令和百物語 ～妖怪小話～

肆拾捌 式神

　式神。
　それは陰陽師が使役する鬼神のこと。
　
　陰陽師の呪術によって具現化し、陰陽師の指示によって行動する。
　
　式神は今日もまた、陰陽師のために行動する。
　
　午前七時に陰陽師を起こす。
　陰陽師の朝ご飯の準備をする。
　陰陽師に朝ご飯を運ぶ。
　陰陽師が食べ終えた朝ご飯の片づけをする。
　陰陽師の昼ご飯の準備をする。
　
　午前八時に陰陽師の代わりに登校する。
　陰陽師の友達と交友関係を維持する。
　陰陽師の代わりにテストを受けて満点をとる。
　陰陽師の代わりに体育の時間も大活躍する。
　陰陽師の代わりにクラス一の美少女から告白されて、承諾する。
　陰陽師の代わりに美少女と一緒に下校する。
　陰陽師の代わりに美少女とで休日デートの約束を取り付ける。
　
　午後六時に陰陽師の家に帰宅する。
　陰陽師が食べ終えた昼ご飯の片づけをする。
　陰陽師の夜ご飯の準備をする。
　陰陽師に夜ご飯を運ぶ。
　陰陽師のお風呂の準備をする。
　陰陽師が食べ終えた夜ご飯の片づけをする。
　陰陽師の散らかした部屋を片付ける。
　
　午後十時に陰陽師は寝る。
　陰陽師を見守る。
　
　こうして、式神の一日は過ぎていく。