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番外 新たな神殿編

禁断の散歩

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「フィリップ様!」

カテリーナが呼べば、数歩先を歩くフィリップがゆっくり振り返った。

「どうしたんだい?カテリーナ、早くおいで。」

そう言ったフィリップは既に、二人の寝室のガラス戸を開け放ち、庭園の中に佇んでいる。
カテリーナは部屋と庭園の境目に立ち止まり、そこから一歩も動けずにいた。

フィリップとカテリーナの間に繋がれたリードはピンっと張られて、これ以上一歩たりとも離れる事は出来ないだろう。

「フィリップ様…あの…やはりこの格好では…」

カテリーナは恥ずかしそうに身じろぎをした。
今、彼女は卑猥な下着と首輪以外のものは身に纏っていない。
身体を隠すローブの一つもフィリップは許さなかったのだ。

外からの風が身体に当たり、それだけでもカテリーナの羞恥は煽られている。

はぁっとフィリップが分かりやすく溜息をついた。
その仕方ないな…といった仕草にカテリーナは期待を込めて彼を見つめ返した。

「仕方ないね。じゃあ、僕は先に行っているから、カテリーナは後から一人でおいで。」

フィリップはカテリーナの期待とは大きく外れた発言をすると、手に握っていたリードの端をその場に捨て、カテリーナに背を向けて去って行く。

カテリーナは先程までピンっと張り詰めていたリードがパサリ地面に落ちるのを見て、言い知れない孤独感に襲われた。

フィリップ様が行ってしまう。

リード越しと言えど、フィリップと繋がっていると言う事は、極限の羞恥の中ではカテリーナの心の支えになっていたのだ。

「ま…お待ちくださいっ!置いていかないで。」

カテリーナは思わず駆け出し、フィリップの背中に抱き着いた。
芝生に触れた裸足が冷たく、フィリップに触れている部分だけがジンジンと熱い。

「いい子だね、リーナ。さぁ、お散歩を続けよう。」

フィリップはカテリーナの頭を優しく撫でると、首輪に繋がるリードを再度掴んだ。

「は…い。」

二人はしばらく無言で庭園の中を歩いた。

カテリーナはこんな格好でいるのを誰かに見られるのではないかと思うと、一歩進むごとに、身体がムズムズとして、漏れる吐息は自然と熱っぽいものになる。

もちろん、フィリップがカテリーナのこの様な姿を他人に見せるはずがないので、この庭園は二人の寝室以外からは入れない様に高い塀で囲まれているし、他の部屋から様子が伺えない様に、そしてカテリーナが肌を晒しても怪我をする事が無いように完璧に計算され尽くした開かれた密室なのだが、カテリーナはもちろんそんな事は知らない。

