令和百物語 ~妖怪小話~

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漆拾 寝肥

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 若者の引きこもりと不登校は、増加の一途をたどっている。
 友人関係、教職員との関係、学業の不振、未来への漠然とした不安。
 要因は様々である。
 
 彼らは社会との関わりを断って、小さな部屋の中で過ごす。
 外へ出る必要はない。
 
 黙っていても用意される食事。
 常設されるトイレとお風呂。
 無限の娯楽にアクセスできるスマートフォン。
 
 それさえあれば、何もいらない。
 ひきこもりは、家庭の問題でしかなかった。
 
 が、そこで流行ったのが、若者の寝肥化である。
 寝肥は、食べては寝てを繰り返す怠け者を、無限に太らせる。
 全身のあらゆる場所に脂肪がつき、体が肥大化する。
 
 三段腹なんて生易しい物ではない。
 頬も、顎も、首回りも、三段に分かれていない場所などないほど、ぶくぶくと膨れ上がる。
 
 急激な体重の増加は、引きこもる部屋の床をみしみしと押し潰し、住居を破壊する。
 肥大化した手は、スマートフォンを操作する繊細な動きを没収する。
 
 若者から引きこもる行為を奪う。
 
 
 
 寝肥化した若者たちは、今では公園や空き地にごろんと寝転がる。
 既に入れる家はないのだから。
 
 しかし、周囲には、寝肥化した仲間たちがいる。
 外は既に、彼らの引きこもり場所と化したのだ。
 
 昨今、寝肥化を収容するための施設の建設が進められている。
 が、人間の数倍の大きさにまで肥大化した彼らを収容できる広い土地の確保に難航し、またそんな若者を近所において欲しくないという近隣住民の声によってさらに難航している。
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