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学園生活
主人公
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今日は入学式である。
私アナスタシアは、数日前の舞踏会と、婚約について、頭を抱えていた。
王族であるアルバート様からの婚約の申し込み。お父様にそのことを相談したが、お父様は賛成、お母様に関しては今すぐに書類を送りましょうと意気込んでいる。
弟に妹に早くアルバート様に会いたいとせがまれているような状態だ。
「お嬢様。早くドレスに着替えないと。」
シャネットの心配そうな声が頭の上からずしんとのしかかった。
フリフリのカーテン付きの広いベッド上には丸まって寝ている私。
前世ではこんな広い家に広いベッドでは眠れなかったのですごくいい生活を送っているのだが、そのいい生活がもたらしている苦悩がずしりとのしかかっているのだ。
シャネットといま変われるものならかわりたい。と愚痴るとシャネットははあとため息を漏らす。
「お嬢様のお世話できるのは私だからこそです。ご婚約されアルバート様のところに嫁がれることになってもシャネットはついていきます」
と、胸を張っていう。嬉しいのだが。婚約前提だ。
アルバートよ、恨むぜ。
そんなことを考えている時間も過ぎていきいい加減着替えないと入学式に間に合わない時間まで迫ってしまう。
お父様とお母様そして兄弟はすでに身支度と食事はすんでおり、私を待っている。
トロトロといつもの礼儀作法は無視し、食べている私を妹が横からあれこれ口出すが耳には届かず、食べ終わったのもギリギリ。
これから始まる学園生活に息を漏らすばかりであった。
舞踏会の日目を覚めると笑顔のアルバート様の顔が覗き込んでいた。もちろん数分も前のことを覚えている私顔面真っ赤。
そんな私を見てアルバート様は優しく髪を撫でた。
「返事はいつでもいい。」
ニコッと首を傾げながら私に微笑みかける。
また意識を失いかけたが持ち直して、いつでもいいという言葉にコクリとうなずく。
そのままエスコートをされ続け舞踏会は終わった。
それから初めてアルバート様に会う。
きまづいやら、どきどきするやで、顔は赤くなったり青くなったりと忙しい。そんな私を見た妹のサラが、
「お姉さまずるいです!私があと10年取っていればチャンスがあったのに。」
私に似てとても可愛い妹は私のおもちゃになっていた。髪をゆい、ドレスアップさせ、礼儀作法を教えいつでも嫁入りできるようにとしていた。
「アルバートさまのこと?」
驚いたように妹がこくこくと頷く。
その動作もまた可愛い。
「お姉さまは、確かにこの国の宝ですが、私もお姉さまに鍛えられたこの作法やメイク術などはお姉さまに並ぶと思います!なのに10歳若いだけで見落とされるなんて!」
「変わるわよ?」
私の精気がどこかに飛んでしまったように伝えると、サラは、ブンブンと首を振る
2つ結いをしているかみがベチベチと顔に当たる。痛そう…
「悔しいですがお姉さまでないとあの顔面には耐えられません。応援はしていますが悔しいだけです」
…お姉ちゃんも耐えられないんだよ。
あと生死が関わってるからね?
薄ピンクのくるくるした髪をこれまたくるくるとして遊ぶ妹を横目に起きて数時間の間で50回は超えているため息をまた1つ落とした。
学園はとても大きく、そしてここに入学できる喜びをかみしめる人たちが数多くいる中私は1人とほとほとしている。隣の妹とお母様は生き生きと弟たちは行儀良く父と歩いている。
気が進まないため歩みが遅くなり家族から置いてけぼりをくらってしまっていることに気づかず、下を見て歩いていると、誰かに思いっきりぶつかってしまった。体格差的に私が押し倒すような形で馬乗りしてしまった。そこには輝くばかりの金髪に、くるくるした髪の毛そしてお目目ぱっちり、目がぱちりとするたびに動く長い睫毛。薄い唇にふんわりと縁を描く眉毛、筋が通った鼻。
まるで前世の1000年に一度のアイドルを見ているかのような胸の高鳴り。
これは女の私でも惚れる。レベルの可愛さ。そんな可愛い子の上に鎮座していると考える私はいけないことをしている気分になりすぐにどけ、手を差し伸べると、細くほんのり焼けた手が私の病弱のように白い手を掴む。
そしてほとんど力入れずとも自分の力で立ち上がった女の人を見つめると、それは予想にしなかった主人公であった。なんでここにいるの。
主人公は入学式の前にここで桜スチルと共にとある男の人(サナ様)とぶつかる予定だったはずなのになんで?
とおもったのだがなぜ私もここにいるのか謎で仕方ない。家族はどこに行ったのだろうか。
そんなことよりもこんなに可愛いことぶつかった罪を謝罪しなければならない。
礼儀を完全に無視し勢いよく180度頭を勢いよく下げて
「本当にごめんなさい。ドレスは汚れていないかしら?怪我はしていない?本当にごめんなさい。」
勢いよく頭を下げたもので主人公はびっくりしたのか息を呑む音がした。
下げている頭を通り越して健康的な手が私の頬にかかりそのまま上を向かせた。
バッチリと目が合い私は彼女の美しさにほんのり顔が赤くなってしまう。ひさびさ死んでよかったと思ってしまうほどのものである。
「アナスタシア様そんなに頭を下げないでください。私はここで一番の庶民ですよ。周りに変な目で見られてしまいます。」
まさか自分のことよりも相手の立場を考える心の優しい子だったなんて。
プレイしていた子がこんなに自由に言葉を発するなんて感無量。やっぱり主人公はいい子だ。
桜がひらひらと私たちの前に降っているこのスチルはイベントが終わったっていうことなんだろう。やらかした。邪魔しちゃったよ。
バタバタと足音がすると思ったら後ろから肩を叩かれた。
そこにいたのは王族兄弟
「アナスタシア様?どこも怪我してない?あと君もえーっと」
「ミナチュレ・ハイル・カタリーナです。お二人のことは知っていますお声掛けありがとうございます。」
主人公の名前は公開されていないため私も初めてこの子の名前を知った。
庶民である彼女の名前は長かったがたいして苦労せず覚えれた。
前世にカタラーナというスウィーツがあるのだがそれと一文字しか変わらないため覚えやすい。
「カタリーナ、怪我はないか?」
サナバート様が微笑みかけるとカタリーナは顔を真っ赤にし一礼する。返事はせずそのままサナバートにエスコートをされ広場のほうに向かった。
そのままアルバート様と2人っきりになってしまいきまずい雰囲気のまま沈黙が流れたのだが。気まずいと思っているのは私だけであった。アルバート様は私に話しかけてくれる。
「そのアナスタシア様は元気がないようだがどうかした?」
その答えはあなたの婚約の申し込みが頭から離れないことです。
顔を覗き込んでくる美形が笑えばさらにイケメンになる。
にこりと笑い、私の手を取る。
「断らないってことはまだ私にもチャンスがあるってことで合ってる?」
「チャンスって…アルバート様はどうして私なんかに婚約の申し込みをされたのでしょうか?」
きょとんとした顔つきになったアルバート様は優しく私に説いた
「アルでいいよ。アルバートって長いし。そうだなーなんでだろう。ずっとあなたのことが好きだったからかな?」
突然の笑顔と突然の告白にハクハクと私は唇を動かす。
すすすす、すきってどういうことおおお
それにそんな愛称呼び私たちは婚約していますって周りにアピールしているようなものじゃ…
「あ、アルバート様愛称呼びはまだ早いかと、あとあの、す、好きっていったい…」
いつからすきなの?私たちまだ出会って数日目ですが!
いたずらが成功したような幼い笑顔を浮かべたアルバート様は、桜が舞う背景にとってもあっており心のシャッターでこのスチルを保存した。
「残念私はアナスタシア様を愛称で呼びたかったがまだ早いみたいだね」
作中との性格が全然違う。こんなに先を急ぐような人ではなかったのに。
「で、ですが、私に愛称呼びなどできません。し、ありません!」
頓珍漢なことを言っているにはわかるのだがすごく動揺もしているのだ。
アルバート様がまた名案を思いついたような顔をされており何を言われるかハラハラする。
「なら私がつけよう。アーニャかアーシャどちらが良い?」
私は心臓をとられるのだろうか。
「私的にはアーニャの方が可愛いのだが猫のようなアナスタシア様にぴったりだが、アーシャの方が名前的に沿っている感じがある。」
どっちがいいか私に決めさせようとしている。恥ずかしすぎる。前世の名前なんて古風でこんなあだ名なんてものはほぼなかったに等しい。幼なじみに茶化されていたぐらいだ。こんな恋愛のようなイベントが待ち受けているなんて。
いや実際に乙女ゲームに入り込んでいるんだが。私は悪役令嬢であり恋愛を邪魔する立場なのに前攻略末の最終ラスボスにアプローチされるなんて誰得。
「あ、アナスタシアは選択肢にはないのでしょうか?」
「うーん。ま、将来的にどっちか決めてもらうから今はアナスタシアでいいよ。さ、式典までエスコートさせてよ。兄たちは先に行ってしまったし。あっ。」
腰に手を添え歩みを進めようとしたアルバート様は急に私の顔を覗き込んできた。
そんな顔をひしひしと覗く。本当にイケメン、かっこいい。ぜひカメラをくれ。
「自分の欲ばかり優先していたけど、怪我してない?ドレスは見た感じ綺麗だけど足とか手とか大丈夫?」
まさか優しく気にかけてくださるなんて、幼なじみに教えてあげたい。できる男は違うんだな。と少し感動していたが、返事をしなくてはいけない。つこけててか馬乗りになって結構な時間が経っているが、痛むところはどこにもない。よって怪我はしていない。心臓は今すぐにでも壊れそうであるけど。
どくどくなる胸を押さえどこにも怪我はないことを伝えるとまた腰に手を添えてエスコートされる。
会場に着くとすでにほとんどの生徒が集合しており、定位置につかれていた。私も自分が立つ位置にいき王族のアルバート様はまた別のところに行かれる。
温もりがなくなったことが少し寂しく思ったが、数分後に式が始まりそんなことは忘れ現生徒会と王族の直系であるサナバート様の挨拶と学園代表の先生(校長)の話が終わり式は早々にお開きとなった。
サナバート様のご挨拶は周りの女性がとろけるんではないかと思うほど色っぽくなぜか何度も目があってしまうことにまたドキドキとしてしまい目を何度も逸らした。
式典終了後お父様と落合い立食を一緒に楽しんだのも1時間程度、あとは学生の交流の場が設けられ保護者は帰ることになる
「お母様は?」
「あいつは今サラの婿候補を探しに行ったよ。ミヤとカエも婚約者は決まっているからね。あとはアナスタシアとサラだけだ。」
父がちらりと私を見る。長女の私が一番結婚に乗り遅れていることはわかっているのだが。今は心臓が壊れそうなほどの恋愛フラグが立っているからそっとしていて。
弟たちの婚約者は2人とも爵位があり立派な御令嬢と聞いている。私はまだあったことはないがとてもいい方達であると。
お父様と別れ生徒と交流場である庭園にやってきた。そこは大和撫子が着物を着て菊の花を愛でている現場を思い浮かべれるような立派な庭園だった。綺麗な透き通っている池と盆栽、そして桜の木に綺麗に整えられた芝生。
日本みたいだ。
私が感動していると目の前に金髪の少女がいた。主人公のカタリーナ様だ。
「アナスタシア様には感謝しています。まさかサナバート様にエスコートしていただけるなんて。ですが私はアナスタシア様とも交流を是非にとして行きたいので今からエスコートしても良いでしょうか?」
緊張されているのか肩が震えているカタリーナの申し出を断る理由があるはずもなくその申し出を受け入れてしまった。
そして受け入れて気づいた。ガッツリ条件である2を無視してしまったことに自分から主人公に関わってしまった。
いやここで私が虐めなければいいのだ。いじめる材料は今は持ち合わせていない。なぜならサナバート様と婚約をしていない。
そもそもいじめるつもりもない。
なのだがどうして私をエスコートするのか謎で仕方ない。
「アナスタシア様は釣りというものを知っていますか?」
この国では令嬢は釣りをするようなところではなく知らないと反応するのが普通なのだが私は前世で何度か釣りをしたことがある。ため嘘をつけず、うなずいた。
カタリーナは嬉しそうに顔を綻ばせ、釣りについて熱く語り始めた。
いっとき話に耳を向けていたが。
「アナスタシア様と私は仲良くなりたいのですが、庶民の女には興味はございませんか?」
大きい瞳でうるうると瞳を潤ませ私に攻撃してきた。ここで某ゲームであれば私は瞬時に死に至っていただろう。
はっきりいうと関わりたくないのが本音なのだがどうしてこうも関わってくるのか謎なのだ。
ゲーム内でも主人公から関わることはなかったはずなのになぜ。
「カタリーナ様はとても美しい女性です。なぜ私なんかと仲良くしたいのですか?」
私の言葉にわなわなと震えていくカタリーナは堪忍の尾が切れたかのように激昂した。
「アナスタシア様はご自身の美しさをわかられていないようですね。いいです、私がたっぷりお話ししましょう。まずはその美貌、貴方を主人公とした恋愛小説がたくさん出ていることをご存知ないのですか?」
何をそんなに喚いているのか周りのライバル令嬢たちが集まってきた。激昂している内容がまた自分には信じられないなようすぎてぽかんと口を開けて彼女の力説を眺めて聞いてしまっているような状態
