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2019年 3月の作品
啓蟄
しおりを挟む新天地へと来てしまったのだろうか。
彼がそう思ったのは、目の前にそびえる大木に、5つの花弁をつけた薄桃色の花が咲いていたからだった。
こんなの、初めてだ。
眩しい白の地面は例年より少し緩く、既に右の前脚の跡が丸くくぼんでいた。
だがその他は変わったところはなく、朝から雪かきを始める老人も、家の屋根に積もっては突然ドスンと落下する雪も、例年通りにそこにあった。家は、彼から見れば、どっさり蓄えを溜め込んで人間と共生さえする、地上の眠らない大きな生き物であった。それが相変わらず、雪の中でびくともせずに過ごしていたようで、彼は安心して雪から這い出た。
「あっ、桜だー!」
幼い少女が走り寄ってきたので、彼は急いでまた雪の中に身を隠した。窓が開いて、母親が彼女を注意する。
「走っちゃだめよー!」
その時、部屋のテレビの音声が漏れてきた。
「地球温暖化の影響で、今年の桜前線は異常な速さで移動しており…」
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