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本編
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いつからだろう。
自分と同じ顔をした妹が、私の物を共有たがるようになったのは。
「じゃあ、サラサが嫁いで来る時に、テレサも一緒に我が侯爵家に来ればいいじゃないか。」
「えっ、本当ですか?レオナード様!嬉しい!私、サラサと離れるのは寂しいって思ってたんです。」
手に掴んでいたティーカップを口元まで運ぶ力さえも湧かず、私はゆっくりとカップをテーブルに戻して、小さく息を吐いた。
欲しがりな妹は、私の婚約者までシェアをする気のようだ。
その信じ難い事実に軽く目を瞑ってから、現実逃避するかのように周囲に視線を巡らせた。
ここは大陸の西に位置するブランドッツ王国の王宮の庭園。
普段なら気軽に入れるような場所ではないのだが、薔薇の見頃に合わせて一部を貴族達の為に開放されている。
時期を限定して開放している為、周りは私達同様ティーテーブルを囲んでお茶会を楽しむ貴族達で賑やかだ。
王家が見頃と認めるだけはあり、薔薇の花々は本当に見事で、こんな状況で無ければ存分に楽しめるのに…と視線を自分のテーブルに戻すと、テーブル越しに一組のカップルが視界に入ってくる。
いや、この2人はカップルなどではない。
男性はレオナード ビルグリン様。
ビルグリン侯爵家の嫡男で、私の婚約者殿だ。
女性の方はテレサ クリーヴス。
伯爵家の次女で、私とほぼ同時にこの世に産まれた双子の妹だ。
一卵性の双子でも、これ程そっくりに産まれるとは…と幼い頃から周囲に驚かれる程、私と瓜二つだ。
そして、目の前の光景に何度目になるかわからない溜息を漏らした私は、サラサ クリーヴス。
王家に古くから使えるクリーヴス伯爵家の長女。
幼い頃は妹のテレサといつでもお揃いのドレスで着飾られ、柄にもなく『双子の天使』などと呼ばれていた。
顔やスタイルはもちろんの事、食べ物の好みや趣味、持ち物まで一緒。
非常にシンクロ率の高い2人は社交界でも有名な仲良し姉妹だ。
それって、本当に私達の話なのかしら…。
社交界の噂など、当てにしている訳ではないけれど、私とテレサの話を耳にする度に苦笑いを隠せない。
まぁ、そんな苦笑いさえ謙遜だと捉えられているようだけど。
本当の私達は、周囲が思っているほど仲良しではない。
自分と同じ顔をした妹が、私の物を共有たがるようになったのは。
「じゃあ、サラサが嫁いで来る時に、テレサも一緒に我が侯爵家に来ればいいじゃないか。」
「えっ、本当ですか?レオナード様!嬉しい!私、サラサと離れるのは寂しいって思ってたんです。」
手に掴んでいたティーカップを口元まで運ぶ力さえも湧かず、私はゆっくりとカップをテーブルに戻して、小さく息を吐いた。
欲しがりな妹は、私の婚約者までシェアをする気のようだ。
その信じ難い事実に軽く目を瞑ってから、現実逃避するかのように周囲に視線を巡らせた。
ここは大陸の西に位置するブランドッツ王国の王宮の庭園。
普段なら気軽に入れるような場所ではないのだが、薔薇の見頃に合わせて一部を貴族達の為に開放されている。
時期を限定して開放している為、周りは私達同様ティーテーブルを囲んでお茶会を楽しむ貴族達で賑やかだ。
王家が見頃と認めるだけはあり、薔薇の花々は本当に見事で、こんな状況で無ければ存分に楽しめるのに…と視線を自分のテーブルに戻すと、テーブル越しに一組のカップルが視界に入ってくる。
いや、この2人はカップルなどではない。
男性はレオナード ビルグリン様。
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女性の方はテレサ クリーヴス。
伯爵家の次女で、私とほぼ同時にこの世に産まれた双子の妹だ。
一卵性の双子でも、これ程そっくりに産まれるとは…と幼い頃から周囲に驚かれる程、私と瓜二つだ。
そして、目の前の光景に何度目になるかわからない溜息を漏らした私は、サラサ クリーヴス。
王家に古くから使えるクリーヴス伯爵家の長女。
幼い頃は妹のテレサといつでもお揃いのドレスで着飾られ、柄にもなく『双子の天使』などと呼ばれていた。
顔やスタイルはもちろんの事、食べ物の好みや趣味、持ち物まで一緒。
非常にシンクロ率の高い2人は社交界でも有名な仲良し姉妹だ。
それって、本当に私達の話なのかしら…。
社交界の噂など、当てにしている訳ではないけれど、私とテレサの話を耳にする度に苦笑いを隠せない。
まぁ、そんな苦笑いさえ謙遜だと捉えられているようだけど。
本当の私達は、周囲が思っているほど仲良しではない。
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