そんな彼女の問いにフルフルと首を振ると周りのご令嬢たちも驚いたのかびっくりされていた。
「アナスタシア様は私たちの憧れです。その礼儀作法やら美しい身のこなしそして寡黙であらされるアルバート様の笑顔までも引き出せるお方です。」
力説が永遠と繰り広げられている最中、男性たちもこの輪の中に入っていく。一番目立っているのはもちろん王族なのだが、攻略者たちも一段と輝いており、アイドルグループに見つめられているような状態になってしまった。
天気は良くほのぼのとした空気であるにもかかわらず永遠とカタリーナが力説するおかげでドレスの下は汗だらけでとても悲惨である。顔のメイクも取れたんではないだろうかと思ったが、それは大丈夫なようだ。
止めに入ってくれたのはアルバート様である
「これ以上アナスタシアについて演説するのはやめだ。彼女の良さが他の男性までにも知れ渡ってしまう。」
「あらアル様。男の嫉妬は醜いのですよ?」
レイラ様まで参戦してきた。この公開処刑はなんだろう。
嫉妬って、言われているが嫉妬もクソもないだろう。私はレイラやマリアのような功績を残すような人ではない。
アルバート様とレイラ様によってカタリーナ様の演説は止まったのだがそれを機舞踏会で挨拶ができなかったと理由をつけて挨拶をしくる男性たち。
何度目かの挨拶をそこそこに終えたあと、飲み物が欲しかった私は、席を外し立食するスペースにやってきた。
アルバート様とシキ様がいらしゃった。2人にお辞儀をすると、お二人が近づいてくる。
「シキ・ハリアートだ。挨拶遅れて申し訳ない以後よろしく。」
「アナスタシアです。こちらこそよろしくお願いします。」
軽く挨拶を済ませるとアルバート様が飲み物を渡してくれた。
一瞬にして飲み干した私
それを見ていたアルバート様は面白がりもう一杯持ってきた。
次は少しずつ飲み2人に話しかける。
「そんなに見ないでください。恥ずかしいんですから!」
と伝えるとシキ様は目を逸らした。別に目を逸らして欲しかったわけではないのだが…
さっきの会話で少しおかしい点があった。
寡黙であらされる、アルバート様?
そんなわけないわ。こんなに無邪気に人をからかうようなお方なのに。
私はチラリとアルバート様を見つめた。
寡黙なんて噂はどこから流れているのか謎に思うほどだ。
「シキ様は、なぜアルバート様と?」
シキ様は、入学イベントでは今後婚約するレイラご令嬢と一緒のはず。
「アルバート様とは昔からのご友人関係を築かせていただいております。今後ともお見知り置きを」
サラサラの青髪がお辞儀と共に動く。
攻略キャラなだけあって、イケメン
おまけに秀才キャラなためとても賢く見える。
シキ様は1週間後には婚約をする予定であるため仲を深めるために、一緒にいるスチルがあるはずなのだが、ここでも桜スチルで、無条件で見れるとてもプレイヤーを喜ばせてくれた運営の計らいだった。そういうシーンが何枚かもらえる。
攻略をしないであろうイケメンたちは後々婚約する御令嬢と仲を深めていくがスチルは見れない。ラブラブシーンは一枚もらえるはずだがそれだけ。
横取りシーンや、嫉妬シーン、告白シーン、学園祭シーンなどたくさんあるが、今回の場合はアルバート様と私のシーンである。
プレイヤーが一番盛り上がった攻略できなかった場合のアルバート様とアナスタシアの結婚シーンである。
条件がなかなか厳しい。高感度が残り10でアルバートに振られなければいけない。
豪華なドレスと白いタキシードでの婚儀に誰もが息を呑むスチルであった。
自分で言うのもなんだが全攻略した私は全スチルを見ている。
シキ様がお辞儀した後、アルバート様が私を覗き込んでいた。
しっかりと自分の世界に入っていた私を心配そうに見ていた2人。
「大丈夫かい?」
「大丈夫ですわ。世界に入りこんでいました。お二人はとてもお目を引く御容姿をされていますので」
と伝えてごまかしたと思ったが、
なぜかアルバート様の顔がだんだん引きつっていく
何故だろうかと思ったが、今までの反応からしてきっと、
「シキのことは目に入れなくていい。今は私のことだけを考えるように。」
と言われる。
なんとなく想像はしていた。
寡黙であるはずのキャラはなぜか嫉妬心丸出しの発言を繰り返している
嬉しいのだが!シキ様の顔は私たちを直視できないように目を細めていた。
