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6章 聖女の恋愛編
4 伯爵令嬢は皇子の側近の話し合う
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「セリーナ様、コーエン様がお越しですが…?」
もう太陽がオレンジ色に染まり、昼間の厚さも和らいだそんな過ごしやすい夕方を何をするともなく過ごしていたセリーナに、ティナが声を掛けた。
こちらの様子を窺うように声を掛けてくるティナ様子に、セリーナはハッと立ち上がった
ティナにまで気を使わせてしまっているのか…。
確かに、一日のほとんどを一緒に過ごすティナであれば、セリーナがリードだけでなく、コーエンも意図的に避けている事はわからないはずがない。
「どうしましょうか…?」
セリーナが会いたく無いと言えば、それをコーエンを伝えるのはティナの役割だ。
その心配がありありと表情に出ているところを見れば、普段は忘れてしまいがちなティナの年齢を思い出させ、それはセリーナに少しの余裕を与えるものだった。
「中にお通しして。」
こんな時刻にわざわざ訪ねて来たと言う事は、用事があるのだろう。
それにこれ以上、逃げ隠れするようにコーエンを避けることに、セリーナも言い知れない疲労感を感じていたのだ。
「なんだか、セリーナ嬢とこうして面と向かって話すのは久しぶりな気がしますね。」
応接用のソファーに通されたコーエンはそういうと自虐的とも言える笑みを浮かべた。
ティナでも気付いているのだから、当然コーエン本人も避けていた事に気付いているに決まっている。
あの優秀なコーエンであれば尚更だ。
「申し訳ありません…。」
セリーナは気まずさから思わず視線を下げるが、コーエンがそれを慌てて止めた。
「いえいえ、セリーナ嬢のお気持ちを考えれば、当然の反応でしょう。…今日は、ちゃんとお返事を頂きに来たんです。」
「返事…ですか?」
セリーナが顔を上げると、コーエンが視線を合わせるように優しく微笑んだ。
「えぇ、私がディベル伯爵家に婚約の申し込みをしたい…と言った際、セリーナ嬢は少し考えたいと仰っていました。…そろそろ、答えが出たのではないですか?」
コーエンの言葉にセリーナはハッとした。
その表情と言葉が、答えを既に知っていると…それどころか、セリーナの気持ちまで…リードを思っていると言うことまでわかっていると雄弁に語っていた。
「私…その…申し訳ありません。コーエン様からのお話をお受けする事は出来ません…。本当に申し訳ありません。」
「やめて下さい。セリーナ嬢が謝る事ではありません。謝られては余計惨めになるものですよ。」
コーエンはセリーナの言葉を受け止める様に頷くと、殊更柔らかく微笑んで見せた。
その笑顔はセリーナを更に申し訳ない気持ちにさせたし、自分の弱さからコーエンを避けてきた日々を思えば、尚更だ。
「そんな顔をなさらないで下さい。こう見えて、喜んでいる部分もあるんですよ。家臣として…そして乳母兄弟としては、貴女が殿下を選んで下さった事を誇らしいとも思っているんです。ですから、ご自身の選択に自信を持って下さい。」
「自信と言っても…私には人より優れた点など、占いしかありません。リード殿下は…この国の皇太子で、私は一介の伯爵令嬢に過ぎません。」
セリーナは膝の上の手をぎゅっと強く握った。
「殿下がセリーナ嬢に向ける感情は、一介の伯爵令嬢などと決して思っては居ない事…既にセリーナ嬢もお気付きでしょう。まずは、その気持ちを確かめ合って下さい。他の問題など…全て些細なことなんですから。」
コーエンが諭すように言うので、セリーナは彼の顔をじっと見返した。
全て些細な問題なのだろうか…。
私の身分が伯爵令嬢である事も。
私に皇太子妃など務まらないという事も。
実家であるディベル伯爵家に後継が居なくなるという事も。
私はがリード殿下に好意を持っていて、リード殿下も…仮に私に同じような感情を抱いてくれているとしたら…。
それらは、本当に些細な問題なのだろうか?
