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ウル

隣国へ

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隣国へ急遽決まった編入。
俺はずっと勉強と剣技を頑張っていたが、政治には無頓着である。
第三王子なので、政治には加担しないのだが、兄たちの強い要望に応えるためはるばるやってきた。
兄たちとの関係はよく2人の妹たちとも関係はいい。
苦労させないためにも私たち3人がしっかりしなければいけない。

「でもだるいな」

「そんなことおっしゃらず頑張りましょうお兄様」

「あー、そうだな、シュリナ」

妹のシュリナと、一緒に馬車に揺られること三日間やっと着いた隣国は、素晴らしかった。
財力はもちろんだが活気付いていて、物が溢れている。
水も豊富であり緑豊か。
生活水準が俺たちの国よりはるか上なのがわかる。
こんな国を作りたい。

妹も同じことを思っているのか目がキラキラしている。
妹はもともと編入予定はなかったんだが、父が急に決めた。
シュリナは前向きに二つ返事でOK。

寮という物があるらしくそこに俺たちは世話になる予定。
父が新しく家を建てると言っていたが、シュリナが断っていた。
初めての娘には甘く、一応今は寮で止まっている。

「お兄さま見えてきましたわよ」

笑顔が可愛いと側から見たら思うんだろうが。不吉な笑みが漂っていた。
兄ながらその顔はないだろうと。

学園は入学式を終え数ヶ月経過して景色は緑色になっている。この国の王子たちは一個下でシュリナと一緒。
俺は一つ上。妹が問題を起こさなければいいが…。

学園につくとまず職員が集まる職員室に挨拶に行きそのあと王子たちがいるお城に向かう。お世話をしてくれるのはここの国のメイド達だ。1人ずつ使用人は連れてきているが、妹はわがままなたちな物で1人で足りるわけはない。
挨拶は一通りすみ、お城までまた馬車に揺られる。
謁見の間に通された俺たちは作法通りに王の椅子の前でしゃがんで待っている。
数分経つと王と王子たちがやってきた。

「やあやあいらっしゃい。楽にしたまえ。」

王の挨拶と同時に俺たち2人が挨拶をし楽な姿勢で待機すると、長くありがたいお話が繰り広げられた。この国の歴史や俺が習う政治のことについて。
妹は飽きたのかさっきから隣でフラフラしている。後ろで待機している専属使用人が、魔法の風で起こしているがそろそろ限界だろう。

「長い話はここまでで、あとは、息子たちに任せよう。あとは頼んだよ」

声をかけられた2人の王子は出ていく王に了承の意を敬礼で表していた。
王が出て行ったあと、すぐに俺たち2人は2人の王に客間まで案内された。
真面目な雰囲気の兄にどこか飄飄としている弟。目を疑いたくなる美形の双子は似ているはずなのに離れている印象が強い。仲悪いのか??

「今日は客間で一日過ごしてくれたまえ。明日は僕たちと一緒に学園に登校する予定だけどいいかい?」

「しっかりおもてなしするつもりでいるよ。くつろいでよ。」

喋り方は似ている。育った環境が同じであるが乳母は違うはずだ。こうも似るのは双子だからなんだと思う。

妹の方を見ると妹はずっと、アルバートの方を見ていた。

めちゃくちゃ嫌な予感がする。
変なこと言い出す前に出て行ってもらおうと前に一歩踏み出す前に妹が先手を切った。

アルバートの手を掴み

「私の夫になることを命じるわ!」

やっぱり…
この妹はよく言えばムードメーカー悪く言えばトラブルメーカーなのだ。
ほしいものは父がたくさん買い与え、好きなものは意地でも取りに行く性分である。
アルバートすまぬ…

驚いたのかアルバートは目をパチパチとしていた。積極的な妹がそんなアルバートを見逃すはずがなくすかさず唇をくっつけようとすると、突然扉付近でバタンと音が鳴りひびいた。何事か妹も気になったのか音がした方までみんなで行くがそこには何もなかった。
何か物でも落ちたのか、でも何も落ちていないし、誰か盗み聞きしていたとしても一直線の廊下が数十メートル先まで続いているこの数秒で逃げれるような物ではないだろう。

