど苦しそうだった。
「何、言ってやがる。浩介、お前は何言ってんだ。
お前には、お母さんいるだろ。知ってるぞ。お前、よくここに、お母さんと来てるだろ?
仲良さそうに、楽しそうに手を繋いで、お前はお母さんと来てるだろ…!
お母さんも楽しそうにお前と話してるだろ!
なのに……」
…ハルさんと私の母は、異母姉弟。つまり、ハルさんのお母さんと、私のお婆ちゃんは別の人だ。
ハルさんのお母さんは、ハルさんが中学生の時に亡くなったと昔、聞いたことがあった。
施設に入ったハルさんはずっと一人ぼっちだったと。
唯一のお知り合いも、高校生の時に亡くなってしまったと。
「お前の、お母さんが、お前にいなくなれと願うわけ、ないだろうが!」
ハルさんは泣きそうな顔の浩介くんに向き合い、言葉を叩きつける。子供だから、幼いから。そんなことで容赦はしない。ハルさんは、大事な命のために、声を荒げている。
「浩介!お前はお母さんを置いていくのか!」
浩介くんはハッとしたような顔でハルさんをまじまじと見た。そして声をあげて泣き始めた。
「お兄ちゃん…お姉ちゃん…!
僕、お母さんに大好きって言ってもらったの…でも僕、いらないって言われたの…!幼稚園のお友達にいらないって…」
ハルさんはくしゃくしゃと浩介くんの頭を撫でた。
「…怒鳴って悪かったな、浩介。
あのな、幼稚園のお友達がいらないって言うならな、自慢してやりゃいいんだよ」
「何を…?」
ハルさんはカウンターの奥、住居スペースに上がり、帽子を取って戻ってきた。
青色のツバ付きの帽子。『West Park』と書いてある。
ハルさんはそれを、浩介くんに被せた。
「お兄ちゃん…?これなぁに?」
「俺からのプレゼント。浩介は俺の友達ですよって証。
自慢してこいよ。僕には、大人のお兄さんの友達がいるんだぜって。大人とちゃんと話せるくらい頭いいんだぜって」
私も、浩介くんのお友達だよ。
声をかけると、浩介くんはパアッと笑ってくれた。
「うん!僕、お兄ちゃんとお姉ちゃんの友達!」
「ただし、約束。
幼稚園のお友達とも、仲良くなろうという気持ちを持つこと。決して自分だけが偉いと思わないこと。いいな?」
浩介くんは唇を結んで、力強く頷いた。
その時、カラカラと二条堂の硝子戸が開く音がした。
「浩介?」
「あ、お母さん!」
浩介くんは、お母さんに飛びついた。ハルさんはカウンターに手をついて立ち上がり、お母さんに頭を下げた。
「店長さん、ご迷惑をお掛けしてすみません」
「いえ、全然。またいらしてください」
ハルさんは浩介くんに軽く目配せし、萩野母子は店を出ていった。
入れ違いに黒い短髪の若い男性が入ってくる。ハルさんの顔が途端に渋くなった。
「よ、晴樹!」
「京一か…」
誰?
俺は京一を住居スペースの居間に叩き込み、心音を招いた。
「紹介する。
コイツは佐伯京一。近くの中学校で体育教師をしている。俺の大学時代の先輩で友人だ」
心音はなるほど、と頷いて京一に頭を下げた。
「ハルさん…えっと、晴樹さんの姪の桂木心音です。
近くに住んでいて、最近そのことを知って会いに来ました」
京一はパッと納得の笑顔を浮かべた。
「あー!ポーチの子?かっわいいね!フリー?」
俺はノンタイムで京一の腹にグーを突き込んだ。
「うげっ!
ちょ、晴樹…何すんの…結構、効いたぜ…」
「黙れ欲の塊。人の姪を口説くな吊るすぞ」
「ひえぇ…晴樹ちゃんいつからそんなに凶暴に…」
心音は俺たちのやりとりが面白かったのか、ケラケラと笑っている。楽しそうならまあいいか。
京一さんと言い合うハルさんは少し幼くて、すごく楽しそうだった。
「あ、心音ちゃんさ。晴樹のこと、ハルって呼んでんだよね?
俺はケイでいいよー。敬語もなし!俺も心音ちゃんって呼ぶからさ、おあいこってことで」
「あ、うん!わかった」
なんか今、ハルって強調した…?何かあるのかな。
帰りはケイさんが送ってくれることになった。
ハルさんはまたな、と笑って送り出してくれた。
「ねえ、心音ちゃん」
「?」
「晴樹のことさ、知りたいと思わないの?
