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肆拾肆 鳴釜
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青空の元、少年少女たちはバーベキューを楽しんでいた。
それぞれ持ち寄った肉と野菜を網に乗せ、ジュウジュウと美味しそうな音を立てて焼いていく。
香りが鼻を刺激して、食欲を一層掻き立てる。
「まだかなー?」
「もうちょい……」
「肉の焼きが甘いな」
「でたな肉奉行!」
既に、右手には箸を、左手にはタレを入れた皿を持ち、その時を待つ。
音が変わる。
「時はきた」
肉奉行の言葉を皮切りに、箸が一斉に肉を捕らえる。
「俺の育てた肉ううううう!」
「うるせえ! 早い者勝ちだ!」
「うんめええええ!!」
肉は次々、口へと放り込まれていく。
そして、肉を食べたら、欲しくなるのは白米だろう。
少年少女の前に、頭全体が釜の鳴釜がひょこひょこと歩いてくる。
釜の蓋は開いており、炊き立ての白米が輝いている。
箸が一斉に白米を捕らえる。
「うめえええええ!!」
「んー! 肉にあうー!」
「たれを絡めると、これまたうまいんだよなー!」
釜の中にあった白米はあっという間に空になり、鳴釜は絶命してその場に倒れた。
「あ、空になった」
「すみませーん、お代わりくださーい」
少年少女の呼び声に応じ、第二第三の鳴釜が、ひょこひょこと歩いてくる。
手には肉と野菜を持っており、網へと手際よく載せていく。
そんな鳴釜の釜へも、箸が容赦なく突っ込まれる。
「うめえええええ!!」
鳴釜は、紙皿や紙コップと同じように、バーベキューに必須の妖怪として重宝されている。
いつでも炊き立て白米を提供してくれるし、肉と野菜も焼いてくれる。
何より、役目を終えれば絶命し、消滅してくれる。
釜を洗う手間もなくなるのだ。
鳴釜は、今日もどこかで生きている。
そして死んでいる。
それぞれ持ち寄った肉と野菜を網に乗せ、ジュウジュウと美味しそうな音を立てて焼いていく。
香りが鼻を刺激して、食欲を一層掻き立てる。
「まだかなー?」
「もうちょい……」
「肉の焼きが甘いな」
「でたな肉奉行!」
既に、右手には箸を、左手にはタレを入れた皿を持ち、その時を待つ。
音が変わる。
「時はきた」
肉奉行の言葉を皮切りに、箸が一斉に肉を捕らえる。
「俺の育てた肉ううううう!」
「うるせえ! 早い者勝ちだ!」
「うんめええええ!!」
肉は次々、口へと放り込まれていく。
そして、肉を食べたら、欲しくなるのは白米だろう。
少年少女の前に、頭全体が釜の鳴釜がひょこひょこと歩いてくる。
釜の蓋は開いており、炊き立ての白米が輝いている。
箸が一斉に白米を捕らえる。
「うめえええええ!!」
「んー! 肉にあうー!」
「たれを絡めると、これまたうまいんだよなー!」
釜の中にあった白米はあっという間に空になり、鳴釜は絶命してその場に倒れた。
「あ、空になった」
「すみませーん、お代わりくださーい」
少年少女の呼び声に応じ、第二第三の鳴釜が、ひょこひょこと歩いてくる。
手には肉と野菜を持っており、網へと手際よく載せていく。
そんな鳴釜の釜へも、箸が容赦なく突っ込まれる。
「うめえええええ!!」
鳴釜は、紙皿や紙コップと同じように、バーベキューに必須の妖怪として重宝されている。
いつでも炊き立て白米を提供してくれるし、肉と野菜も焼いてくれる。
何より、役目を終えれば絶命し、消滅してくれる。
釜を洗う手間もなくなるのだ。
鳴釜は、今日もどこかで生きている。
そして死んでいる。
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