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下町デート

繁華街の空き家

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アルバート様がお忍びで繁華街に出ているとアイト様に聞いた私は本日急いで、お召し物を済ませて、下町までやってきた。
なぜアルバート様が下町いるのか謎であるけど、一目みて、あわよくば、彼とデートなんて…考えちゃったりして。
ウキウキで、下町に出ると、黒色の髪をした彼をすぐに見つけた。魔法で変えているのかしら?よく似合っているわ!可愛い。
彼は自転車を操縦していた。うまく運転ができないのか何度も足を地面につけていた。
それでも一生懸命に漕いでいる姿に胸を打たれる。
前世の記憶が蘇る。私は学生である。電車通学でないといけないところに通っていたので、自転車で通学というものに憧れがあった。
ここは春になるとロードレースがイベントであると聞いたことがある。出場しているアルバート様を応援したいわ…。

妄想に暮れている私を現実に戻したのは、アナスタシアだ。
また、あの子…。

黒いもやっとしたものが頭の中に出てくる。

ダメここで念を出すと彼にも当たるわ。
わかっているけど…むかつく。私の彼に…。
彼と勝負をする悪役を睨みつけるところまでしかできない。
近くに寄って、彼をとろう。これしか策がないわ。
黄色のワンピースを着ている私は彼をイメージして着てきた。
ひまわりの様な笑顔を私の隣でしてほしい。
そんな願いを込めて。

自転車競技が終わったのか二人が出てきた。
ひどく落ち込んでいるアナスタシアと、そんなアナスタシアを励ましているアルバート様。

話の会話が途切れ途切れで聞こえていた。
…贈り物??
どうしてアルバート様がアナスタシアに?

宝石店に入っていく二人。
出てくるときにはお揃いのイヤリングをはめ合いっこしていた。
側から見れば初々しいカップルだ。
……ボンっ  と音を立てて、私の魔力が暴走しているのがわかる。黒いモヤが私の体を覆っている。そんな状態で彼に話しかけてしまってはダメなのがわかっているが、近づきたい。フタリヲハナシタイ

「ミラ??何してるの?」

私の手を引いて正気に戻してくれた人がいた。

「アイト様?」

涙目になっているアイト様を見て戻ってこれた私。
どうしてアイト様が泣きそうなの?

「また、アルバート様のところに行くつもりかい?」

「またって、どういう意味?」

「彼のところに行きたいの?」

「アイト様?」

「僕がいるよ?」

アイト様の目から涙がこぼれ落ちた。
私が泣かせている様な状況。
周りの通行人は、特に気になっている様子はないが、日本人の私からすると、かなり目立っていると思ってしまい。彼の手を引いて、繁華街の外れに来た。
確か空き家であるこの元パン屋。に入り込んだ。
彼の目からボロボロとたくさんの涙が溢れている。

「アイト様?泣き止んでください」

「ミラがいけない。」

「私がですか??」

私以上に黒いモヤが彼の周りを覆っている。
何か彼の気に触ることを私がしてしまったのだ。
でも心当たりが。

いや、あるわ。
アイト様は、私に対して好意を抱いている。
そんな彼に何度もアルバート様とくっつこうと駄作している私を見せていた。
この下町で会うことは予想外ではなかったはずだ。
彼は庶民から魔法学校に入学している。
今日は音楽祭があったため彼は家から出たのだろう。
それだけでも辻褄があってしまう。
そんな彼の目の前で初々しい二人の間に乗り込もうとする私が見えたのだ。

私もその気持ちが分かるのに…彼にとてもひどいことをしてしまった…。

悲壮感に包まれながら、彼に近寄ろうとしたが、

「近寄るな!!」

ブワッと音を立てて、黒いオーラが出現した。私は黒いモヤに包まれ、意識がなくなろうとする。
私の魔法は念である。

➖アイト様落ち着いて。お願い。
➖私が悪かったわ。許して…
制御不能となった彼には私の念など届いていなかった。
だけど諦めたくない。だって私は主人公よ。好きな人を守りたい。アルバート様。

彼の魔法が街全体を包み始めた。
大きな魔法だ。
暴走しているのがわかる。でも私の力ではどうにもできないことは私がわかる。
カタリーナなら聖魔法でどうにかなるはずなのだけれど。街に彼女の姿はなかった…。
どうすれば。
黒く広がった雲からヤイバのような物が形成され始めている。
町の中央部も、ざわざわし始めていた。

なんとかしなければいけないのに…
矛先はきっとアルバート様とアナスタシア。一本の太い刃が出来上がった。
彼に念を送りつづけるが、私の魔力がもたない。
彼の目も焦点が合っておらずぶつぶつと呪文を唱えている。

乙女ゲームのサナバートルートに出てくるバッドエンドに似ている。
私は主人公であるがサナバート様の好意は少しも上がっていないはずなのにどうしてこんなことが起きるのよ。
それにデートもしていない。
バグが所々で修正をかけようとしているのかしら…

私の意識がなくなる寸前、ドゴンと中央部から音が鳴った…
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