11 / 71
11. 回復薬を作るソフィア
しおりを挟む
(ソフィア視点)
ケイトさんの話では、しばらくこの村に滞在することになりそうだ。それなら、今のうちに使い切ってしまった回復薬を補充しておきたい。だが、ケイトさんに森に薬草を取りに行きたい旨を話すと反対されてしまった。今、森に入るのは危険だと言うのだ。カラシンさんも同意見だ。どうしよう...回復薬がないといざという時不安だ。
回復薬の原料になる薬草は、リュックに詰めていくらか持ってきているが、森ならどこにでも生えているアマツル草やマイシ茸、トリクル草の実、コトロギ草の根ついては、リュックを軽くするためにほんの少しずつしか持って来なかった。必要になればすぐに手に入ると思ったのだ。まったく無いわけでは無いけれど、無駄なく使っても回復薬2本分が限度だ。でも、たった2本でも全く無いよりはましだ。私は回復薬を2本だけ作ることに決めた。
その日の昼、私はケイトさんに断って寝室で薬作りをさせてもらうことにした。まずは作業台代わりのチェストの上に、必要な物を並べて行く。ソラミ草の種、シマコトシ草の芽、それにリクルの実。この3つは森の中でもお母さんと私が住んでいた深奥と呼ばれる場所に行かないと手に入らない。それから、アマツル草やマイシ茸、トリクル草の実、コトロギ草の根だ。さらに愛用の濃縮装置と、さっき庭の土から土魔法で作った薬を入れる瓶だ。後は埃が入らない様に、周りを結界で囲ってから浄化の魔法を使えば準備完了だ。
まずは、先ほど汲んできた井戸水を結界に閉じ込めて空中に浮かべ、浄化の魔法で不純物を取り除く。次に水に高圧を掛けながら加熱することにより温度を180度まで上昇させる。小さい時は、これが薬作りの最初の関門だった。少しでも集中力を切らすと結界が歪み、中の圧力が下がって水が一気に沸騰し水蒸気爆発が起きる。何度か家を吹き飛ばしてお母さんに叱られたっけ。
水が十分に高温になったら、コトロギ草の根を投入する。投入直前に魔法で細かく粉砕するのがコツだ。前もって粉砕しておくと薬効が落ちる。コトロギ草の根を投入すると水が紫色に濁るが、しばらく待てば澄んでくる。底にたまった残留物を捨てて、次にソラミ草の種とマイシ茸を同じく粉砕したものを加える。結界の中で小規模な爆発が起き、一気に圧力が上がるがそれを結界を強化してねじ伏せる。その後はシマコトシ草の芽、アマツル草、トリクル草の実の順に投入する。後は濃縮装置を使って要領が10分の1になるまで濃縮し、それに別途濃縮したリクルの実の果汁を加えて反応させれば完了だ。あとは出来上がった薬を薬瓶に詰めて出来上がり。何とか2本分の回復薬を作ることができた。ここまでで3時間程。結構時間が掛かるし、大量に作ってもほとんど時間が変わらないから、一度に沢山作った方が効率が良いのだ。
出来上がった回復薬は、その内の1本をケイトさんに渡しておいた。まあ、役に立つ時が来ない方が良いのだけれど。
ほんの2本だけだが、回復薬を補充することが出来て一安心だ。作っている間ずっケイトさんが横で見ていたので緊張したけど、うまく出来たと思う。もっとも回復薬は怪我には有効だが病気には効かないことが多い。それを考えるともっと色々な薬を作っておきたいところだ。まあ今のところ病気にはリクルの実がまだあるけれど、このまま保存できるのは1年が限度だ。やはり食べつくす前にいくつかは薬に加工しておこうかな。
(ケイト視点)
興味本位で、薬を作るというソフィアに見学して良いと聞いたら、ふたつ返事で承知してくれた。薬を作るところを見るのは初めてだ。もちろん生まれ育った孤児院では近くの野原で取って来た薬草をすりつぶして傷に塗ったり、病気の時には薬草を煮だしたものを飲まされたりしていたから、全く初めてというわけでは無いが、回復薬と呼ばれる様な本格的な薬については初めてという意味だ。本当なら、薬の作り方は、それぞれの薬師の秘伝として人に見せたりしないと思うが、ソフィアは薬師ではないから大丈夫なんだろう。
