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第3章 惑星マーカス編
10. ダンジョン閉鎖
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それからしばらく当たり障りのない話をしてから、私はチームのメンバーとの合流予定があるからと言ってその場を離れる。これは嘘ではない、サマンサさん達と落ち合うのだ。もっとも第一階層まで戻ってからだけど。
上層まで戻り、サマンサさん達との待ち合わせ場所に赴く。しばらく待っているとアルトくんが走って来た。少し興奮している様だ。
「トモミさん! ゴブリンを10匹倒せましたよ! 母さんが、これでEクラスに上がれるだろうって。」
「やったわね!おめでとう!」
「何よアルト、自分のことばっかり。私なんか12匹倒したんだから。」
と後からやってきたコトラルさんが口を挟む。
「それはサーシャ姉さんの助けがあったからだろう。」
「誰かに助けてもらっても倒せばいいのよ。そしたら成長できるの。ダンジョンのルールだって母さんが言ってたもの。」
「でも卑怯だよ。」
「卑怯って、モンスターに?」
「違う。真面目に強くなろうとしている他の冒険者にさ。」
「それを言うならダンジョンの存在自体が卑怯よ。外ではこんなに早く強くなれないもの。」
「それはそうなんだけど。」
「はいそこまで! 聖女様、ご無事で何よりです。」
追いついたサマンサさんが2人の口論を止めてくれた。それにしても相変わらずの聖女呼びだ。この人ブレないな。それにしても、このモンスターを倒せば強くなれる仕組みを作ったのは超越者で間違いない。目的は魂の促成栽培か?でも問題はそうして成長させた魂をどうしているのかなんだけど。
サーシャさんも加え5人でダンジョンを出て、出口にあるギルドのカウンターで採取した魔晶石を売却する。サマンサさん達はゴブリンの魔晶石50個、ホーンラビットの魔晶石5個を売却していた。どちらの魔晶石もひとつ1000ギニーでの買い取りなので合計55,000ギニーの儲けだ。宿屋に110日泊まれる額、サマンサさん達4人でもひと月弱泊まることができる。これだけの額を1日で稼いだわけだ。
私はと言うとゴブリンの魔晶石5個、スライム4個、スケルトン10個、大蜘蛛3個、大百足5個を買い取ってもらう。ゴブリン、スライム、スケルトンは第1階層のモンスターで魔晶石はひとつ1,000ギニー、大蜘蛛、大百足は第2階層のモンスターで魔晶石は5倍の5,000ギニーだ。合計59,000ギニーで買い取ってもらえた。片手間にやったにしてはかなりの額だ。しかし、今更だがスケルトンってどう考えても生物では無いよな。一体どうやって動いているんだろう。
お金を受け取ると宿屋に戻って食事だ。上機嫌のコトラルさん、アルトくんから今日のゴブリン狩りの様子を聞く。ふたりとも随分腕が上がった様だ。特にアルトくんは身振り手振りを合わせて解説してくれる。明日の目標は50匹と宣言する。サマンサさんが欲張っちゃダメとたしなめている。私もそう思う。危険なことをしている時は慎重すぎる方が良いのだ。
食事の後は自分の部屋に引き上げた。落ち着いて今日の超越者一族と思われる少女との出会いを考えてみる。この惑星への超越者一族の関与は確定だ。それとダンジョンは超越者が作った魂の促成栽培の場で間違いない。問題はリリ様にどう報告するかだ。下手に報告すれば恐らく神と超越者の戦いになるだろう。あの少女とも戦わないとならなくなるかも知れない。戦いたくない。決めた、もう一度あの超越者の少女に会って、腹を割って戦いを避ける方法について話し合ってみよう。リリ様に報告するのはその後だ。
ベッドの中に入ると緊張が緩み、途端に心細くなった。今までは寝る時はいつも側にハルちゃんがいた。頼り甲斐があるとはお世辞にも言えなかったが、誠実で思慮深くお節介焼きで何より優しかった。
<< トモミ...>>
「ハルちゃん!!!」
自分の大声で目が覚めた。いつの間にか眠ってしまっていた様だ。珍しい。最近は身体が眠りについても意識があることが多かったのだが。ハルちゃんが亡くなってからどうも自分であって自分でない様な不思議な気分だ。