君の知らない晴樹の過去、君の知らない晴樹の姿を」
ケイさんはその短髪を風に揺らしながら、まっすぐに私を見ていた。
私の、知らないハルさん。
そりゃあ…
「知りたい。でも、ハルさんが許可してくれてから、知りたいと思う」
ケイさんはおかしそうに笑った。
「そっか。
じゃあ、晴樹の許しがないけど、すぐに知りたいって時は俺に連絡して。俺の知ってることなら教える」
ちょっと意外。ケイさんは軽いけど、過去とかはちゃんと守る人な気がしていた。そう言うとケイさんは笑った。
「うん、俺も普段ならそうだよ。
でも、晴樹は君にハルって呼び名を許してるからさ。君なら、晴樹の横にいられると思って」
ハル、という呼び名はハルさんにとって特別なのかな。
「いつか、本人から聞きたい」
「ま、それが一番だよね」
そうこうしてる内に、私の家の前に着く。
「へえ、アパート?いいね」
ケイさんは鼻歌交じりに私に連絡先を教え、去っていった。
私は自室に入って、ベッドにごろりと転がった。
私の知らないハルさん…か。
店に戻ってきた京一を睨む。
「余計なこと言ってねぇよな?」
「言わないよ、信用しろって」
京一は苦笑し、俺に何かを投げてきた。キャッチすると、缶コーヒーだった。
「お前、ブラックだろ?
俺、ブラック飲めないんだよね、苦くて」
「ガキかよ…まあ、いいけどさ。ありがとな」
二人で並んで、缶コーヒーを啜る。
「ねえ、晴樹。まだお前は、ろく…」
「その名は出すな」
俺は京一を遮り、コーヒーを啜った。
その名は、出すな。まだ、整理できてないから。
まだ、前に進めてないから。
萩野 浩介
入店日:5/5
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
Black Day Black Days
かの翔吾
ライト文芸
日々積み重ねられる日常。他の誰かから見れば何でもない日常。
何でもない日常の中にも小さな山や谷はある。
濱崎凛から始まる、何でもない一日を少しずつ切り取っただけの、六つの連作短編。
五人の高校生と一人の教師の細やかな苦悩を、青春と言う言葉だけでは片付けたくない。
ミステリー好きの作者が何気なく綴り始めたこの物語の行方は、未だ作者にも見えていません。
oldies ~僕たちの時間[とき]
菊
ライト文芸
「オマエ、すっげえつまんなそーにピアノ弾くのな」
…それをヤツに言われた時から。
僕の中で、何かが変わっていったのかもしれない――。
竹内俊彦、中学生。
“ヤツら”と出逢い、本当の“音楽”というものを知る。
[当作品は、少し懐かしい時代(1980~90年代頃?)を背景とした青春モノとなっております。現代にはそぐわない表現などもあると思われますので、苦手な方はご注意ください。]
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
水曜日のパン屋さん
水瀬さら
ライト文芸
些細なことから不登校になってしまった中学三年生の芽衣。偶然立ち寄った店は水曜日だけ営業しているパン屋さんだった。一人でパンを焼くさくらという女性。その息子で高校生の音羽。それぞれの事情を抱えパンを買いにくるお客さんたち。あたたかな人たちと触れ合い、悩み、励まされ、芽衣は少しずつ前を向いていく。
第2回ほっこり・じんわり大賞 奨励賞
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
玄関フードの『たま』
ながい としゆき
キャラ文芸
吾輩は『たま』である。だけど、子猫の頃に去勢されたので、タマはもうない。
なんて、すごい文学作品の真似をしてみたけれど、僕には『たま』っていう名前があるし、同居人が変わってもこの名前は引き継がれているから、僕は一生『たま』なんだと思う。それに僕は吾輩というガラでもないし、哲学的な猫でもない。アレコレ難しく考えるよりも、目の前の出来事をあるがままに受け止める方が僕の性に合っているし、何より気楽で良い。(冒頭)
現在の同居人夫婦は、前に住んでいた家で外通いの生活をしていた僕のことを気遣ってくれて、寂しくないようにと玄関フードから外を眺められるように玄関のドアを開けっ放しにしてくれている。
そんな僕が地域のボス猫『海老蔵』とタッグを組んでニャン格を上げるために頑張るハートフルでスピリチュアルでちょっぴりファンタジーな不思議なお話。
お兄さんと私
谷地雪@悪役令嬢アンソロ発売中
恋愛
欲しかった本の発売日。久しぶりに本屋に行った。
でも本は置いてなかった。入荷してないらしい。今は紙の本は予約しないとダメみたいだ。
取り寄せを提案してくれた店員のお兄さん。なんだかやけに、気になるな。
蛙の神様
五十鈴りく
ライト文芸
藤倉翔(かける)は高校2年生。小さな頃、自分の住む棚田村の向かいにある疋田村の女の子朱希(あき)と仲よくなる。けれど、お互いの村は村ぐるみで仲が悪く、初恋はあっさりと引き裂かれる形で終わった。その初恋を引きずったまま、翔は毎日を過ごしていたけれど……。
「蛙の足が三本ってなんだと思う?」
「三本足の蛙は神様だ」
少し不思議な雨の季節のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる