お嬢様、お食べなさい

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第15話 カツレツ

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【Side テオ】

 ーーーーこれであいつも、少しはマティアに優しくするだろうか?

 そんなことを考えながら、テオは、マティアが待つ部屋に戻った。一日中、手紙を書き続けていたマティアは机に突っ伏して眠っている。

 ーーーーさてと、慎重にいくかぁ。

 テオは眠るマティアを抱き上げてベットに運ぼうとするも、マティアが目を覚ました。

「テオ……どこに行っていたの?」

 トロンとした目で、マティアはテオに尋ねる。

 ーーーー不安にさせたかな。

 マティアがお風呂に入っている間に帰ってくるつもりが、思ったより時間がかかってしまった。

「明日の朝ごはんの調査してきたんだ。騎士たちに新入りのふりして聞いてきたんだよ。」

 マティアは驚きの表情で口を開いたが、すぐに笑いだす。

「食いしん坊ね。」

 ーーーーよし、信じた。

 テオは大きくあくびをしながら言った。ポールに会ったと、マティアに伝えるつもりはない。マティアがポールの名前を聞くだけで、少し苦しい気持ちになることをテオは知っている。

「この城のごはん、うまいからな。」

 メイドに変身作戦はすこぶる上手くいった。女王マティアがメイド服と黒縁眼鏡をかけて、図書館にいるとは思わないらしい。新人メイドと騎士のふりをして、難なく食事にありつくことができた。

 ーーーーメイド服姿のマティア、かわいかったな。

 ドレスを着て綺麗に着飾ったマティアよりも幼く見えて、ついいたずらをしたい衝動に耐えられなかった。 

「テオ、今日はあなたがベットで寝てちょうだい。」

 マティアがベットルームを指さしながら、テオにいう。

「お?誘ってるのか?」

 にやりと笑ってテオがからかうと、マティアは顔を真っ赤にして否定する。

「違うわよ!私がソファーで寝るから、テオはベットで寝て!」

 ーーーーそう慌てるな、俺はなんもしないよ。

「そりゃあできないな。俺はソファーが気に入ったんだ。この場所は譲らない!」

 テオはソファーに倒れこみ、しがみつく。

「そんなこと言わないの。毎日ソファーで眠っていたら、体が痛くなっちゃうわよ。」

 マティアは両手を腰に当てて、テオを見つめる。

 ーーーーマティアをソファーで寝かすわけないだろ?

「じゃあ、ソファーで一緒に寝るか?」

「もうっ。そんなことしないでしょ……。」

 頬を膨らませるマティアに構わず、テオは背中を押す。

「ほら、そろそろ眠りな。色々あって疲れてるだろうし。」

 それからしばらく、どちらがベットで眠るか言い争いをしたが、ついにマティアが折れた。

「良いの?」とマティア。

「ああ。」

「本当にありがとう、テオ。お休みなさい。」

 微笑みを浮かべて、マティアはベットルームに入っていた。

 「おやすみ。」

  ーーーー今日一日、よく頑張ったな。

 心の中でマティアを褒めたたえながら、テオは手を振る。

 マティアがベットルームに行ったのを確認したテオは、一枚の便箋を手に取り、そっと文字を走らせました。

【親愛なるリリー・ドントール様へ】

 テオは少し考えながら、文字をつづっていく。

[ ひさしぶり。リリー。元気にしてるか?もちろん俺は元気だ。今はリックストン国で騎士をしているよ。リリーの姉ちゃんも大変そうだが、何とか元気そうだ。そんで1つ、リリーに提案がある。驚かないで聞いてほしいんだが……]

  その日、テオは夜遅くまで手紙を書いていた。彼は、リックストン国とドントール国の友好関係が戻ることを心の底から願っている。

 ◇◇◇
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