まさに音は、妹の口づけを邪魔したかのようなタイミングであった。

アルバートも正気に戻り、シュリナがずっと掴んでいる(移動中もつかんでいた)手を外した。妹はぶーと口いっぱいに空気を入れて、拒否する反応を行なっている。

「シュリナ様、私は心に決めた方がいます。その方を裏切るつもりはありません。お断りさせてください。」

丁寧におまけに友好を築いている第四姫を断った。メリットの方が大きいと思うが、それより気持ちを優先したようだな。
賢くない選択肢だが、父も通していないような口約束も無効そのものに近い。
残念だな妹よ。

妹はこうストレートに言われても諦めるたちではなくむしろ燃えるタイプなのだ。
虐げられるのを好んでいる変態なのだと思う。顔は良いのだがなあ。

「そんなの関係ありませんわ!私は一眼で恋に落ちたのです!心に決めた方を超えてみますわ!」

「シュリナ様。私はその方にプロポーズもしています。あとは返事を貰うだけなのです。諦めてください。」

さっきまで笑顔で対応していたアルバートの顔がスッといけない物が憑依したようなおぞましい顔をしている。
俺は怖くなり一歩下がってしまわないようにグッと力を込めて耐えていた。
冷たい空気が流れ始める。

「でもまだ始まったばかりスタートラインですわ!」

「残念なことにスタートラインでさえ踏めていませんよ。」

結構な食い気味で妹を拒否し出したアルバート。
推しが強い妹も負けてはいないが、こればかりは友好にもヒビが入る。
友好に亀裂が入れば損して害が多いのも俺たちの国だ。たくさん支援してもらっている分ここは妹に引いてもらおう。

豪華なドレスの首根っこを掴み俺の方に引き寄せる。講義しようとする妹に魔法をかけ黙らせる。
俺が使う魔力は糸という物。糸を太くしたかったらたくさんの魔力さえ込めれば布になる。
妹はジタバタしていた。
ここまで抗議するのも珍しい。品も教養も礼儀もしっかりしている我が家。
妹も公の場で失敗などしていない。おてんばではあるが。

そこまで抗議し暴れるほどアルバート魅力を感じているのだろうが、今は恥であり迷惑である。

「申し訳ありません。妹がかなりな無礼を。」

しっかり謝罪をし頭を下げる。
王子が頭を下げたため後ろでアワアワしていた使用人たちも一斉に頭を下げた。
ブーブー言っているのは妹だけ。

アルバートが答えるのではなくサナバートが答えた。

「いえ、姫君にそう言ってもらえるだけ幸せであります。ただ、僕もそうですが、決めた相手を諦める心はついていません。きっと姫君も、アルに対してそう思っていると思われますので、ご気分不快にされなければ良いですが。アルの気持ちもわかってください。」

「そうだぞ妹。お前は兄のおまけだ。でしゃばるな迷惑かけるなそしてもうアプローチするな」

兄の言葉に便乗したアルバートは冷たくいてつくような返事をする。

教えてあげたい。そう言って諦める妹ではないことを…。

妹は一瞬ではあるが傷つきはしたのだろうがすぐに元気になる。
ワーワー言っていた届かない布の下で。
口周りはほぼ真空に近い状態で覆っているため声は届かないが俺には揺れでなんとなくわかる

『すてきですわ!そんなに一途に思われている方がいらっしゃるならその愛を私に向けさせるようにするまでですもの!負けませんわその女に』

女って怖いよなあ。
アルバートの想い人が分かったならばすぐに守りに入ろうと心に決めた。
波乱万丈な一年間が始まるなあ。
きっと父は厄介払いしたくてあわよくば、婚約者でも連れてきて欲しかった寸法だろうが。妹は大物を狙ってるよおまけに相手の返事待ち付きの。

父、兄はもうすでに無理です。


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