令和百物語 ~妖怪小話~

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捌拾参 ヤロカ水

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 ヤロカ水。
 
 近年、美容や健康を気にする人々の間で、ヤロカが多く溶けた水(ヤロカ水)が話題になっている。
 
 ヤロカとは?
 
 ヤロカとは、「欲しいか」の方言である。
 人間の欲望を刺激する効果がある。
 
 ヤロカは人間にとって重要な成分として、人間が体内に当たり前に持っている。
 努力や行動の原動力として、高い効能がある。
 しかし、体内のヤロカは加齢とともに減少し、さらに人間の体内で新しく作ることができないため、食事から摂取する必要がある。
 
 ヤロカ水の効能。
 
 努力と行動の維持に欠かすことができないヤロカ。
 ヤロカを手軽に摂取するために作られたのが、ヤロカ水である。
 
 ヤロカ水を定期的に摂取することで、体内のヤロカが維持され、年をとっても努力と行動力を持つ人生が約束される。
 
 ヤロカ水の作り方。
 
 激しい雨の夜、増水しそうな川の前で待つ。
 川の上流から「ヤロカヤロカ」と聞こえたら、「ヨコサバヨコセ」と叫ぶ。
 すると、川の水が一気に溢れ、近くにある村が飲み込まれる。
 家も人間も飲み干して、空っぽになった村に溜まる水が、ヤロカ水となる。
 ヤロカ水には、生きたかったのに生きることができなかった人間たちの嘆きが豊富に含まれている。
 なお、ヨコサバヨコセは、もらえるなら頂戴、の方言である。
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