サマンサさん達と一緒に朝食を取った後、昨日と同じようにダンジョンに向かうが、なんだか入口あたりが騒がしい。沢山の冒険者と思われる人たちがダンジョンに入らずに入口付近に集まっている様だ。
冒険者達は興奮した様子で互いに何か言い合っている。冒険者達の話し声に負けじとギルドの職員が声を張り上げる。
「昨日ダンジョン内で聖女様にお会いしたとの報告が上がっている。信頼できるAクラスのチーム闇夜の風からだ。よってスタンピードが起きる可能性があると判断して、事実確認が取れるまでダンジョンは一時閉鎖と決まった。分かったら皆んな今日は帰ってくれ。調査の結果は明日ギルド本部にて報告する。場合によっては町全体への避難命令が出る可能性もあるから注意しておいてくれ。」
やらかした!間違いなく昨日私が助けたパーティがギルドに報告したのだろう。噂になるとは思ったけどまさかダンジョン閉鎖に踏み切るとは、よっぽど信頼されているパーティだったんだな。
「あら、聖女様ですって。何をなさったのかしら?」
と言いながらサマンサさんがジト目で見つめてくる。
「さっ、さあ、見間違えって可能性も有りますからね。でも仕方ありませんから今日は帰りましょう。」
と言って冷や汗をかきながらサマンサさん達を出口に誘導する。さてダンジョンに入れないなら今日はどうしようかと話していると、サマンサさんが申し訳なさそうに言い出した。
「聖女様、申し訳ないのですが今日は別行動でよろしいでしょうか。実はコトラルとアルトにEクラスへの昇級試験を受けさせたいのです。確か今日の午後に予定されていたはずなので今から申し込めば間に合うかと。」
もちろん私に否はない。サマンサさん達と別れて私は町を散策することにした。ここに着いてからはダンジョンに入るばかりで散歩すらしたことがない。良い機会だろう。美味しい物があるといいな。といつもの食い意地を発揮してニマニマする私。色々な屋台や店で買い食いしながら町を巡る。見たことが無い食べ物ばかりだが味は悪くない。特にこの焼いた烏賊に焼肉のたれを掛けたようなものがなかなかだ。だけどこの内陸で烏賊は取れないだろう。いったい何の肉なんだろう、屋台のおじさんに恐る恐る聞いてみると、なんでもトラマンという巨大な芋虫を干したものだとか。聞かなきゃよかった...。
その時、
「聖女様。」
と突然声を掛けられた。サマンサさん達ではない、男性の声だ。思わず咳き込みそうになるのを堪えて振り返る。そこにはダンジョンで助けた冒険者のひとりが立っていた。なんで分かった? あの時は目深にフードを被っていたんだよ。絶対分からないと思っていたのに。
「聖女様ですか? 人違いですよ。」
「その声だ間違いないぜ。それに杖の傷が同じだ。」
しまった、声までは変えていなかった。それに杖か。私の杖にはトムさんに剣で切り付けられた特徴的な傷がある。まずい...。いやまだ誤魔化せるはずだ。
「さあ、なんのことでしょうか? 私はただのEクラスの冒険者です。聖女なんかではありません。」
「そうか? 人違いをしてしまった様だな。すまねえ。」
「いえ、大丈夫です。」
悪いが人違いということにさせてくれ、と心の中で謝りながらあわてて立ち上がり人ごみに紛れようと急ぎ足で歩こうとしてドンと誰かとぶつかった。
「ごめんなさい。」
と言いつつあわてて振り返ると、またまた見知った顔がこっちを見ていた。イースちゃんだ。なんと同じ年くらいの男の子と一緒、デート中かな。
「トモミちゃん。」
と嬉しそうに声を掛けてくる。ちゃん付でよばれて改めて自分の外見もイースちゃんと同じ歳くらいだったと思いだす。
「イースちゃん。偶然ね、今日はデートかな?」
と聞いてみると真っ赤になった。図星だったらしい。
「そ、そんなんじゃありません。」
と言っているがその顔を見ればバレバレだよ。
「こんにちは、イースの友達のハンスです。」
私が話題を振ったからか、男の子が挨拶をしてくれた。
「初めまして、トモミです。」
と言いつつハンスくんを見る。ふむ、どう見ても人族だ。イースちゃんみたいな特別な力はありそうにない。
