31 / 45
ベゴニア
しおりを挟む
黒い髪に差した薄紅色の花が揺れる。
もうこの記憶だけで十分だ。
ベゴニアの花言葉は、片思い、愛の告白、そして幸せな日々。
ハルカに花の名前を教えなかったのは、花に込められた意味を自分の中だけに留めておきたいと思ったからだ。
ハルカへの想いは苦しくもあるが、この数日はアンリにとって何物にも代えがたい幸せな日々だった。
襲撃未遂の一報を聞いた時、呼吸が止まるかと思った。ハルカが無事だと聞かされても、実際にこの目で見るまでは安心できない。すぐに駆けつけたかったが、護るべき対象が増えれば余計に危険に晒しかねないと堪えたが、不安で何も手につかなかった。
ようやく戻ってきたハルカを見て苛立ちが抑えきれずにメルヴィンを責めてしまったのは、ただの八つ当たりであり、鬱憤を抑えきれなかったせいだ。アンリが側にいたからといってハルカが怪我をしなかったわけではないだろう。
どんなに万難を排しても完全にも護り切ることは難しいと護られる立場であるアンリも重々承知している。
それなのに真摯に頭を下げるメルヴィンの態度に劣等感が頭をもたげる。
優秀で何事も卒なくこなし、今もなお王太子にと望む者も多い。それでもメルヴィンはアンリのために公爵家の跡取りも辞退し、王家の剣であることに徹している。
そんな従兄に八つ当たりや嫉妬をしているのだから、自分が下劣な人間になったような気がしてならない。
そんな苦い思いを噛みしめながらメルヴィンの謝罪を聞いていたのに、彼の取った行動に唖然とすることになった。
(……どうして一瞥もせずにハルカの様子に気づくんだ?!)
あまりにも自然にハルカに注意を促し、メルヴィンは真剣な表情で傷口を確認しているのだ。
そんな疑問を抱いていると、ハルカが目を伏せて謝罪の言葉を口にしたことで気づいた。
メルヴィンへの叱責がハルカに罪悪感を抱かせ、メルヴィンはそんなハルカがどういう行動に出るのか理解していたのだろう。
自分の過ちに気づき謝ったが、ハルカはアンリに対して心配を掛けたことを詫びたことで更に驚くことになった。ハルカの雰囲気から刺々しさが薄れて、伏せた瞳は不安を映すかのように僅かに揺れている。
(これが本当のハルカなんだ……)
アンリが召喚する前の、本来の彼女に触れた気がした。
虚勢を張り続けた彼女の悲痛な叫びは、しっかりと耳に焼き付いている。
大切だからと距離を置いたのは果たして本当にハルカのためだったのか。
何を言われてもその苦痛に寄り添ったメルヴィンに対して、自分はただ逃げていただけではないだろうか。
惑うばかりで足踏みをしていた自分と、それでも手を伸ばし続けたメルヴィン。どちらが彼女の心に寄り添い、理解していたのかは明白だ。
ハルカを護りたいのに傷付けてばかりいることへの無能感もさることながら、押し寄せてきた後悔と罪悪感に目を背けたくなるのを堪える。
今更だと思いながらも、それでも何か彼女のために行動をせずにはいられない。
半ば強引に専属侍従になることを告げて側に留まれば、ハルカは困惑しながらも受け入れてくれた。
決して許されたわけではない。だがハルカの変化はアンリへの態度へも表れていた。
どこか懐かしむような眼差しや零れた笑みは自分に向けられたものではないとすぐに気づいたが、それでも幸福感がじわりと滲む。
他愛のない会話、向かい合ってゲームに興じるその時間はとても穏やかで愛おしく感じられた。
(もう少し、もう少しだけ……)
職務の放棄もさることながら、ハルカと過ごすひと時が許されるのはそう長い時間ではない。
ずっとこうしていたいけど、それが叶わないことは分かっている。たとえアンリが王太子でなくなったとしても召喚した罪がなくなるわけではないのだ。
