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最終回(1300字)
ブック・エンド
しおりを挟むさて、この度は拙作に1年間お付き合いいただいた読者の皆様に感謝の言葉を申し上げたい。あとがきというと、こういう台詞を末尾に持ってくる方が多いが、本作では後が長いため先に記しておく。というのも、私事ながら皆様に話さずにはいられないことがあり、ここでそれを紹介させてほしいのである。
先日私は通販で不思議なブックエンドを買った。ブックエンドと言うと本棚に挟むアレであるが、そのブックエンドは本のページの間に挟むのだという。栞とは違う、と説明されている。興味本位で買うにしては些か出費だったろうか。まあいい。とにかくそれが届いたので、試しに、拙作の短編集「一寸先は闇」を取り出し、「ゼブラグラス」という作品の最初の2ページ間に挟んでみた。すると…
ーー「6700万年前だってよ!」
振り向くなり、ソーー
と、なんと2行目以降の文章が消えてしまった。すうっ、とまるで成仏する幽霊のようにだ。「振り向くなり、ソ」とは何ぞや?と首を傾げてブックエンドを除けると、後の文章が再びすうっと現れ、「振り向くなり、ソウヤはそう言って、ヒトシに朝刊を掲げて見せた。」と書いてあったことが判った。そうだ、「ソウヤ」も「ヒトシ」も登場人物の名前だったではないか。なるほどこのブックエンドは挟んだページの文章を消してしまう力があるらしい。
しかしなぜ
ーー「6700万年前だってよ!」
振り向くなり、ソーー
だけが残ったのだろうか。
ーー「6700万年前だってよ!」ーー
でも
ーー「6700万年前だってよ!」
振り向くなーー
でもなく、なぜ
ーー「6700万年前だってよ!」
振り向くなり、ソーー
だったのだろうか。
「細かいことが気になってしまう、僕の悪い癖」
と先日シーズン19が終了した某ドラマの主人公を思い浮かべながらブックエンドを調べてみると、ややっ、上の方に小さく数字が書いてある。22、と。
22?22がどうした。シリアルナンバーか。文字数か何かか。そこで実際に文字数を数えてみると、なるほど、確かに22文字であった。
ーー「6700万年前だってよ!」
振り向くなり、ソーー
の文字数である。ダッシュは引用の意味でつけたものだから無視して構わない。「『6700万年前だってよ!』振り向くなり、ソ」だけだと、確かに22文字である。ああ、24文字だと思った人は、鉤括弧まで数えてしまっていませんか。本文は二重鉤括弧から「ソ」までですよ。22文字でしょう。二重鉤括弧は鉤括弧内の鉤括弧ゆえに二重である訳で…まあ細かいことはよろしい。ブックエンドに書かれた文字数が、そのブックエンドを挟んだ時に残る文字数だということです。
それから私は様々な本にブックエンドを挟んでみた。これがさぞ面白かろうと思いきやそうでもない。すぐに飽きてくる。これなら本物の幽霊が成仏する場面を何度も見せられた方が面白い。
ということで今度は新たに別のブックエンドを取り寄せることにした。1文字、3文字、10文字、100文字…。100文字のブックエンドを挟んでみると、これが受験国語の問題の下手な解答のように見えて面白い。100文字じゃ誰々先生もこの程度しか書けんのか、と。まあ、幼稚な遊びであ
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