そもそも、緻密な計算を繰り返したのも、庭師たちに呆れられる程細かい指示を与えたのも、全てフィリップから指示を受けたアンディなのだが。

「カテリーナ、随分と感じているようだね。雌犬の様にお散歩してもらえるのが気に入ったのかい?」

一人で勝手に息の上がってしまっているカテリーナを咎める様にフィリップが笑いながら言った。

「違…」

「違うの?僕には、誰かに淫乱な雌犬の姿を見られる所を想像して興奮しているようにしか見えないけど?」

フィリップに直接言葉で責められれば、何とか歩みを進めていた足も動かなくなり、擦り合わせた太ももに愛液が伝っていく。

「あ…申し訳…ありません。」

「何を謝ってるの?あっ、あの聖騎士にその姿を見られる所を想像して興奮してたのかい?僕が目の前にいるのに、本当に悪い雌犬だね。」

フィリップがリードをグッと引き寄せれば、歩みを止めていったカテリーナは強制的にフィリップの前まで歩み寄る。

「違いますっ!そんな事、ありません。」

「じゃあ、何でこんなに濡らしているんだい?」

フィリップは更にカテリーナを引き寄せると、迷いなく彼女の秘所へ指を差し入れた。

クチュクチュと、見なくてもどの様な状態になっているのか分かる程の音が静かな庭園の中に聞こえた。

「あっ…あぁ…これは…あ…」

「どうしたの、カテリーナ?まさか、こんなに濡らして、感じていませんなんて嘘はつかないよね?」

「あっ…フィリップ様が…。フィリップ様に…散歩に…あ…連れ出して…頂いて、いぁ…淫乱な…カテリーナは、勝手に興奮してしまいました…。」

カテリーナの返答にフィリップは満足そうに口角を持ち上げた。

「へぇ、散歩しているだけでこんなに興奮するなんて、本当に犬のようだね。でも、僕は忠犬は好きだよ。素直なカテリーナにはご褒美をあげてもいいと思っているんだ。」

「あっ…カテリーナを…あぁ犯してください。」

「カテリーナ、ここが外だってわかってる?本当に信じられないくらい淫乱だね。いいよ、こっちへおいで。あっ、雌犬らしく四つん這いでついておいで。」

フィリップがカテリーナの秘所から指を抜き、爽やかな笑顔でそう告げると、カテリーナの下半身は刺激を求めてヒクヒクとそこを震わせた。

ゆるゆると言われた通りに四つん這いになるとフィリップが、カテリーナの頭を撫でる。
その手にする寄る様は、本当にペットか何かの様だ。

フィリップがリードを引き、それに四肢の全てを使いついて行く。
信じられないくらい惨めな行為であるのに、フィリップを見上げれば、優しい表情でこちらを見ている事がわかり、カテリーナはそれだけで幸せな気持ちになっていく。

「おいで、リーナ。よく頑張ったね。」

庭園の奥に備え付けられった東屋にたどり着くと、フィリップがペットを褒める様に、カテリーナを抱きしめ、ベンチと呼ぶには広さも柔らかさもベッドに近いそれにカテリーナを寝かせた。

「カテリーナが屋外での行為を気に入ってくれたら、アンディも頑張ってここを作った甲斐があると言うものだね。」

「?…アンディ?」

カテリーナは訳がわからず首を傾げるが、フィリップは気にしないでと言い、彼女の額に口付けた。

もちろん、アンディはこんなやり甲斐は求めて無いのだが、結果として主人は大満足しているようだ。

「あっ、でもご褒美をあげる前に…あの聖騎士を名前で呼ぶのは今後は禁止だよ。」

カテリーナの唇に口付ける寸前に、フィリップは思い出した様にそう言った。
どうやら、結構本気で気にしていたらしい。

「ですが…彼は平民出身で名字がありません…。」

カテリーナもここに来て、最初に伝えそびれたその事実を思い出した。

「え…?」

神殿に仕える聖騎士になるのは、その辺の傭兵になるのとは訳が違う。
その剣の実力はもちろんだが、人並み以上の教養も求められる。
だから、平民から聖騎士になるのは非常に珍しい事なのだ。

フィリップは軽く頭を振った。

「そうなら、そうと早く言ってよね。はぁ、ご褒美をあげるつもりだったけど…やっぱりお仕置きかな。」

「お仕置きは嫌です。…ご褒美がいいです。…優しく抱いてください。」

上目遣いでフィリップを見上げるカテリーナに、フィリップはお手上げだとばかりに口付けた。

まぁ、カテリーナにとってはご褒美もお仕置きも大差ないんだけど…そういう事に気付いてないところも可愛いんだよなぁ。

はぁ…やっぱり閉じ込めておきたい。

フィリップは自分の与える快楽に素直過ぎる程素直に乱れるカテリーナを見て苦笑を浮かべた。



「名字ですか?」

翌朝、フィリップに呼び出されたアンディは思わず聞き返した。

「そう。カテリーナの護衛をしているロイって聖騎士。平民出身らしいけど、騎士爵なんだから、名字があってもおかしくないだろ?僕からって事で、適当に名字を与えておいて。」

「いえ、もちろん可能ですが…なぜ突然…いえ、何でもありません。」

アンディはそれ以上、質問を重ねるのが怖くなった。
まさかとは思うが、カテリーナが他の男性を名前で呼ぶのが許せないから…等と言い出されてはどうしよう。

その内、カテリーナが自分のこともカーライル卿と名字で呼び出すかもしれないと思うと、主人の独占欲の強さはやはり病気の一種なのだろうと確信を深めるアンディだった。

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