コーエンはセリーナの考えを全てお見通しだと言わんばかりに、ニッコリと頷いた。
「僭越ながら、これからリード殿下のスケジュールを確保しています。執務室までエスコートさせていただけますか?」
セリーナは先程からの拭えない疑問たちを頭に残したまま、有無を言わせない笑顔で差し出されたコーエンの手を掴んだのだった。
もう太陽がオレンジ色に染まり、昼間の厚さも和らいだそんな過ごしやすい夕方を何をするともなく過ごしていたセリーナに、ティナが声を掛けた。
こちらの様子を窺うように声を掛けてくるティナ様子に、セリーナはハッと立ち上がった
ティナにまで気を使わせてしまっているのか…。
確かに、一日のほとんどを一緒に過ごすティナであれば、セリーナがリードだけでなく、コーエンも意図的に避けている事はわからないはずがない。
「どうしましょうか…?」
セリーナが会いたく無いと言えば、それをコーエンを伝えるのはティナの役割だ。
その心配がありありと表情に出ているところを見れば、普段は忘れてしまいがちなティナの年齢を思い出させ、それはセリーナに少しの余裕を与えるものだった。
「中にお通しして。」
こんな時刻にわざわざ訪ねて来たと言う事は、用事があるのだろう。
それにこれ以上、逃げ隠れするようにコーエンを避けることに、セリーナも言い知れない疲労感を感じていたのだ。
「なんだか、セリーナ嬢とこうして面と向かって話すのは久しぶりな気がしますね。」
応接用のソファーに通されたコーエンはそういうと自虐的とも言える笑みを浮かべた。
ティナでも気付いているのだから、当然コーエン本人も避けていた事に気付いているに決まっている。
あの優秀なコーエンであれば尚更だ。
「申し訳ありません…。」
セリーナは気まずさから思わず視線を下げるが、コーエンがそれを慌てて止めた。
「いえいえ、セリーナ嬢のお気持ちを考えれば、当然の反応でしょう。…今日は、ちゃんとお返事を頂きに来たんです。」
「返事…ですか?」
セリーナが顔を上げると、コーエンが視線を合わせるように優しく微笑んだ。
「えぇ、私がディベル伯爵家に婚約の申し込みをしたい…と言った際、セリーナ嬢は少し考えたいと仰っていました。…そろそろ、答えが出たのではないですか?」
コーエンの言葉にセリーナはハッとした。
その表情と言葉が、答えを既に知っていると…それどころか、セリーナの気持ちまで…リードを思っていると言うことまでわかっていると雄弁に語っていた。
「私…その…申し訳ありません。コーエン様からのお話をお受けする事は出来ません…。本当に申し訳ありません。」
「やめて下さい。セリーナ嬢が謝る事ではありません。謝られては余計惨めになるものですよ。」
コーエンはセリーナの言葉を受け止める様に頷くと、殊更柔らかく微笑んで見せた。
その笑顔はセリーナを更に申し訳ない気持ちにさせたし、自分の弱さからコーエンを避けてきた日々を思えば、尚更だ。
「そんな顔をなさらないで下さい。こう見えて、喜んでいる部分もあるんですよ。家臣として…そして乳母兄弟としては、貴女が殿下を選んで下さった事を誇らしいとも思っているんです。ですから、ご自身の選択に自信を持って下さい。」
「自信と言っても…私には人より優れた点など、占いしかありません。リード殿下は…この国の皇太子で、私は一介の伯爵令嬢に過ぎません。」
セリーナは膝の上の手をぎゅっと強く握った。
「殿下がセリーナ嬢に向ける感情は、一介の伯爵令嬢などと決して思っては居ない事…既にセリーナ嬢もお気付きでしょう。まずは、その気持ちを確かめ合って下さい。他の問題など…全て些細なことなんですから。」
コーエンが諭すように言うので、セリーナは彼の顔をじっと見返した。
全て些細な問題なのだろうか…。
私の身分が伯爵令嬢である事も。
私に皇太子妃など務まらないという事も。
実家であるディベル伯爵家に後継が居なくなるという事も。
私はがリード殿下に好意を持っていて、リード殿下も…仮に私に同じような感情を抱いてくれているとしたら…。
それらは、本当に些細な問題なのだろうか?
コーエンはセリーナの考えを全てお見通しだと言わんばかりに、ニッコリと頷いた。
「僭越ながら、これからリード殿下のスケジュールを確保しています。執務室までエスコートさせていただけますか?」
セリーナは先程からの拭えない疑問たちを頭に残したまま、有無を言わせない笑顔で差し出されたコーエンの手を掴んだのだった。
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