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「陽翔、お前今日も部活か?」
放課後、陽翔が荷物をまとめていると既にカバンを肩に掛け、帰る準備が出来ている悠哉に声をかけられた。
「うん、テスト期間終わったから今週からまた部活」
先週まで二学期の中間テスト期間内だったため、全ての部活が活動を停止していた。しかしテスト期間が終わった今、サッカー部のマネージャーを務めている陽翔も今日から部活に出向かなくてはならなかった。
「ふーん、てかお前今回のテストもヤバそうだったよな」
悠哉は不敵に笑うと陽翔の痛いところを突いてきた。
「それは言わないでよっ!確かにヤバかったけどさぁ…」
陽翔はまだ返ってきていない中間テストの結果を想像し、頭を抱えたくなった。元々勉強が得意では無い陽翔は毎回どの教科も平均点を下回っていた。しかし今回のテストは特にヤバいという自覚があり、返ってきて欲しくないと願うほどだ。
「ははっ、テストの結果楽しみだな」
悠哉は口角を上げ笑顔で陽翔を煽ると「じゃあ部活頑張れよ」と教室を出ていった。そんな悠哉の姿に陽翔は目を細める。以前に比べ確実に悠哉が笑う機会が増えたのは自分の気のせいではないのだろうと陽翔は思った。それも彰人のおかげなのだろうと実感すると、何故だか陽翔の胸にチクチクと嫌な痛みが走る。悠哉を笑顔にしているのが自分ではないことに、陽翔は寂しさのようなものを抱いているのだった。
「あれ、悠哉はどこに行った?」
陽翔が顔を上げると、そこには彰人が立っていた。声をかけられるまで彰人が教室に入ってきたことさえも気づかなかったため、陽翔の心臓は驚きのあまりバクバクと音を立てている。
「えっと、悠哉なら帰りましたよ?」
「嘘だろ…?」
彰人は海のように青く澄んだ瞳を丸くし、固まってしまった。
「悠哉と帰る約束してたんですよね?」
「ああ、いつも通り悠哉の事を迎えに来たのだが…俺はまた悠哉に避けられてるのか…?」
青い顔をした彰人は「もしかして同棲の話を持ちかけたのが悪かったか…?」と何やらぶつぶつと一人で呟いている。悠哉の事になるととんでもない心配性を発動してしまう彰人に「悠哉から何か連絡来てません?」と陽翔が伝えると、彰人はポケットからスマホを取り出した。
「…!トイレに行ってくるから玄関で待っててくれとLINEがきていた、はぁ…避けられているわけではないみたいで良かった…」
彰人はほっと胸を撫で下ろすと愛おしそうにスマホの画面を眺めている。そんな彰人の姿に、この男が如何に悠哉に惚れているのか痛いほど陽翔にはわかった。彰人と悠哉は恋人同士だが、二人が恋人になるには遠い道のりがあった。そのため悠哉に嫌われたらこの世の終わりだと思っている彰人は些細なことでも自分が嫌われたのではないかと敏感になってしまっているようだ。けれども、それは彰人の悠哉への愛でもあった。陽翔は敵わないな、という気持ちを抱きながら「良かったですね」と微笑んだ。
「悪いな心配かけて」
「いえ、そういえば結局同棲の件はどうなったんですか?」
陽翔は昨日悠哉から相談を受けていた内容について彰人に問いかけた。あれから結局悠哉はどうしたのか、陽翔は内心気になっていたのだ。
「なんだ、悠哉のやつもう陽翔に話したのか。まぁ、そうだな、さすがに今すぐはまだ早いと言われて、俺が卒業したら一緒に暮らそうという話に今のところなっている」
「…そうですか」と陽翔は少し遅れて反応を見せる。あの悠哉が誰かと一緒に暮らすことを承諾した、その事実が陽翔にとっては理解し難いことだった。他人に対しての興味関心がとにかく薄く、誰とでも距離を取ってしまっていたあの悠哉が同棲だなんて。それほどまでに彰人という存在が悠哉にとって特別であることが嫌でも理解出来てしまった。
「お前は悠哉に惚れているんだろ?」
突然脈略のない質問を投げかけた彰人に、陽翔は「…えっ…」と言葉を失った。嫌な汗が頬をつたい、全身からサァっと寒気がおとずれ身体中の熱が引いていく。
「どうしても俺には理解出来ないんだ。悠哉の事が好きだというのに何故お前は俺のことを手助けするような真似をしたんだ?それに慶と付き合ってることだって俺からしたら全く意味が…」
「ははっ、何言ってるんですか」
彰人が言い終える前に、陽翔は彰人の言葉を遮るように乾いた笑いを発した。
「僕が悠哉に惚れてる?そんはずないじゃないですか。だって僕と悠哉は親友なんですよ?そんな事あってはならない」
陽翔は必死に笑顔を作ってみせたが、頬は引き攣り、瞳は瞬きすることさえも忘れているほど見開かれていた。
「…っ、そうか。お前がそう言うなら俺はこれ以上詮索しない。だけど自分の気持ちに嘘をついていると、悠哉までもを傷つけることになるかもしれないぞ」
彰人は陽翔のことを憐れむような瞳で見つめると、これ以上話すことは無いとでも言うように教室を出ていった。
彰人の去っていった後を見つめながら、陽翔はバクバクと音を立てている心臓をなんとか鎮めようと自分の胸元をギュッと掴んだ。
