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やきもち

アイト編

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僕はミラ嬢と、知り合って一年近く経っている。
彼女は可愛いく、活発でとても伯爵家の御令嬢には見えない。たまに天然なのがこれから社交界で生きていくのに不憫なところである。
だが僕からしたらそれが可愛く見えてしまう。
庶民出身の僕にも優しくしてくれた。
それだけでも嬉しかった。
そんな彼女が、この国の王にうつつを抜かしていた。
この間のパーティーから彼女の様子がおかしいのだ。

アルバート様の横に立つ彼女はすごく目立ち綺麗であるが悔しい。
僕のことをこんなに好きにならせているのに。
今も彼女はアルバート様と話す機会をずっと伺っている。
廊下に立ち、耳を澄ませ、女子たちの歓声が聞こえると近づいていく。
歓声が聞こえて、一年塔まで歩き始めた。僕は心配で、彼女を追いかける。それに気づいていると思うけど何も言わない彼女。

寂しい…僕だけが彼女のことを好きなのだ。
アルバート様とは親しくしていないためどんな方なのかはわからない。でもとても良い雰囲気を放っているわけではない。
この国の花とも言われは始めている公爵のご令嬢であるアナスタシア様のことになると何も見えなくなるアルバート様という情報しか入ってこない。
アナスタシア様にご執心の様なのに、どうしてミラ様は、彼と親しくなろうとしているのだろう。僕じゃダメなの?

「いらっしゃったわ。アナスタシアも一緒か…近づけないわね」

木陰から、2人の様子をまじまじと見ている。
アナスタシア様とアルバート様は仲睦まじく寄り添い、散歩をしていた。
隠れファンクラブにアルバート様とアナスタシア様を愛でる会なんていうものができているらしい。
それだけ彼らを推している人たちがいるということだ。

「ミラ様帰りませんか?」

僕はミラ様に話しかけるが聞こえていない様子だ。
彼らに夢中な彼女に嫉妬を起こしている自分が情けない。好きな女の人の幸せを願えないなんて男に生まれた資格がない。

もう一度話しかけると振り返ってくれたが唇の前まで人差し指を持っていき静かにしてと言われる。

やっぱり僕じゃダメなのか…

金髪に輝く髪が揺れている彼女の後ろ髪を最後に僕はある計画が浮かんできた。きっと失敗するのはわかっているけど、でも振り向いてもらうためには必要だ。

アルバート様、アナスタシア様すみません。
庶民の分際で手を出すことをお許しください。
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