「トモミちゃんは今日はお休みなの? だったら一緒に来ない? 私達、近くの森へピクニックに行く途中なの。綺麗な花が沢山咲いているところがあるのよ。」
とイースちゃんが誘ってくれる。
「でもデートのお邪魔では?」
上層まで戻り、サマンサさん達との待ち合わせ場所に赴く。しばらく待っているとアルトくんが走って来た。少し興奮している様だ。
「トモミさん! ゴブリンを10匹倒せましたよ! 母さんが、これでEクラスに上がれるだろうって。」
「やったわね!おめでとう!」
「何よアルト、自分のことばっかり。私なんか12匹倒したんだから。」
と後からやってきたコトラルさんが口を挟む。
「それはサーシャ姉さんの助けがあったからだろう。」
「誰かに助けてもらっても倒せばいいのよ。そしたら成長できるの。ダンジョンのルールだって母さんが言ってたもの。」
「でも卑怯だよ。」
「卑怯って、モンスターに?」
「違う。真面目に強くなろうとしている他の冒険者にさ。」
「それを言うならダンジョンの存在自体が卑怯よ。外ではこんなに早く強くなれないもの。」
「それはそうなんだけど。」
「はいそこまで! 聖女様、ご無事で何よりです。」
追いついたサマンサさんが2人の口論を止めてくれた。それにしても相変わらずの聖女呼びだ。この人ブレないな。それにしても、このモンスターを倒せば強くなれる仕組みを作ったのは超越者で間違いない。目的は魂の促成栽培か?でも問題はそうして成長させた魂をどうしているのかなんだけど。
サーシャさんも加え5人でダンジョンを出て、出口にあるギルドのカウンターで採取した魔晶石を売却する。サマンサさん達はゴブリンの魔晶石50個、ホーンラビットの魔晶石5個を売却していた。どちらの魔晶石もひとつ1000ギニーでの買い取りなので合計55,000ギニーの儲けだ。宿屋に110日泊まれる額、サマンサさん達4人でもひと月弱泊まることができる。これだけの額を1日で稼いだわけだ。
私はと言うとゴブリンの魔晶石5個、スライム4個、スケルトン10個、大蜘蛛3個、大百足5個を買い取ってもらう。ゴブリン、スライム、スケルトンは第1階層のモンスターで魔晶石はひとつ1,000ギニー、大蜘蛛、大百足は第2階層のモンスターで魔晶石は5倍の5,000ギニーだ。合計59,000ギニーで買い取ってもらえた。片手間にやったにしてはかなりの額だ。しかし、今更だがスケルトンってどう考えても生物では無いよな。一体どうやって動いているんだろう。
お金を受け取ると宿屋に戻って食事だ。上機嫌のコトラルさん、アルトくんから今日のゴブリン狩りの様子を聞く。ふたりとも随分腕が上がった様だ。特にアルトくんは身振り手振りを合わせて解説してくれる。明日の目標は50匹と宣言する。サマンサさんが欲張っちゃダメとたしなめている。私もそう思う。危険なことをしている時は慎重すぎる方が良いのだ。
食事の後は自分の部屋に引き上げた。落ち着いて今日の超越者一族と思われる少女との出会いを考えてみる。この惑星への超越者一族の関与は確定だ。それとダンジョンは超越者が作った魂の促成栽培の場で間違いない。問題はリリ様にどう報告するかだ。下手に報告すれば恐らく神と超越者の戦いになるだろう。あの少女とも戦わないとならなくなるかも知れない。戦いたくない。決めた、もう一度あの超越者の少女に会って、腹を割って戦いを避ける方法について話し合ってみよう。リリ様に報告するのはその後だ。
ベッドの中に入ると緊張が緩み、途端に心細くなった。今までは寝る時はいつも側にハルちゃんがいた。頼り甲斐があるとはお世辞にも言えなかったが、誠実で思慮深くお節介焼きで何より優しかった。
<< トモミ...>>
「ハルちゃん!!!」
自分の大声で目が覚めた。いつの間にか眠ってしまっていた様だ。珍しい。最近は身体が眠りについても意識があることが多かったのだが。ハルちゃんが亡くなってからどうも自分であって自分でない様な不思議な気分だ。
サマンサさん達と一緒に朝食を取った後、昨日と同じようにダンジョンに向かうが、なんだか入口あたりが騒がしい。沢山の冒険者と思われる人たちがダンジョンに入らずに入口付近に集まっている様だ。
