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第一章
第十二話 前表
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「セノンさん、今から話すことはわかっていますよね?」
セノンとユリカは宿[BUFFALO]で二人で話した場所と同じ場所にいた。
しかし、初めて二人が会話した時とは空気の重さが格段に違った。
「はい。わかっています」
セノンは試練の塔の時とは打って変わり、ユリカに対して震えを覚えていた。
「なんで、今日の朝私の翼を触ったか詳しく聞きますね? これから」
「――は、はい」
セノンは顔を下に向けたまま語り始める。
「今日の朝、ユリカさんの翼にとても驚かされました。それで、それで初めて見てこの翼はアニメだとよくあんなことやこんなことがあって……、だから、このセカルドではそうなんだろうと思い触れてしまいました」
「……なるほどね。わかった。なら、これからたくさんいいことでもしますか?」
セノンにはユリカの目の奥に何かが潜んでいる、そんな気がした。ユリカが何を企んでいるかセノンには全く分からないが二つの選択肢があり、どっちに転んでもまずい、そんな気がしてならない。
「け、結構です」
「あーあ。せっかく面白いことができると思ったのに……」
「すみませんでした」
セノンは申し訳なさそうな表情を見せるとまた俯く。
「まぁ、今日は之で見逃してあげる。でも、今度、こういうことをしたらわかるよね?」
ユリカの目の奥にいた何かは咆哮したような気がした。セノンは心の中で強く決心をした。
「わ、わかりました。今日はありがとうございました」
セノンは言葉を間違えるのそ入れに気づかずその場を去った。
そしてこの時後ろではユリカがニコニコと手を振っていた。
セノンにはこのあとやることがあった。
セノンはいま、個人のランキングが六位まで下がっていた。それに焦りを感じ、一人で試練の塔を登ろうとしていたのだ。
セノンは宿[BUFFALO]を出た後はどこも寄り道することなく、試練の塔に行った。
「あら、さっきはギルド、エンジェル・ハーツに所属していた方ですね? 先ほどの担当させていただきました、一ノ瀬と申します。夜は何か用がございましたか?」
セノンはまさか自分のことを覚えているとは思わず、驚くも目つきを変えずに言う。
「一ノ瀬さんですか。よろしくお願いしますね。僕は、セノンといいます。これからの時間は自分の限界でも挑戦してこようかと思っています。何回まで行けますかね?」
セノンが自分の名前を言うと一ノ瀬は少し固まった。
「……セノンさんでしたか。テルルのメンバーがここに初めて来たときも私が案内したんですよ? 懐かしいですよね」
セノンは心の中で世の中が狭いものだと思った。そして、少し運命的なものも感じた。
「そうだったんですか? それは奇遇ですね」
「そうですね。そういえばさっきテルルのメンバーがギルドのリーダーになって試練の塔の言っていましたよ。はじめは一階からスタートですよって何度も言ったんですが、頑固な方で……貫禄もあって……注意を聞かず三十階まで行ってしまいました。ギルドのメンバーが死んでなければいいんですけどね……」
セノンは一ノ瀬の言いぶりでなんとなくだれか悟った。しかし、確信はなかった。それは、元テルルのメンバーはみな強く自分でこう決めたらなかなか意見を変えない。
「それは大変でしたね。何なら、僕が様子でも見てきましょうか?」
「本当ですか? それはとても助かります」
「なら、何階に行ったかだけ教えていただけますか? あ、あとフレンドにもなっていただけますか? チャットを送れると楽なので」
「わかりました。その方は、三十五階に行っています。それで、フレンドの件なんですけど、本当に私なんかフレンドになっていただいていいんですか?」
「大丈夫ですよ」
セノンのフレンド欄は今、十一人しかおらずとてもさみしさのあるリストとなっていたのだ。
「わかりました」
一ノ瀬は少し、うれしそうな表情をし、受付のお姉さんとは違い素の一ノ瀬が出ていた。
「ありがとうございます」
こうして、セノンと一ノ瀬はフレンドとなった。
「会話って楽しいですよね。こうしているうちに準備が終わりました。それでは気を付けて行ってらっしゃいませ」
「こちらこそ、とても楽しめました。それでは。また連絡は入れますね」
一ノ瀬はセノンに深く一礼した。そして、セノンはその一例を見ることなく試練の塔に向かった。
試練の塔は今まで自分が行ったことのある階層の休憩地帯にはループできるシステムがある。セノンはそのシステムのことを知っていた。そのため、コマンドメニューを開き地図を出す。
するとセノンは四十回を超えるあたりまでの階層に行ったことがあることがわかった。セノンはその中から三十五階の文字をタッチする。
セノンはまぶしい光に包まれる。
セノンは一瞬目を閉じるが、すぐに開ける。
「ここは――――」
セノンは小さくつぶやいた。そこにはもちろんセノンの来たことがあった。そこはセノンもまだ鮮明に映像として流れることができるところだった。
セノンの前に広がった世界は目の前の攻勢すら見ることのできない洞窟。そう、どんなに目がいいプレイヤーでどんなに暗闇に慣れても前を見ることができない。そのうえ塔の一階とは比べ物にならないくらいモンスターが強い。