メルヴィンへの態度も何とかしなくてはと思ってはいるものの、幼稚な嫉妬心を知られたくないという思いも手伝って素直になれずにいた。
情けない本心にもかかわらず、否定することなく告げたハルカの言葉に心が軽くなる。阿ることのない率直な言葉が心地よい。
しかし謝ろうと思った矢先に届いた招待状にアンリは渋面を浮かべることになった。表向きは平穏そのものだが、元凶を取り除かなければハルカに不自由な生活を強いることになる。
食堂の夫婦を巻き込んだことを酷く気に病んでいるハルカをこれ以上苦しめたくはないと何とか茶会への参加を諦めさせようとしたのに、静かな口調のハルカの一言に何を言おうとしているのか分かってしまった。
「私はアンリの妃にはなれないよ」
(王太子は私でなくてもいい……)
そう言ってしまえたらどんなに楽だろう。だがそれをハルカにも誰にも告げるつもりはなかった。いつか終わってしまう時間だと覚悟していたのだと淡々と返す。
「親の罪を子供も負わなくてはいけないの?」
貴族なのだから個ではなく家単位での賞罰を与えるのは当たり前だと思っていた。
愚かな一人のせいで優秀な人材を失うことは確かに損失ではある。
それと同時に頭をよぎったのは両親のことだった。それぞれ優秀ではあるのに、自分の感情を優先し周囲を振り回す彼らの行動を止められない。そんな自分に不甲斐なさを感じていたが、果たしてそれはアンリの責任なのだろうか。
そして何故ジゼル嬢なのか、というメルヴィンの問いかけに対するハルカの答えはアンリの想像を超えていた。
「今まで会ったことがある人達の中では、彼女が一番アンリのことを考えていたから」
(それは……反則だろう!)
アンリの想いを逸らすためなら誰でもいいのだろうと思っていた。それなのに、ハルカはアンリのためにジゼルを推すのだと言う。
特別ではなく、彼女の生来の優しさからだと分かっているが、自分のためにと思ってくれたことがどれだけ嬉しいことだろう。
込み上げる喜びに涙が出そうになって、顔を手で覆う。
ようやく心が落ち着いて一息吐いたアンリだが、ハルカの一言に耳を疑った。
「だから、私は死なないといけないと思うんだよね」
もうこの記憶だけで十分だ。
ベゴニアの花言葉は、片思い、愛の告白、そして幸せな日々。
ハルカに花の名前を教えなかったのは、花に込められた意味を自分の中だけに留めておきたいと思ったからだ。
ハルカへの想いは苦しくもあるが、この数日はアンリにとって何物にも代えがたい幸せな日々だった。
襲撃未遂の一報を聞いた時、呼吸が止まるかと思った。ハルカが無事だと聞かされても、実際にこの目で見るまでは安心できない。すぐに駆けつけたかったが、護るべき対象が増えれば余計に危険に晒しかねないと堪えたが、不安で何も手につかなかった。
ようやく戻ってきたハルカを見て苛立ちが抑えきれずにメルヴィンを責めてしまったのは、ただの八つ当たりであり、鬱憤を抑えきれなかったせいだ。アンリが側にいたからといってハルカが怪我をしなかったわけではないだろう。
どんなに万難を排しても完全にも護り切ることは難しいと護られる立場であるアンリも重々承知している。
それなのに真摯に頭を下げるメルヴィンの態度に劣等感が頭をもたげる。
優秀で何事も卒なくこなし、今もなお王太子にと望む者も多い。それでもメルヴィンはアンリのために公爵家の跡取りも辞退し、王家の剣であることに徹している。
そんな従兄に八つ当たりや嫉妬をしているのだから、自分が下劣な人間になったような気がしてならない。
そんな苦い思いを噛みしめながらメルヴィンの謝罪を聞いていたのに、彼の取った行動に唖然とすることになった。
(……どうして一瞥もせずにハルカの様子に気づくんだ?!)
