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2019年 7月の作品
耳鳴り
しおりを挟む「……ピイィィィィー………………」
その音で、目が覚めた。
あ、そっか。わたし、授業中に寝落ちしちゃったんだ。
目覚めたと言っても意識が戻っただけで、まぶたは重くて上げられない。それに、もうちょっと寝てたい。この先生の授業なら、寝てても大丈夫。なはず。
誰も聞いてないのに先生は話している。
うん、大丈夫だ。
この先生の授業はいつもみんな寝てる。そして先生も全然それを注意しない。ていうか気にしてない。
眠すぎて体が動かない。突っ伏した自分の頭で右手が机に押しつけられ、ちょっと冷たい。
その時、足音が近づいてきた。
やばっ。起きなきゃと思ったけど、だいぶ疲れてるのか頭が上がらない。
先生がわたしの前で止まり、わたしの右手をつかんだ。
…先生のすすり泣く声が聞こえた。
わたしを再び睡魔が襲った。
心停止の信号が響く病室で、母親は事故死した娘の、冷たいベッドの枠に触れた右手を握りしめ、泣いた。
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