セノンが鮮明に覚えているのには理由があった。
それは――――
セノンとユリカは宿[BUFFALO]で二人で話した場所と同じ場所にいた。
しかし、初めて二人が会話した時とは空気の重さが格段に違った。
「はい。わかっています」
セノンは試練の塔の時とは打って変わり、ユリカに対して震えを覚えていた。
「なんで、今日の朝私の翼を触ったか詳しく聞きますね? これから」
「――は、はい」
セノンは顔を下に向けたまま語り始める。
「今日の朝、ユリカさんの翼にとても驚かされました。それで、それで初めて見てこの翼はアニメだとよくあんなことやこんなことがあって……、だから、このセカルドではそうなんだろうと思い触れてしまいました」
「……なるほどね。わかった。なら、これからたくさんいいことでもしますか?」
セノンにはユリカの目の奥に何かが潜んでいる、そんな気がした。ユリカが何を企んでいるかセノンには全く分からないが二つの選択肢があり、どっちに転んでもまずい、そんな気がしてならない。
「け、結構です」
「あーあ。せっかく面白いことができると思ったのに……」
「すみませんでした」
セノンは申し訳なさそうな表情を見せるとまた俯く。
「まぁ、今日は之で見逃してあげる。でも、今度、こういうことをしたらわかるよね?」
ユリカの目の奥にいた何かは咆哮したような気がした。セノンは心の中で強く決心をした。
「わ、わかりました。今日はありがとうございました」
セノンは言葉を間違えるのそ入れに気づかずその場を去った。
そしてこの時後ろではユリカがニコニコと手を振っていた。
セノンにはこのあとやることがあった。
セノンはいま、個人のランキングが六位まで下がっていた。それに焦りを感じ、一人で試練の塔を登ろうとしていたのだ。
セノンは宿[BUFFALO]を出た後はどこも寄り道することなく、試練の塔に行った。
「あら、さっきはギルド、エンジェル・ハーツに所属していた方ですね? 先ほどの担当させていただきました、一ノ瀬と申します。夜は何か用がございましたか?」
セノンはまさか自分のことを覚えているとは思わず、驚くも目つきを変えずに言う。
「一ノ瀬さんですか。よろしくお願いしますね。僕は、セノンといいます。これからの時間は自分の限界でも挑戦してこようかと思っています。何回まで行けますかね?」
セノンが自分の名前を言うと一ノ瀬は少し固まった。
「……セノンさんでしたか。テルルのメンバーがここに初めて来たときも私が案内したんですよ? 懐かしいですよね」
セノンは心の中で世の中が狭いものだと思った。そして、少し運命的なものも感じた。
「そうだったんですか? それは奇遇ですね」
「そうですね。そういえばさっきテルルのメンバーがギルドのリーダーになって試練の塔の言っていましたよ。はじめは一階からスタートですよって何度も言ったんですが、頑固な方で……貫禄もあって……注意を聞かず三十階まで行ってしまいました。ギルドのメンバーが死んでなければいいんですけどね……」
セノンは一ノ瀬の言いぶりでなんとなくだれか悟った。しかし、確信はなかった。それは、元テルルのメンバーはみな強く自分でこう決めたらなかなか意見を変えない。
「それは大変でしたね。何なら、僕が様子でも見てきましょうか?」
「本当ですか? それはとても助かります」
「なら、何階に行ったかだけ教えていただけますか? あ、あとフレンドにもなっていただけますか? チャットを送れると楽なので」
「わかりました。その方は、三十五階に行っています。それで、フレンドの件なんですけど、本当に私なんかフレンドになっていただいていいんですか?」
「大丈夫ですよ」
セノンのフレンド欄は今、十一人しかおらずとてもさみしさのあるリストとなっていたのだ。
「わかりました」
一ノ瀬は少し、うれしそうな表情をし、受付のお姉さんとは違い素の一ノ瀬が出ていた。
「ありがとうございます」
こうして、セノンと一ノ瀬はフレンドとなった。
「会話って楽しいですよね。こうしているうちに準備が終わりました。それでは気を付けて行ってらっしゃいませ」
「こちらこそ、とても楽しめました。それでは。また連絡は入れますね」
一ノ瀬はセノンに深く一礼した。そして、セノンはその一例を見ることなく試練の塔に向かった。
試練の塔は今まで自分が行ったことのある階層の休憩地帯にはループできるシステムがある。セノンはそのシステムのことを知っていた。そのため、コマンドメニューを開き地図を出す。
するとセノンは四十回を超えるあたりまでの階層に行ったことがあることがわかった。セノンはその中から三十五階の文字をタッチする。
セノンはまぶしい光に包まれる。
セノンは一瞬目を閉じるが、すぐに開ける。
「ここは――――」
セノンは小さくつぶやいた。そこにはもちろんセノンの来たことがあった。そこはセノンもまだ鮮明に映像として流れることができるところだった。
セノンの前に広がった世界は目の前の攻勢すら見ることのできない洞窟。そう、どんなに目がいいプレイヤーでどんなに暗闇に慣れても前を見ることができない。そのうえ塔の一階とは比べ物にならないくらいモンスターが強い。
セノンが鮮明に覚えているのには理由があった。
それは――――
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