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しかし蒼太の決意も虚しい出来事が起きた。仕事から帰ってきた蒼太が家へ入ると、藍の靴があった。藍が先に帰ってきていることが珍しく、蒼太の疲れた心はたちまち回復していくようだった。
軽い足取りでリビングへ向かう蒼太は、ふと足を止めた。藍の部屋の扉が少し空いている、そこに気がついた蒼太は藍は自室にいるのだろうと察した。
「んっ…んぁ…っ」
蒼太の心臓が恐ろしいほど大きく跳ね上がる。藍の部屋から微かに聞こえる声に、蒼太の鼓動はドクドクと忙しなく音を立てた。
「あ、あぁ…っ、んぅ…」
聞いた事のない藍の艶っぽい声に、蒼太は今すぐこの場から離れなければいけないのだと察した。しかし、蒼太は自分の欲望に逆らえるはずがなかった。
そっと隙間から藍の部屋を除くと、そこにはベッドの上に横になっている藍が、露わにった自分の自身を上下にさすっていた。はぁはぁと息が上がっている藍の肌は高揚しており、快感の中にいた。藍が自慰をしている、その事実に蒼太は感じたことのない興奮を覚えた。藍も男なのだから当然自慰もするだろう、けれど蒼太には目の前の光景が信じられなかった。普段はほとんど表情を変えないような藍が、キラキラとステージの上でアイドルとして輝いているあの藍が、息を荒くしながら必死に己の自身を上下に擦っているなんて。
「あぁ…っ」
一際大きな喘ぎ声が蒼太の耳に入る。どうやらイヤホンをしながら動画を見ている藍は、蒼太の存在には気づきもしなそうだった。藍の自身を擦る手が速くなる、息も荒くなっており「あっあっ…やば…い…っ」と漏れる声も激しさを増していった。
「んん…っ、あぁっイクッッ…」
藍の腰ががビクリと浮き上がると同時に、藍の自身から白い液体が勢いよく吹き出た。イッた余韻から胸を上下に揺らす藍の口からはだらし無く唾液が垂れており、その姿はなんともエロかった。
藍から目を離せない蒼太は、藍の発情した姿に股間が痛いほど立ち上がり興奮していた。しかしすぐにハッと我に返り、蒼太は家を飛び出した。
はぁ、はぁと息も上がり鼓動がけたたましく鳴り響く中、蒼太は自分の中に渦巻く感情を押さえつつも、ただ夜の街を走り続けた。暫くして立ち止まった蒼太はパチンっと自分の頬を叩いた。
「痛い、夢じゃない…」
はぁぁ…と膝から崩れ落ちるように蒼太はその場にしゃがみこむ。ヒリヒリと痛む頬、今しがた起きた事が都合のいい夢ではないという事実に蒼太は混乱した。
藍が自慰をしていた、あんな藍の姿当然だが蒼太は目にしたことがなかった。赤く染った肌、快感に耐えるような瞳、だらし無く開いた口、そして聞いた事のない色っぽい声、全てが蒼太の脳裏に色濃く残っていた。
「収まれよぉ……」
未だに自分のズボンを押し上げている自身に、蒼太は頭を抱えた。藍のあんな姿を目にして興奮しないはずがなかった。無理だ、藍に対して性的感情を封印すると誓ったはずなのに、あんな姿を見てしまったからにはそんな意思さえも一瞬で崩れ落ちてしまう。
やはり藍のことが好きだというこの感情は、友情などという純粋なものでは無かった。藍に触れたい、抱きしめたい、キスをしたい、抱きたい、友情とはかけ離れた不純なものばかりだ。
蒼太の脳裏にふと高校時代の藍の姿が蘇る。
『マジでキモイ』
蒼太はハッとした。自分の欲望に逆らえずに藍の足を舐めたあの時、藍の表情は蒼太に対する嫌悪で満ちていた。
───駄目だっ…こんな気持ち藍に向けちゃダメなんだ…っ。
自分を戒めるように、蒼太は自身の拳を力強く膝に叩きつけた。せっかく藍が心を開いてくれたのかもしれないというのに、そんな藍の気持ちを裏切るように性欲など抱いてはいけない。藍は蒼太のことを友人だと言ってくれたのだ、蒼太は藍の好意を裏切るわけにはいかなかった。
──俺は友達、藍の友達なんだ。