冒険者達は興奮した様子で互いに何か言い合っている。冒険者達の話し声に負けじとギルドの職員が声を張り上げる。
「昨日ダンジョン内で聖女様にお会いしたとの報告が上がっている。信頼できるAクラスのチーム闇夜の風からだ。よってスタンピードが起きる可能性があると判断して、事実確認が取れるまでダンジョンは一時閉鎖と決まった。分かったら皆んな今日は帰ってくれ。調査の結果は明日ギルド本部にて報告する。場合によっては町全体への避難命令が出る可能性もあるから注意しておいてくれ。」
やらかした!間違いなく昨日私が助けたパーティがギルドに報告したのだろう。噂になるとは思ったけどまさかダンジョン閉鎖に踏み切るとは、よっぽど信頼されているパーティだったんだな。
「あら、聖女様ですって。何をなさったのかしら?」
と言いながらサマンサさんがジト目で見つめてくる。
「さっ、さあ、見間違えって可能性も有りますからね。でも仕方ありませんから今日は帰りましょう。」
と言って冷や汗をかきながらサマンサさん達を出口に誘導する。さてダンジョンに入れないなら今日はどうしようかと話していると、サマンサさんが申し訳なさそうに言い出した。
「聖女様、申し訳ないのですが今日は別行動でよろしいでしょうか。実はコトラルとアルトにEクラスへの昇級試験を受けさせたいのです。確か今日の午後に予定されていたはずなので今から申し込めば間に合うかと。」
もちろん私に否はない。サマンサさん達と別れて私は町を散策することにした。ここに着いてからはダンジョンに入るばかりで散歩すらしたことがない。良い機会だろう。美味しい物があるといいな。といつもの食い意地を発揮してニマニマする私。色々な屋台や店で買い食いしながら町を巡る。見たことが無い食べ物ばかりだが味は悪くない。特にこの焼いた烏賊に焼肉のたれを掛けたようなものがなかなかだ。だけどこの内陸で烏賊は取れないだろう。いったい何の肉なんだろう、屋台のおじさんに恐る恐る聞いてみると、なんでもトラマンという巨大な芋虫を干したものだとか。聞かなきゃよかった...。
その時、
「聖女様。」
と突然声を掛けられた。サマンサさん達ではない、男性の声だ。思わず咳き込みそうになるのを堪えて振り返る。そこにはダンジョンで助けた冒険者のひとりが立っていた。なんで分かった? あの時は目深にフードを被っていたんだよ。絶対分からないと思っていたのに。
「聖女様ですか? 人違いですよ。」
「その声だ間違いないぜ。それに杖の傷が同じだ。」
しまった、声までは変えていなかった。それに杖か。私の杖にはトムさんに剣で切り付けられた特徴的な傷がある。まずい...。いやまだ誤魔化せるはずだ。
「さあ、なんのことでしょうか? 私はただのEクラスの冒険者です。聖女なんかではありません。」
「そうか? 人違いをしてしまった様だな。すまねえ。」
「いえ、大丈夫です。」
悪いが人違いということにさせてくれ、と心の中で謝りながらあわてて立ち上がり人ごみに紛れようと急ぎ足で歩こうとしてドンと誰かとぶつかった。
「ごめんなさい。」
と言いつつあわてて振り返ると、またまた見知った顔がこっちを見ていた。イースちゃんだ。なんと同じ年くらいの男の子と一緒、デート中かな。
「トモミちゃん。」
と嬉しそうに声を掛けてくる。ちゃん付でよばれて改めて自分の外見もイースちゃんと同じ歳くらいだったと思いだす。
「イースちゃん。偶然ね、今日はデートかな?」
と聞いてみると真っ赤になった。図星だったらしい。
「そ、そんなんじゃありません。」
と言っているがその顔を見ればバレバレだよ。
「こんにちは、イースの友達のハンスです。」
私が話題を振ったからか、男の子が挨拶をしてくれた。
「初めまして、トモミです。」
と言いつつハンスくんを見る。ふむ、どう見ても人族だ。イースちゃんみたいな特別な力はありそうにない。
「トモミちゃんは今日はお休みなの? だったら一緒に来ない? 私達、近くの森へピクニックに行く途中なの。綺麗な花が沢山咲いているところがあるのよ。」
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