「アルバート様よ。それは恥ずかしくございます。」
私アナスタシアは、数日前の舞踏会と、婚約について、頭を抱えていた。
王族であるアルバート様からの婚約の申し込み。お父様にそのことを相談したが、お父様は賛成、お母様に関しては今すぐに書類を送りましょうと意気込んでいる。
弟に妹に早くアルバート様に会いたいとせがまれているような状態だ。
「お嬢様。早くドレスに着替えないと。」
シャネットの心配そうな声が頭の上からずしんとのしかかった。
フリフリのカーテン付きの広いベッド上には丸まって寝ている私。
前世ではこんな広い家に広いベッドでは眠れなかったのですごくいい生活を送っているのだが、そのいい生活がもたらしている苦悩がずしりとのしかかっているのだ。
シャネットといま変われるものならかわりたい。と愚痴るとシャネットははあとため息を漏らす。
「お嬢様のお世話できるのは私だからこそです。ご婚約されアルバート様のところに嫁がれることになってもシャネットはついていきます」
と、胸を張っていう。嬉しいのだが。婚約前提だ。
アルバートよ、恨むぜ。
そんなことを考えている時間も過ぎていきいい加減着替えないと入学式に間に合わない時間まで迫ってしまう。
お父様とお母様そして兄弟はすでに身支度と食事はすんでおり、私を待っている。
トロトロといつもの礼儀作法は無視し、食べている私を妹が横からあれこれ口出すが耳には届かず、食べ終わったのもギリギリ。
これから始まる学園生活に息を漏らすばかりであった。
舞踏会の日目を覚めると笑顔のアルバート様の顔が覗き込んでいた。もちろん数分も前のことを覚えている私顔面真っ赤。
そんな私を見てアルバート様は優しく髪を撫でた。
「返事はいつでもいい。」
ニコッと首を傾げながら私に微笑みかける。
また意識を失いかけたが持ち直して、いつでもいいという言葉にコクリとうなずく。
そのままエスコートをされ続け舞踏会は終わった。
それから初めてアルバート様に会う。
きまづいやら、どきどきするやで、顔は赤くなったり青くなったりと忙しい。そんな私を見た妹のサラが、
「お姉さまずるいです!私があと10年取っていればチャンスがあったのに。」
私に似てとても可愛い妹は私のおもちゃになっていた。髪をゆい、ドレスアップさせ、礼儀作法を教えいつでも嫁入りできるようにとしていた。
「アルバートさまのこと?」
驚いたように妹がこくこくと頷く。
その動作もまた可愛い。
「お姉さまは、確かにこの国の宝ですが、私もお姉さまに鍛えられたこの作法やメイク術などはお姉さまに並ぶと思います!なのに10歳若いだけで見落とされるなんて!」
「変わるわよ?」
私の精気がどこかに飛んでしまったように伝えると、サラは、ブンブンと首を振る
2つ結いをしているかみがベチベチと顔に当たる。痛そう…
「悔しいですがお姉さまでないとあの顔面には耐えられません。応援はしていますが悔しいだけです」
…お姉ちゃんも耐えられないんだよ。
あと生死が関わってるからね?
薄ピンクのくるくるした髪をこれまたくるくるとして遊ぶ妹を横目に起きて数時間の間で50回は超えているため息をまた1つ落とした。
学園はとても大きく、そしてここに入学できる喜びをかみしめる人たちが数多くいる中私は1人とほとほとしている。隣の妹とお母様は生き生きと弟たちは行儀良く父と歩いている。
気が進まないため歩みが遅くなり家族から置いてけぼりをくらってしまっていることに気づかず、下を見て歩いていると、誰かに思いっきりぶつかってしまった。体格差的に私が押し倒すような形で馬乗りしてしまった。そこには輝くばかりの金髪に、くるくるした髪の毛そしてお目目ぱっちり、目がぱちりとするたびに動く長い睫毛。薄い唇にふんわりと縁を描く眉毛、筋が通った鼻。
まるで前世の1000年に一度のアイドルを見ているかのような胸の高鳴り。
これは女の私でも惚れる。レベルの可愛さ。そんな可愛い子の上に鎮座していると考える私はいけないことをしている気分になりすぐにどけ、手を差し伸べると、細くほんのり焼けた手が私の病弱のように白い手を掴む。
そしてほとんど力入れずとも自分の力で立ち上がった女の人を見つめると、それは予想にしなかった主人公であった。なんでここにいるの。
主人公は入学式の前にここで桜スチルと共にとある男の人(サナ様)とぶつかる予定だったはずなのになんで?
とおもったのだがなぜ私もここにいるのか謎で仕方ない。家族はどこに行ったのだろうか。
そんなことよりもこんなに可愛いことぶつかった罪を謝罪しなければならない。
礼儀を完全に無視し勢いよく180度頭を勢いよく下げて
「本当にごめんなさい。ドレスは汚れていないかしら?怪我はしていない?本当にごめんなさい。」
勢いよく頭を下げたもので主人公はびっくりしたのか息を呑む音がした。
下げている頭を通り越して健康的な手が私の頬にかかりそのまま上を向かせた。
バッチリと目が合い私は彼女の美しさにほんのり顔が赤くなってしまう。ひさびさ死んでよかったと思ってしまうほどのものである。
「アナスタシア様そんなに頭を下げないでください。私はここで一番の庶民ですよ。周りに変な目で見られてしまいます。」
まさか自分のことよりも相手の立場を考える心の優しい子だったなんて。
プレイしていた子がこんなに自由に言葉を発するなんて感無量。やっぱり主人公はいい子だ。
桜がひらひらと私たちの前に降っているこのスチルはイベントが終わったっていうことなんだろう。やらかした。邪魔しちゃったよ。
バタバタと足音がすると思ったら後ろから肩を叩かれた。
そこにいたのは王族兄弟
「アナスタシア様?どこも怪我してない?あと君もえーっと」
「ミナチュレ・ハイル・カタリーナです。お二人のことは知っていますお声掛けありがとうございます。」
主人公の名前は公開されていないため私も初めてこの子の名前を知った。
庶民である彼女の名前は長かったがたいして苦労せず覚えれた。
前世にカタラーナというスウィーツがあるのだがそれと一文字しか変わらないため覚えやすい。
「カタリーナ、怪我はないか?」
サナバート様が微笑みかけるとカタリーナは顔を真っ赤にし一礼する。返事はせずそのままサナバートにエスコートをされ広場のほうに向かった。
そのままアルバート様と2人っきりになってしまいきまずい雰囲気のまま沈黙が流れたのだが。気まずいと思っているのは私だけであった。アルバート様は私に話しかけてくれる。
「そのアナスタシア様は元気がないようだがどうかした?」
その答えはあなたの婚約の申し込みが頭から離れないことです。
顔を覗き込んでくる美形が笑えばさらにイケメンになる。
にこりと笑い、私の手を取る。
「断らないってことはまだ私にもチャンスがあるってことで合ってる?」
「チャンスって…アルバート様はどうして私なんかに婚約の申し込みをされたのでしょうか?」
きょとんとした顔つきになったアルバート様は優しく私に説いた
「アルでいいよ。アルバートって長いし。そうだなーなんでだろう。ずっとあなたのことが好きだったからかな?」
突然の笑顔と突然の告白にハクハクと私は唇を動かす。
すすすす、すきってどういうことおおお
それにそんな愛称呼び私たちは婚約していますって周りにアピールしているようなものじゃ…
「あ、アルバート様愛称呼びはまだ早いかと、あとあの、す、好きっていったい…」
いつからすきなの?私たちまだ出会って数日目ですが!
いたずらが成功したような幼い笑顔を浮かべたアルバート様は、桜が舞う背景にとってもあっており心のシャッターでこのスチルを保存した。
「残念私はアナスタシア様を愛称で呼びたかったがまだ早いみたいだね」
作中との性格が全然違う。こんなに先を急ぐような人ではなかったのに。
「で、ですが、私に愛称呼びなどできません。し、ありません!」
頓珍漢なことを言っているにはわかるのだがすごく動揺もしているのだ。
アルバート様がまた名案を思いついたような顔をされており何を言われるかハラハラする。
「なら私がつけよう。アーニャかアーシャどちらが良い?」
私は心臓をとられるのだろうか。
「私的にはアーニャの方が可愛いのだが猫のようなアナスタシア様にぴったりだが、アーシャの方が名前的に沿っている感じがある。」
どっちがいいか私に決めさせようとしている。恥ずかしすぎる。前世の名前なんて古風でこんなあだ名なんてものはほぼなかったに等しい。幼なじみに茶化されていたぐらいだ。こんな恋愛のようなイベントが待ち受けているなんて。
いや実際に乙女ゲームに入り込んでいるんだが。私は悪役令嬢であり恋愛を邪魔する立場なのに前攻略末の最終ラスボスにアプローチされるなんて誰得。
「あ、アナスタシアは選択肢にはないのでしょうか?」
「うーん。ま、将来的にどっちか決めてもらうから今はアナスタシアでいいよ。さ、式典までエスコートさせてよ。兄たちは先に行ってしまったし。あっ。」
