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第3章 使い捨ての守り神
デッサン
しおりを挟むわたしの通っているアトリエは滅多にデッサンなんてしないのに、今日は先生が「デッサンするよ」と言い出した。
お題は…中くらいのじゃがいも。まあデッサンの画題としては良いと思う。土のついた1つ1つの凹凸や、光の関係で明暗のできている白い皮の描き方がポイントだろう。じゃがいもが乗っている白い紙には影ができている。まずは…………。
ーー20分後ーー
えーと、じゃがいもは……あ、目みたいなのもある。描き足さなきゃ。白い、つるっとしてて、黒いのが中にあるけど、土じゃないな…凹んでもないし、うん、半開きの目だな。
ーー5分後ーー
あ、足みたいなのも描き足さなきゃ。それに紙の上にも乗ってない。下ろそう。
「ウーウウウゥ、ウー、ウーウン…」
何か変な音がする。また絵の具を流すシンクが鳴ってるのかな。
あれ、今度は手も生えてる。足も長くなって、口ヒゲも生えてる。目も半開きじゃなくって、ばっちり開いて吊り上がってる?
「グオオオー!!!」
……あれ………?
シャッシャッという静かな音で目を覚ますと、周りには全く知らない人たちがいた。子供たちと、女の人が1人。子供たちは床に這いつくばって白紙に鉛筆を走らせている。それからみんな時おりこっちを見ては、また紙に視線を戻して書いている。
これはきっと…デッサンだ。何を描いているのだろう。
そうだ、なぜかわたしは目しか動かせない。呼吸はできるけど、何となく口が小さくなってる気が…?
でも気のせいだったのだろう。しばらくすると歩けるようにもなり、集中してデッサンをしている子供たちをおどかしたくなった。あの子にしよう。ずっと鉛筆を走らせて紙ばかり見ているあの子にそっと近づいて………。
「グオオオー!!!」
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