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2019年 4月の作品
社会の風潮
しおりを挟むある日私が歩いていると、目の前の信号が赤に変わった。左右どちらからも車が来ていなかったのでそのまま横断歩道を渡っていると、
「ピピーッ!!」
耳を劈くようなホイッスルの音が飛んできた。
驚いて辺りを見回すと、どこにいたのか、青緑の車体に赤いサイレンを光らせた車が右から走ってきて、私の前で止まった。
中から地域の見守り隊みたいな蛍光グリーンの上着を着た男が出てきて、
「信号無視で現行犯逮捕します。」
と言ったのだ。
私は歩行者が、しかも信号無視で逮捕なんて聞いたことないと抗議した。だが男は淡々と説明した。
「世論の声により道交法が改正され、信号無視した歩行者は逮捕されることになりました。」
「事故らなければ問題ないじゃないか!」
「でも現にあなたは今、私の車に気付きませんでしたよね?」
「…見逃してくれないのか。」
「方法がない訳では。」
それで私は今ここにいる。さあ、信号無視犯、署まで同行しなさい。
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