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2舞踏会にいざ!

攻略者

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まず初めに言わなければならないことがある。私はほとんど屋敷から出たことがない。なにを言いたいかわかったであろう。
シンプルに会話ができないのだ。
インキャ通り越して壁よ。皆さんも苦労したことがあるでしょう。この結成された輪の中に入れないのだ。
あー違う入ってはいけないことを知っていますか?
前世ではこの輪の中に仮に入れたとしても、この方達にとってあなたは私たちの足となり手となり武者のように働かなければ不適合とされいじめられる。そして前世の私がそうであった。
私が主役の舞踏会であるため最初は母と父とともに過ごすことはわかっているがその後母が考えている陰謀が私の敵なのだ。
ゲーム内では10歳で王子と婚約をするのだが今回もし王子と婚約をするにしても作中にあった昔はこうであったとかのやりとりはなくなる。それだけでも進歩と考えるべきである。よし程々に頑張ろう私。
馬車が止まり目の前に待ち受けているのは大きな扉と向こう側にいらっしゃる私の破滅フラグへの第一歩。
憂鬱である。
扉が開き父のエスコートともに歩みを進めると、待っていましたかのように拍手があちこちから聞こえる。
なぜかと思い顔を上げるとそこには攻略者を始め、お見目が麗しいお嬢様方たちの視線。

一際目を引いたのはサナバート様とアルバート様である。
やっぱり王族は風格がちがう。
ステージ付近まで人の道ができている…それらをゆっくりお父様と通っていく。
お父様とお母様は国で有名なお方のため月に一度ほどはパーティなどに参加をしている。

父が歩みを進めると同時に私にコソコソと話をしていく。

「実は6年前、婚約の話が国の王子から出ていたのだが、断ったのだ。今日はもしかしたら再度申し込みがあるかも知れん。あいつ(母)は、アナスタシアがいつか妃になることをあれからずっと夢に見ているから、少し強引なところがあるかもしれないから気をつけるようにな。父は、お前が選んだ相手なら庶民でもゆるそう。」

お父様の発言にうるっときたが、引っかかる点がいくつかあった。
やはりお母様は、その陰謀が昔からあったのね…
そして再度申し込みってことは向こうの希望によって婚約は成立するってこと?
前世が看護師であった私は頼まれたことを断ることができない性格であった。
これは、修羅の道を歩まねばならぬようだ。
どう断るか考えながら歩いていると、目的の場所までついた。
そこはマイク前。

……ん?何も聞いてないよ?

まず初めにお父様のご挨拶が長々とあり、その後主役である私の番。
何も考えていない…

「シャルナ・アナスタシアでございます。皆様とは初めて会う方がたでありますが、以後お見知り置きを。舞踏会を楽しんでください。」

もう少し長い挨拶を求められるかと思ったが、周りからは拍手の嵐。
どうして私はこうも歓迎されているのだろうか…
あっ、没落する前の花道を作られているのかしら!それなら、入学するまでの間はこの花道を可憐に通って行こうかな!とまでなるほどの拍手。
こわいよよよ。

父と別れた後すぐに壁に向かおうとするがそうはさせない王族たち。

銀髪と金髪が前に並び、私に挨拶してくる。

「サナバートだ。サナと呼んでくれて構わない。アナスタシア以後お見知り置きを。」

カッコよく一礼する、サナさま。
…う、動いている…かっこいい。本当にサナさまだ。私は感無量で、脳内はハンカチを持ち、涙ボロボロである。
そんな兄を一眼見て、弟が前に出てくる。

「アルバートです。私のことも、アルと呼んでくれて構わない。これからよろしく…君も学園への入学が決まっていると聞いている。同じクラスになれると嬉しいな」

とてつもないイケメンの顔でお辞儀をしてきた。やっぱりアル様も素敵。
サナ様とアル様と握手を交わし、2人がエスコートしてくれると言うまたまた特別な特権がついてきた。
ケーキや、ステーキ、またはサラダが、置いてある立食スタイルの今回の舞踏会は、なかなかお金がかかっているのが見て分かる。
なぜ私にそんなにお金をかけるか分からないが、王族をはじめ、ライバル令嬢の公爵の方がたまで数多くのお金持ちが周りを占めている。
確かに私はこの国で魔力は高い方であるが、王族の方やライバル令嬢の方たちも、同じぐらいの魔力の保持者である。(作中参照)
実際に目で確かめたわけではないが、イベントごとに邪魔してくる、令嬢との戦いの際にレベルが上がるたびに難しくなるのを覚えている。
私が一番苦戦したのはアル様ルートのアナスタシアの最高レベルであったのだが、今回は私が敵役であるため、苦戦することはない。