最初に薬の原料となる薬草を台の上に並べて行く。結構沢山の種類の薬草を使うんだと感心する。なかなか本格的な薬の様だ。カラシンがA級回復薬と同等の効果があると言っていたけれど、あいつがA級回復薬を飲んだことがあるなんてあるわけないから考えるまでもなく冗談なんだろう。なにしろ、A級回復薬は、町で立派な家を一軒買うのと同じくらいの値段がする。そんなものを作れたらソフィアだってこんなところで冒険者なんてしているわけが無い。
だけど、薬作りが始まってすぐに、これはおかしいと気付いた。だって、空中に水の球が浮かんでいるんだ。ソフィアの魔法何だろうけれど、薬を作るのに魔法が必要なんて聞いたことが無い。水の球は原料の薬草を投入する毎に色が変わったり、内部で爆発が起こったりと変化していく。それになんだか暑い。周りに火の気はないのに部屋の温度が一気に上がった気がするぞ、それもあの水の球が熱を発している様な...。
結局3時間くらい掛かって、出来たのは小さな瓶に2本の回復薬。でも、素人の私でも、あの出来上がるまでの工程を見たら、ただの安物の薬ではないと分かる。1本手渡されたけれど、これがもしA級回復薬と同じものだとしたらと思うと少し手が震えた。
ケイトさんの話では、しばらくこの村に滞在することになりそうだ。それなら、今のうちに使い切ってしまった回復薬を補充しておきたい。だが、ケイトさんに森に薬草を取りに行きたい旨を話すと反対されてしまった。今、森に入るのは危険だと言うのだ。カラシンさんも同意見だ。どうしよう...回復薬がないといざという時不安だ。
回復薬の原料になる薬草は、リュックに詰めていくらか持ってきているが、森ならどこにでも生えているアマツル草やマイシ茸、トリクル草の実、コトロギ草の根ついては、リュックを軽くするためにほんの少しずつしか持って来なかった。必要になればすぐに手に入ると思ったのだ。まったく無いわけでは無いけれど、無駄なく使っても回復薬2本分が限度だ。でも、たった2本でも全く無いよりはましだ。私は回復薬を2本だけ作ることに決めた。
その日の昼、私はケイトさんに断って寝室で薬作りをさせてもらうことにした。まずは作業台代わりのチェストの上に、必要な物を並べて行く。ソラミ草の種、シマコトシ草の芽、それにリクルの実。この3つは森の中でもお母さんと私が住んでいた深奥と呼ばれる場所に行かないと手に入らない。それから、アマツル草やマイシ茸、トリクル草の実、コトロギ草の根だ。さらに愛用の濃縮装置と、さっき庭の土から土魔法で作った薬を入れる瓶だ。後は埃が入らない様に、周りを結界で囲ってから浄化の魔法を使えば準備完了だ。
まずは、先ほど汲んできた井戸水を結界に閉じ込めて空中に浮かべ、浄化の魔法で不純物を取り除く。次に水に高圧を掛けながら加熱することにより温度を180度まで上昇させる。小さい時は、これが薬作りの最初の関門だった。少しでも集中力を切らすと結界が歪み、中の圧力が下がって水が一気に沸騰し水蒸気爆発が起きる。何度か家を吹き飛ばしてお母さんに叱られたっけ。
水が十分に高温になったら、コトロギ草の根を投入する。投入直前に魔法で細かく粉砕するのがコツだ。前もって粉砕しておくと薬効が落ちる。コトロギ草の根を投入すると水が紫色に濁るが、しばらく待てば澄んでくる。底にたまった残留物を捨てて、次にソラミ草の種とマイシ茸を同じく粉砕したものを加える。結界の中で小規模な爆発が起き、一気に圧力が上がるがそれを結界を強化してねじ伏せる。その後はシマコトシ草の芽、アマツル草、トリクル草の実の順に投入する。後は濃縮装置を使って要領が10分の1になるまで濃縮し、それに別途濃縮したリクルの実の果汁を加えて反応させれば完了だ。あとは出来上がった薬を薬瓶に詰めて出来上がり。何とか2本分の回復薬を作ることができた。ここまでで3時間程。結構時間が掛かるし、大量に作ってもほとんど時間が変わらないから、一度に沢山作った方が効率が良いのだ。
