新米女神トモミの奮闘記

広野香盃

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第2章 惑星カーニン編

17. ゲート破壊

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 急展開だ。何らかの方法で超越者が元の次元からゲートを操作しているとしか思えない。まずい! 超越者には神が束になっても叶わないとお義父様おとうさまがおっしゃっていた。こちらの次元に来られたらアウトだろう。

<< 承知しました。ただちにロキ様とゲートに向かいます。>>

 位置が分からないのでロキさんの後について瞬間移動することにする。瞬間移動したすぐ後ならどこに跳んだか分かるのだ。一度の瞬間移動では到達できないらしくロキさんは何度も瞬間移動を繰り返す。すでに私達の銀河系は遥か遠くに見えるだけになった。5回目くらいの瞬間移動でようやくゲートと呼ばれている物が見えた。何もない空間に巨大なリング状のものが光っている。ロキさん曰く時たま閃光が走るのは精霊さん達がゲートを破壊しようと攻撃している時の光らしい。精霊さん達の姿は良く見えないのだが魔力感知で確かに居るというのは分かる。攻撃する魔力も結構強い。これだけの攻撃で破壊できないのか。
 私もさっそく精霊さん達に混じって攻撃したが、結界に簡単に弾かれてしまった。そうこうしている内にゲートの光が強くなってくる。超越者が魔力をチャージしているのだろう。満タンになれば超越者がやってきて終わりだ。そう思うと恐怖に身が竦む。でも今銀河系の皆を守れる神は私だけ。愛する息子タロウを守る為にも頑張らないと! 母は強いのだぞ! 自分を鼓舞し彗星・小惑星除去作業にくたいろうどうの時の要領で魔力を溜める、恥ずかしがっている場合ではないので呪文もちゃんと詠唱する。渾身の一撃だが、やはり結界は破れない。ますますゲートは輝きをましてくる。

 そのときロキさんの念話が皆に飛んだ。

<< 全員トモミ殿にタイミングを合わせて同じ場所を集中攻撃しろ! トモミ殿ゲートの中央に攻撃を! >>

<<<<<<<<<< 了解! >>>>>>>>>>>

 そうだよね。一ヶ所に攻撃を集中させれば威力も上がるはずだ、さすがロキさん! 希望を見出し再度魔力を溜める。

<< 行きます!!! >>

 と合図して破壊魔法を放出する。精霊さん達も一斉に攻撃してくれる。結界が少したわむがそれだけだ。ゲートの光はますます強くなる、そろそろ魔力チャージが完了しそうな気がする。次が最後のチャンスに成るかもしれない。なんとか攻撃力を上げるしかない。ひとつ方法を思いついた。うまく行く保障は無いけれどダメ元だ。

 私は胸の前で大きく両手を広げ、その間に巨大な魔力遮断結界の球体を作り出した。

<< 皆さん、この結界内に可能な限りの魔力を注いでください。>>

 と精霊さん達に呼びかけ、同時に私も魔力を注ぐ。そう、一ヶ所に攻撃を集中するといってもどうしてもタイミングや位置がわずかにずれる。それに精霊さん達は私の様に何回分もの魔力を溜めてから攻撃しているわけではない。それなら一旦私の魔力遮断結界内に魔力を取り込んでから放出すればタイミングも位置もピッタリ一致させることができる。これでだめなら後は無い。私は思いっきり結界内に魔力を出す。さっきから何度も全力で魔力を使っている所為で、さすがにクラッとするのを気力で持ちこたえる。精霊さん達も私の意図を理解したのか、一斉に魔力を注いでくれている。まだだ、魔力遮断結界がもつギリギリまで溜めてやる。そう思っているが時間はどんどん経っていく、まだ魔力が足りないのが分かる。ゲートの光はピークに達し、ゲートの向こうに人影らしきものが見えた。超越者が来る!!! 心配だがこのままでやるしかない! その時突然リリ様の声がした。

<< トモミさん、もう少しだけ結界を保って! >>

 リリ様の声が聞こえた途端結界内の魔力がグンと増えた。これ以上は魔力遮断結界がもたない。

<< 行きます!!! >>

と叫んでゲートに向かい一気に攻撃魔法を放出した。

 気が付くと私はリリ様に抱えられていた。しばらく気を失っていた様だ。

<< トモミさん! 良くやってくれたわ!!! 大手柄よ!!! >>

 いつにもなくリリ様が興奮しているのが分かる。あれ、こんなキャラだったっけ? 

<< 分かる? ゲートを破壊しただけでなく超越者をやっつけたのよ!!! あなたは英雄よ!!! >>

<< えっ、嘘ですよね。超越者って信じられないくらい強いって。あんなもんでやっつけられるわけないですよね。>>

<< そう、超越者は強いわ。でもタイミングが良かったの。ちょうど超越者の魂が次元と次元の境目にある時にゲートを破壊したから、魂が次元で分断されてしまったの。超越者の魂は巨大だからゲートをくぐるのに時間が掛かってそれがあだになったのよ。さすがに魂を分断されたら超越者と言えど存在出来ない様ね。魂の片割れも消えてしまったわ。きっと超越者もそのことを恐れて、平和裏にゲートをくぐれるチャンスを待っていたんだわ。ゲートを破壊されそうになったから最後の手段に出たのよ! >>

 いつも冷静なリリ様がひどく興奮している。超越者の恐怖を一番感じていたのはリリ様かもしれないな。超越者から逃れるために私の魂に憑依までしたわけだし。

<< そういえばリリ様がなぜここに? 銀河系から離れているから来られないはずでは? >>

 私がそう言うとリリ様はニコリと笑った。

<< 後を見てごらんなさい。>>

 振り返ると、遠くにあったはずの銀河系がすぐ近くまで迫っていた。そうかこの次元に来た時と同じ要領で銀河系ごとゲートの近くに瞬間移動したわけか。でもそれって、リリ様だけでなく中級神全員の協力が必要だったはずだ。あの短い時間で中級神全員に連絡を取ってくれたわけだ。

<< トモミ殿、わしからも礼を言わせてもらう。リリ殿の話では超越者とやらが来たらわしらもどうなっていたか分からんようじゃ。>>

<< いえ、精霊様達と力を合わせた結果ですよ。皆の勝利です。>>

 見回すと、私達は100体くらいの精霊様に囲まれていた。人ではなく体と表現したのは人型ではないから。何というか輪郭がはっきりしない上に半透明だ。そこに居るのは分かるけど形は分からないと言えば良いか。ロキさんは精霊さん全員に召集を掛けたのだが、皆バラバラの場所に居たため超越者との戦闘(?)に間に合ったのはここに居る精霊さん達だけらしい。私は精霊さん達に頭を下げて、協力してもらったことについての礼を述べた。途端に半分くらいの精霊さん達が消えてしまった。亜空間に引っ込んだのだろうか? 怖がらせてしまった? そういえば魔力遮断結界を解除したままだった! あわてて結界を張り直す。

 ロキさんが精霊さん達に解散を命じると、皆思い思いの方向に瞬間移動していった。ロキさんはこれからリリ様との会談の続きを行う様だ。それならばと私はロキさんにあるお願いを念話で伝えておいた。
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