蒼太が藍の友人を辞めるという選択肢はなかった。藍が友人だと思ってくれる内は蒼太は藍の友人なのだ。蒼太はなんとか自分の欲望を抑えようと、先程のあの姿を忘れようと目を瞑った。
軽い足取りでリビングへ向かう蒼太は、ふと足を止めた。藍の部屋の扉が少し空いている、そこに気がついた蒼太は藍は自室にいるのだろうと察した。
「んっ…んぁ…っ」
蒼太の心臓が恐ろしいほど大きく跳ね上がる。藍の部屋から微かに聞こえる声に、蒼太の鼓動はドクドクと忙しなく音を立てた。
「あ、あぁ…っ、んぅ…」
聞いた事のない藍の艶っぽい声に、蒼太は今すぐこの場から離れなければいけないのだと察した。しかし、蒼太は自分の欲望に逆らえるはずがなかった。
そっと隙間から藍の部屋を除くと、そこにはベッドの上に横になっている藍が、露わにった自分の自身を上下にさすっていた。はぁはぁと息が上がっている藍の肌は高揚しており、快感の中にいた。藍が自慰をしている、その事実に蒼太は感じたことのない興奮を覚えた。藍も男なのだから当然自慰もするだろう、けれど蒼太には目の前の光景が信じられなかった。普段はほとんど表情を変えないような藍が、キラキラとステージの上でアイドルとして輝いているあの藍が、息を荒くしながら必死に己の自身を上下に擦っているなんて。
「あぁ…っ」
一際大きな喘ぎ声が蒼太の耳に入る。どうやらイヤホンをしながら動画を見ている藍は、蒼太の存在には気づきもしなそうだった。藍の自身を擦る手が速くなる、息も荒くなっており「あっあっ…やば…い…っ」と漏れる声も激しさを増していった。
「んん…っ、あぁっイクッッ…」
藍の腰ががビクリと浮き上がると同時に、藍の自身から白い液体が勢いよく吹き出た。イッた余韻から胸を上下に揺らす藍の口からはだらし無く唾液が垂れており、その姿はなんともエロかった。
藍から目を離せない蒼太は、藍の発情した姿に股間が痛いほど立ち上がり興奮していた。しかしすぐにハッと我に返り、蒼太は家を飛び出した。
はぁ、はぁと息も上がり鼓動がけたたましく鳴り響く中、蒼太は自分の中に渦巻く感情を押さえつつも、ただ夜の街を走り続けた。暫くして立ち止まった蒼太はパチンっと自分の頬を叩いた。
「痛い、夢じゃない…」
はぁぁ…と膝から崩れ落ちるように蒼太はその場にしゃがみこむ。ヒリヒリと痛む頬、今しがた起きた事が都合のいい夢ではないという事実に蒼太は混乱した。
藍が自慰をしていた、あんな藍の姿当然だが蒼太は目にしたことがなかった。赤く染った肌、快感に耐えるような瞳、だらし無く開いた口、そして聞いた事のない色っぽい声、全てが蒼太の脳裏に色濃く残っていた。
「収まれよぉ……」
未だに自分のズボンを押し上げている自身に、蒼太は頭を抱えた。藍のあんな姿を目にして興奮しないはずがなかった。無理だ、藍に対して性的感情を封印すると誓ったはずなのに、あんな姿を見てしまったからにはそんな意思さえも一瞬で崩れ落ちてしまう。
やはり藍のことが好きだというこの感情は、友情などという純粋なものでは無かった。藍に触れたい、抱きしめたい、キスをしたい、抱きたい、友情とはかけ離れた不純なものばかりだ。
蒼太の脳裏にふと高校時代の藍の姿が蘇る。
『マジでキモイ』
蒼太はハッとした。自分の欲望に逆らえずに藍の足を舐めたあの時、藍の表情は蒼太に対する嫌悪で満ちていた。
───駄目だっ…こんな気持ち藍に向けちゃダメなんだ…っ。
自分を戒めるように、蒼太は自身の拳を力強く膝に叩きつけた。せっかく藍が心を開いてくれたのかもしれないというのに、そんな藍の気持ちを裏切るように性欲など抱いてはいけない。藍は蒼太のことを友人だと言ってくれたのだ、蒼太は藍の好意を裏切るわけにはいかなかった。
──俺は友達、藍の友達なんだ。
蒼太が藍の友人を辞めるという選択肢はなかった。藍が友人だと思ってくれる内は蒼太は藍の友人なのだ。蒼太はなんとか自分の欲望を抑えようと、先程のあの姿を忘れようと目を瞑った。
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