出来上がった回復薬は、その内の1本をケイトさんに渡しておいた。まあ、役に立つ時が来ない方が良いのだけれど。
ほんの2本だけだが、回復薬を補充することが出来て一安心だ。作っている間ずっケイトさんが横で見ていたので緊張したけど、うまく出来たと思う。もっとも回復薬は怪我には有効だが病気には効かないことが多い。それを考えるともっと色々な薬を作っておきたいところだ。まあ今のところ病気にはリクルの実がまだあるけれど、このまま保存できるのは1年が限度だ。やはり食べつくす前にいくつかは薬に加工しておこうかな。
(ケイト視点)
興味本位で、薬を作るというソフィアに見学して良いと聞いたら、ふたつ返事で承知してくれた。薬を作るところを見るのは初めてだ。もちろん生まれ育った孤児院では近くの野原で取って来た薬草をすりつぶして傷に塗ったり、病気の時には薬草を煮だしたものを飲まされたりしていたから、全く初めてというわけでは無いが、回復薬と呼ばれる様な本格的な薬については初めてという意味だ。本当なら、薬の作り方は、それぞれの薬師の秘伝として人に見せたりしないと思うが、ソフィアは薬師ではないから大丈夫なんだろう。
最初に薬の原料となる薬草を台の上に並べて行く。結構沢山の種類の薬草を使うんだと感心する。なかなか本格的な薬の様だ。カラシンがA級回復薬と同等の効果があると言っていたけれど、あいつがA級回復薬を飲んだことがあるなんてあるわけないから考えるまでもなく冗談なんだろう。なにしろ、A級回復薬は、町で立派な家を一軒買うのと同じくらいの値段がする。そんなものを作れたらソフィアだってこんなところで冒険者なんてしているわけが無い。
だけど、薬作りが始まってすぐに、これはおかしいと気付いた。だって、空中に水の球が浮かんでいるんだ。ソフィアの魔法何だろうけれど、薬を作るのに魔法が必要なんて聞いたことが無い。水の球は原料の薬草を投入する毎に色が変わったり、内部で爆発が起こったりと変化していく。それになんだか暑い。周りに火の気はないのに部屋の温度が一気に上がった気がするぞ、それもあの水の球が熱を発している様な...。
結局3時間くらい掛かって、出来たのは小さな瓶に2本の回復薬。でも、素人の私でも、あの出来上がるまでの工程を見たら、ただの安物の薬ではないと分かる。1本手渡されたけれど、これがもしA級回復薬と同じものだとしたらと思うと少し手が震えた。
0
お気に入りに追加
224
あなたにおすすめの小説
【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
魔族の住むゲヘナ国の幼女エウリュアレは、魔力もほぼゼロの無能な皇帝だった。だが彼女が持つ価値は、唯一無二のもの。故に強者が集まり、彼女を守り支える。揺らぐことのない玉座の上で、幼女は最弱でありながら一番愛される存在だった。
「私ね、皆を守りたいの」
幼い彼女の望みは優しく柔らかく、他国を含む世界を包んでいく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/20……完結
2022/02/14……小説家になろう ハイファンタジー日間 81位
2022/02/14……アルファポリスHOT 62位
2022/02/14……連載開始

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる