令和百物語 ~妖怪小話~

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弐拾壱 飯食い幽霊

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 最近のニュースで注目されるのは、飯食い幽霊と呼ばれる妖怪だ。
 姿を見せることはないため、その外見は不明。
 基本的に、人に危害を加えることはない。
 家に憑りつき、朝と晩の二回、その家の食事を一人前食べる。
 ただそれだけ。
 
 とある四人家族の家で、四人分並べられた朝ごはんが、いつの間にか一人分なくなったことで、その存在が確認された。
 余談だが、「パパのご飯が消えたー」との娘の一言で、その日の朝ごはんは父だけ抜きになったという悲しいエピソードもある。
 
 この飯食い幽霊、確認された当初は少し迷惑な存在だと認識されていたが、だんだんと恐ろしい妖怪と認識が変わってきた。
 
 朝食と夕食を準備しなければ、家の壁にビシビシとひびを入れられるのだ。
 完全に飯食い幽霊の八つ当たりである。
 例えば朝寝坊をし、朝食を作り忘れただけで、壁の修理費用を払わなければならなくなるのだ。
 痛い出費だ。
 もちろん、夜に飲み会へ参加して夕食を準備してない日も同様だ。
 
 また、朝食と夕食の準備を忘れない場合であっても、食費が一人分増えるだけでも、痛い出費だ。
 特に、一人暮らしの貧乏学生からは悲鳴が上がった。
 
 飯食い幽霊から逃げるには引っ越すしかないが、引っ越しにもお金がかかる。
 
 飯食い幽霊は、食事を奪われる妖怪としてでなく、それによる出費を増大させる金食い妖怪として、現代人を恐怖のどん底に突き落としている。
 
 
 
「だってさ。うちにも飯食い幽霊が来たら、恐いよなぁ……」
 
 少年は、朝食中の話題として、両親に飯食い幽霊の話題を出した。
 両親は、そんな息子である少年をぎろりと睨む。
 
「うちにいる穀潰しと何が違うんだい? 何もしないくせに三食しっかり食べて……。二食しか食べない飯食い幽霊の方がマシじゃないかい」
 
「ゴ、ゴチソウサマー」
 
 ニートを満喫している少年は、ご飯を口にかきこんで、そそくさと自分の部屋に戻っていった。
 
「せめて自分で使った食器くらい、自分で洗いな!」
 
 外部の声から耳を塞いで。
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