腰に手を添え歩みを進めようとしたアルバート様は急に私の顔を覗き込んできた。
そんな顔をひしひしと覗く。本当にイケメン、かっこいい。ぜひカメラをくれ。
「自分の欲ばかり優先していたけど、怪我してない?ドレスは見た感じ綺麗だけど足とか手とか大丈夫?」
まさか優しく気にかけてくださるなんて、幼なじみに教えてあげたい。できる男は違うんだな。と少し感動していたが、返事をしなくてはいけない。つこけててか馬乗りになって結構な時間が経っているが、痛むところはどこにもない。よって怪我はしていない。心臓は今すぐにでも壊れそうであるけど。
どくどくなる胸を押さえどこにも怪我はないことを伝えるとまた腰に手を添えてエスコートされる。
会場に着くとすでにほとんどの生徒が集合しており、定位置につかれていた。私も自分が立つ位置にいき王族のアルバート様はまた別のところに行かれる。
温もりがなくなったことが少し寂しく思ったが、数分後に式が始まりそんなことは忘れ現生徒会と王族の直系であるサナバート様の挨拶と学園代表の先生(校長)の話が終わり式は早々にお開きとなった。
サナバート様のご挨拶は周りの女性がとろけるんではないかと思うほど色っぽくなぜか何度も目があってしまうことにまたドキドキとしてしまい目を何度も逸らした。
式典終了後お父様と落合い立食を一緒に楽しんだのも1時間程度、あとは学生の交流の場が設けられ保護者は帰ることになる
「お母様は?」
「あいつは今サラの婿候補を探しに行ったよ。ミヤとカエも婚約者は決まっているからね。あとはアナスタシアとサラだけだ。」
父がちらりと私を見る。長女の私が一番結婚に乗り遅れていることはわかっているのだが。今は心臓が壊れそうなほどの恋愛フラグが立っているからそっとしていて。
弟たちの婚約者は2人とも爵位があり立派な御令嬢と聞いている。私はまだあったことはないがとてもいい方達であると。
お父様と別れ生徒と交流場である庭園にやってきた。そこは大和撫子が着物を着て菊の花を愛でている現場を思い浮かべれるような立派な庭園だった。綺麗な透き通っている池と盆栽、そして桜の木に綺麗に整えられた芝生。
日本みたいだ。
私が感動していると目の前に金髪の少女がいた。主人公のカタリーナ様だ。
「アナスタシア様には感謝しています。まさかサナバート様にエスコートしていただけるなんて。ですが私はアナスタシア様とも交流を是非にとして行きたいので今からエスコートしても良いでしょうか?」
緊張されているのか肩が震えているカタリーナの申し出を断る理由があるはずもなくその申し出を受け入れてしまった。
そして受け入れて気づいた。ガッツリ条件である2を無視してしまったことに自分から主人公に関わってしまった。
いやここで私が虐めなければいいのだ。いじめる材料は今は持ち合わせていない。なぜならサナバート様と婚約をしていない。
そもそもいじめるつもりもない。
なのだがどうして私をエスコートするのか謎で仕方ない。
「アナスタシア様は釣りというものを知っていますか?」
この国では令嬢は釣りをするようなところではなく知らないと反応するのが普通なのだが私は前世で何度か釣りをしたことがある。ため嘘をつけず、うなずいた。
カタリーナは嬉しそうに顔を綻ばせ、釣りについて熱く語り始めた。
いっとき話に耳を向けていたが。
「アナスタシア様と私は仲良くなりたいのですが、庶民の女には興味はございませんか?」
大きい瞳でうるうると瞳を潤ませ私に攻撃してきた。ここで某ゲームであれば私は瞬時に死に至っていただろう。
はっきりいうと関わりたくないのが本音なのだがどうしてこうも関わってくるのか謎なのだ。
ゲーム内でも主人公から関わることはなかったはずなのになぜ。
「カタリーナ様はとても美しい女性です。なぜ私なんかと仲良くしたいのですか?」
私の言葉にわなわなと震えていくカタリーナは堪忍の尾が切れたかのように激昂した。
「アナスタシア様はご自身の美しさをわかられていないようですね。いいです、私がたっぷりお話ししましょう。まずはその美貌、貴方を主人公とした恋愛小説がたくさん出ていることをご存知ないのですか?」
何をそんなに喚いているのか周りのライバル令嬢たちが集まってきた。激昂している内容がまた自分には信じられないなようすぎてぽかんと口を開けて彼女の力説を眺めて聞いてしまっているような状態
そんな彼女の問いにフルフルと首を振ると周りのご令嬢たちも驚いたのかびっくりされていた。
「アナスタシア様は私たちの憧れです。その礼儀作法やら美しい身のこなしそして寡黙であらされるアルバート様の笑顔までも引き出せるお方です。」
力説が永遠と繰り広げられている最中、男性たちもこの輪の中に入っていく。一番目立っているのはもちろん王族なのだが、攻略者たちも一段と輝いており、アイドルグループに見つめられているような状態になってしまった。
天気は良くほのぼのとした空気であるにもかかわらず永遠とカタリーナが力説するおかげでドレスの下は汗だらけでとても悲惨である。顔のメイクも取れたんではないだろうかと思ったが、それは大丈夫なようだ。
止めに入ってくれたのはアルバート様である
「これ以上アナスタシアについて演説するのはやめだ。彼女の良さが他の男性までにも知れ渡ってしまう。」
「あらアル様。男の嫉妬は醜いのですよ?」
レイラ様まで参戦してきた。この公開処刑はなんだろう。
嫉妬って、言われているが嫉妬もクソもないだろう。私はレイラやマリアのような功績を残すような人ではない。
アルバート様とレイラ様によってカタリーナ様の演説は止まったのだがそれを機舞踏会で挨拶ができなかったと理由をつけて挨拶をしくる男性たち。
何度目かの挨拶をそこそこに終えたあと、飲み物が欲しかった私は、席を外し立食するスペースにやってきた。
アルバート様とシキ様がいらしゃった。2人にお辞儀をすると、お二人が近づいてくる。
「シキ・ハリアートだ。挨拶遅れて申し訳ない以後よろしく。」
「アナスタシアです。こちらこそよろしくお願いします。」
軽く挨拶を済ませるとアルバート様が飲み物を渡してくれた。
一瞬にして飲み干した私
それを見ていたアルバート様は面白がりもう一杯持ってきた。
次は少しずつ飲み2人に話しかける。
「そんなに見ないでください。恥ずかしいんですから!」
と伝えるとシキ様は目を逸らした。別に目を逸らして欲しかったわけではないのだが…
さっきの会話で少しおかしい点があった。
寡黙であらされる、アルバート様?
そんなわけないわ。こんなに無邪気に人をからかうようなお方なのに。
私はチラリとアルバート様を見つめた。
寡黙なんて噂はどこから流れているのか謎に思うほどだ。
「シキ様は、なぜアルバート様と?」
シキ様は、入学イベントでは今後婚約するレイラご令嬢と一緒のはず。
「アルバート様とは昔からのご友人関係を築かせていただいております。今後ともお見知り置きを」
サラサラの青髪がお辞儀と共に動く。
攻略キャラなだけあって、イケメン
おまけに秀才キャラなためとても賢く見える。
シキ様は1週間後には婚約をする予定であるため仲を深めるために、一緒にいるスチルがあるはずなのだが、ここでも桜スチルで、無条件で見れるとてもプレイヤーを喜ばせてくれた運営の計らいだった。そういうシーンが何枚かもらえる。
攻略をしないであろうイケメンたちは後々婚約する御令嬢と仲を深めていくがスチルは見れない。ラブラブシーンは一枚もらえるはずだがそれだけ。
横取りシーンや、嫉妬シーン、告白シーン、学園祭シーンなどたくさんあるが、今回の場合はアルバート様と私のシーンである。
プレイヤーが一番盛り上がった攻略できなかった場合のアルバート様とアナスタシアの結婚シーンである。
条件がなかなか厳しい。高感度が残り10でアルバートに振られなければいけない。
豪華なドレスと白いタキシードでの婚儀に誰もが息を呑むスチルであった。
自分で言うのもなんだが全攻略した私は全スチルを見ている。
シキ様がお辞儀した後、アルバート様が私を覗き込んでいた。
しっかりと自分の世界に入っていた私を心配そうに見ていた2人。
「大丈夫かい?」
「大丈夫ですわ。世界に入りこんでいました。お二人はとてもお目を引く御容姿をされていますので」
と伝えてごまかしたと思ったが、
なぜかアルバート様の顔がだんだん引きつっていく
何故だろうかと思ったが、今までの反応からしてきっと、
「シキのことは目に入れなくていい。今は私のことだけを考えるように。」
と言われる。
なんとなく想像はしていた。
寡黙であるはずのキャラはなぜか嫉妬心丸出しの発言を繰り返している
嬉しいのだが!シキ様の顔は私たちを直視できないように目を細めていた。
「アルバート様よ。それは恥ずかしくございます。」
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