彰人に気づかれていた、自分自身の悠哉への気持ちを。陽翔はその事に対して大きな焦りを感じていた。もしこの事実が悠哉に伝わったらどうしようという焦りが。
放課後、陽翔が荷物をまとめていると既にカバンを肩に掛け、帰る準備が出来ている悠哉に声をかけられた。
「うん、テスト期間終わったから今週からまた部活」
先週まで二学期の中間テスト期間内だったため、全ての部活が活動を停止していた。しかしテスト期間が終わった今、サッカー部のマネージャーを務めている陽翔も今日から部活に出向かなくてはならなかった。
「ふーん、てかお前今回のテストもヤバそうだったよな」
悠哉は不敵に笑うと陽翔の痛いところを突いてきた。
「それは言わないでよっ!確かにヤバかったけどさぁ…」
陽翔はまだ返ってきていない中間テストの結果を想像し、頭を抱えたくなった。元々勉強が得意では無い陽翔は毎回どの教科も平均点を下回っていた。しかし今回のテストは特にヤバいという自覚があり、返ってきて欲しくないと願うほどだ。
「ははっ、テストの結果楽しみだな」
悠哉は口角を上げ笑顔で陽翔を煽ると「じゃあ部活頑張れよ」と教室を出ていった。そんな悠哉の姿に陽翔は目を細める。以前に比べ確実に悠哉が笑う機会が増えたのは自分の気のせいではないのだろうと陽翔は思った。それも彰人のおかげなのだろうと実感すると、何故だか陽翔の胸にチクチクと嫌な痛みが走る。悠哉を笑顔にしているのが自分ではないことに、陽翔は寂しさのようなものを抱いているのだった。
「あれ、悠哉はどこに行った?」
陽翔が顔を上げると、そこには彰人が立っていた。声をかけられるまで彰人が教室に入ってきたことさえも気づかなかったため、陽翔の心臓は驚きのあまりバクバクと音を立てている。
「えっと、悠哉なら帰りましたよ?」
「嘘だろ…?」
彰人は海のように青く澄んだ瞳を丸くし、固まってしまった。
「悠哉と帰る約束してたんですよね?」
「ああ、いつも通り悠哉の事を迎えに来たのだが…俺はまた悠哉に避けられてるのか…?」
青い顔をした彰人は「もしかして同棲の話を持ちかけたのが悪かったか…?」と何やらぶつぶつと一人で呟いている。悠哉の事になるととんでもない心配性を発動してしまう彰人に「悠哉から何か連絡来てません?」と陽翔が伝えると、彰人はポケットからスマホを取り出した。
「…!トイレに行ってくるから玄関で待っててくれとLINEがきていた、はぁ…避けられているわけではないみたいで良かった…」
彰人はほっと胸を撫で下ろすと愛おしそうにスマホの画面を眺めている。そんな彰人の姿に、この男が如何に悠哉に惚れているのか痛いほど陽翔にはわかった。彰人と悠哉は恋人同士だが、二人が恋人になるには遠い道のりがあった。そのため悠哉に嫌われたらこの世の終わりだと思っている彰人は些細なことでも自分が嫌われたのではないかと敏感になってしまっているようだ。けれども、それは彰人の悠哉への愛でもあった。陽翔は敵わないな、という気持ちを抱きながら「良かったですね」と微笑んだ。
「悪いな心配かけて」
「いえ、そういえば結局同棲の件はどうなったんですか?」
陽翔は昨日悠哉から相談を受けていた内容について彰人に問いかけた。あれから結局悠哉はどうしたのか、陽翔は内心気になっていたのだ。
「なんだ、悠哉のやつもう陽翔に話したのか。まぁ、そうだな、さすがに今すぐはまだ早いと言われて、俺が卒業したら一緒に暮らそうという話に今のところなっている」
「…そうですか」と陽翔は少し遅れて反応を見せる。あの悠哉が誰かと一緒に暮らすことを承諾した、その事実が陽翔にとっては理解し難いことだった。他人に対しての興味関心がとにかく薄く、誰とでも距離を取ってしまっていたあの悠哉が同棲だなんて。それほどまでに彰人という存在が悠哉にとって特別であることが嫌でも理解出来てしまった。
「お前は悠哉に惚れているんだろ?」
突然脈略のない質問を投げかけた彰人に、陽翔は「…えっ…」と言葉を失った。嫌な汗が頬をつたい、全身からサァっと寒気がおとずれ身体中の熱が引いていく。
「どうしても俺には理解出来ないんだ。悠哉の事が好きだというのに何故お前は俺のことを手助けするような真似をしたんだ?それに慶と付き合ってることだって俺からしたら全く意味が…」
「ははっ、何言ってるんですか」
彰人が言い終える前に、陽翔は彰人の言葉を遮るように乾いた笑いを発した。
「僕が悠哉に惚れてる?そんはずないじゃないですか。だって僕と悠哉は親友なんですよ?そんな事あってはならない」
陽翔は必死に笑顔を作ってみせたが、頬は引き攣り、瞳は瞬きすることさえも忘れているほど見開かれていた。
「…っ、そうか。お前がそう言うなら俺はこれ以上詮索しない。だけど自分の気持ちに嘘をついていると、悠哉までもを傷つけることになるかもしれないぞ」
彰人は陽翔のことを憐れむような瞳で見つめると、これ以上話すことは無いとでも言うように教室を出ていった。
彰人の去っていった後を見つめながら、陽翔はバクバクと音を立てている心臓をなんとか鎮めようと自分の胸元をギュッと掴んだ。
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