そんなことを考えていたのだが、ケーキを頬張っていると前方からライバル令嬢である、レスタニア・レイラ様とアイルバント・マリア様が、挨拶にこられた。

「お初にお目にかかりますシャナル様、わたしはレスタニア・レイラでございます」

「私は、アイルバント・マリアです。」

一礼するお二人。ゲーム内ではこの2人と私は接点はないはずなのだが、特に悪役令嬢たちの物語は書いてなかったのでどこかで接点はあったのかもしれないがまさか挨拶をしにきていただけるとは。
私も持っていたお皿を近くのテーブルに置き、2人に一礼する。

悪役令嬢紹介
1アイルバント・マリア
いかにも悪役である髪型金髪縦ロールを施し、礼儀作法は一流、魔力も高く、炎を主として扱っている。奇麗系の目鼻立ちをされており、主人公には優しく厳しく注意をしていく。

2レスタニア・レイラ
私と同じくショートカットで、剣術と魔力を融合させた技を得意とする。よく、主人公とは口論になるも、そこは公爵家の娘、負けずいつも勝負には勝っている。この方はシキ様ルートで出てくる方。背が高く、スレンダーなスタイルの持ち主。

3メイナル・トレン・コリン
背が小さく、活発に動き回る御令嬢。よくアナスタシアの周りをうろうろしていて、プレイヤーにも人気なキャラ。薄茶色のストレートの長い髪をいつもポニーテールにしている。ミニドレスを纏獲るほどの美脚の持ち主。

4フェニカル・サリー・エイル
伯爵家の娘であるも礼儀作法はアナスタシアと同じぐらいの技量を持ち、魔力もそこそこある。ナイスバディの持ち主で、顔もキュートである、少ない男性プレイヤーに人気であった。アナスタシアを尊敬しておりいつもそばにいてくれるキャラ。


こんなものであろう。コリン様とエイル様以外は特に見かけないのだが、私が婚約しなかったことで道標が変わったのかもしれない。

「アナスタシアです。私は友達が少ないためコミュニケーションの取り方はよくわからないのですが仲良くしていただけると幸いです」

堅苦しい挨拶をしたがレイラとマリアはウルウルと瞳を揺らし、私と固く握手をする

「ま!シャルナ様はとても可愛らしいわ。」

「本当はもっと早く舞踏会をして欲しいぐらいにお話をしたかったのよ!」

と、レイラとマリアに言われるが、この2人から発せられるオーラは煌びやかとしていて、近寄りがたいのだ。
アナスタシアの容姿は確かに可愛いのだがほぼ無表情の私を可愛いと言うマリアと、もっと早くに挨拶をしたかったと言うレイラ。
お世辞ではないだろうかと思ったのだが、これ本当のようだ。
隣の王子2人もウンウンとうなずいている。
私はこの国の何になろうとしているのだろうか。
壁になるつもりの私は壁にはなれず、次々と挨拶に来る人たちで埋れていった。
休憩できたのは挨拶が終わった1時間後、ケーキを持って外の風を浴びる。
もっと挨拶をしたかったかのように男性がたがきたのだが、レイラとマリアが休憩に行けと、私を外に出してくれた。門番役を進んでしてくれたのは意外ですごく嬉しい。
広いお屋敷を貸し切りにしている今回の舞踏会で外を散歩している御令嬢がちらほら。
ガーデンは奇麗なバラやチューリップ。前世では見られなかった大きい花や小さい花までちらほらあり、そのクオリティは日本の庭園を遥かに超える素晴らしさである。今は夜であるが魔法の力でライトアップしてあり、いい雰囲気が出ている。
私の一押しキャラである、アル様とここを歩けたらさぞ幸せであるのだが、全キャラ攻略のちにでてくる、アル様は攻略対象ではない。ましてや主人公でないのに、なんたる考え。
でも夢には見るよなあ…
と1人黄昏ていたら1人の男性がやってきた。
アル様である。
私を見つけると走って寄ってくる。
黒いスーツを着て、靴はおしゃれにも革靴で薄茶色ネクタイはイメージカラーの青色。
兄と顔は似ているが何故かこちらの方が美少年に見えるのは私の推しだからでしょうか?

「見つけた。レイラに聞いたけど口を破らなくてね、サナと競争していたんだ。」

屈託の無い笑顔で私に笑いかける。
い、いけめん…
鼻血出そう。
悪役令嬢たるもの、こんなことではダメなのはわかっているのだが、前世の私がチラつくようう。

「競争ですか?」

私は気を取り直し、引っかかることを質問した。

「ええ、アナスタシア様、私の言うこと聞いてくださいますか?」

膝をつき、私の右手をとる。
このゲームスチルの最大レアシーンでアル様が主人公にプロポーズするスチルだ。…私は何故無条件でこれを見れている?
ドキドキとなる胸を押さえて、次の言動を待った。
右手の甲にキスをしたアル様と、その口から発せられる言葉にわたしは失神した。

「シャルナ・アナスタシア様。私の妻になってください。まだ結婚できる歳では無いので婚約者になっていただければ幸いです」

……

そのあとの記憶は途切れてしまった。


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