あまりにも自然にハルカに注意を促し、メルヴィンは真剣な表情で傷口を確認しているのだ。
そんな疑問を抱いていると、ハルカが目を伏せて謝罪の言葉を口にしたことで気づいた。
メルヴィンへの叱責がハルカに罪悪感を抱かせ、メルヴィンはそんなハルカがどういう行動に出るのか理解していたのだろう。
自分の過ちに気づき謝ったが、ハルカはアンリに対して心配を掛けたことを詫びたことで更に驚くことになった。ハルカの雰囲気から刺々しさが薄れて、伏せた瞳は不安を映すかのように僅かに揺れている。
(これが本当のハルカなんだ……)
アンリが召喚する前の、本来の彼女に触れた気がした。
虚勢を張り続けた彼女の悲痛な叫びは、しっかりと耳に焼き付いている。
大切だからと距離を置いたのは果たして本当にハルカのためだったのか。
何を言われてもその苦痛に寄り添ったメルヴィンに対して、自分はただ逃げていただけではないだろうか。
惑うばかりで足踏みをしていた自分と、それでも手を伸ばし続けたメルヴィン。どちらが彼女の心に寄り添い、理解していたのかは明白だ。
ハルカを護りたいのに傷付けてばかりいることへの無能感もさることながら、押し寄せてきた後悔と罪悪感に目を背けたくなるのを堪える。
今更だと思いながらも、それでも何か彼女のために行動をせずにはいられない。
半ば強引に専属侍従になることを告げて側に留まれば、ハルカは困惑しながらも受け入れてくれた。
決して許されたわけではない。だがハルカの変化はアンリへの態度へも表れていた。
どこか懐かしむような眼差しや零れた笑みは自分に向けられたものではないとすぐに気づいたが、それでも幸福感がじわりと滲む。
他愛のない会話、向かい合ってゲームに興じるその時間はとても穏やかで愛おしく感じられた。
(もう少し、もう少しだけ……)
職務の放棄もさることながら、ハルカと過ごすひと時が許されるのはそう長い時間ではない。
ずっとこうしていたいけど、それが叶わないことは分かっている。たとえアンリが王太子でなくなったとしても召喚した罪がなくなるわけではないのだ。
メルヴィンへの態度も何とかしなくてはと思ってはいるものの、幼稚な嫉妬心を知られたくないという思いも手伝って素直になれずにいた。
情けない本心にもかかわらず、否定することなく告げたハルカの言葉に心が軽くなる。阿ることのない率直な言葉が心地よい。
しかし謝ろうと思った矢先に届いた招待状にアンリは渋面を浮かべることになった。表向きは平穏そのものだが、元凶を取り除かなければハルカに不自由な生活を強いることになる。
食堂の夫婦を巻き込んだことを酷く気に病んでいるハルカをこれ以上苦しめたくはないと何とか茶会への参加を諦めさせようとしたのに、静かな口調のハルカの一言に何を言おうとしているのか分かってしまった。
「私はアンリの妃にはなれないよ」
(王太子は私でなくてもいい……)
そう言ってしまえたらどんなに楽だろう。だがそれをハルカにも誰にも告げるつもりはなかった。いつか終わってしまう時間だと覚悟していたのだと淡々と返す。
「親の罪を子供も負わなくてはいけないの?」
貴族なのだから個ではなく家単位での賞罰を与えるのは当たり前だと思っていた。
愚かな一人のせいで優秀な人材を失うことは確かに損失ではある。
それと同時に頭をよぎったのは両親のことだった。それぞれ優秀ではあるのに、自分の感情を優先し周囲を振り回す彼らの行動を止められない。そんな自分に不甲斐なさを感じていたが、果たしてそれはアンリの責任なのだろうか。
そして何故ジゼル嬢なのか、というメルヴィンの問いかけに対するハルカの答えはアンリの想像を超えていた。
「今まで会ったことがある人達の中では、彼女が一番アンリのことを考えていたから」
(それは……反則だろう!)
アンリの想いを逸らすためなら誰でもいいのだろうと思っていた。それなのに、ハルカはアンリのためにジゼルを推すのだと言う。
特別ではなく、彼女の生来の優しさからだと分かっているが、自分のためにと思ってくれたことがどれだけ嬉しいことだろう。
込み上げる喜びに涙が出そうになって、顔を手で覆う。
ようやく心が落ち着いて一息吐いたアンリだが、ハルカの一言に耳を疑った。
「だから、私は死なないといけないと思うんだよね」
38
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?
蓮
恋愛
少しネガティブな天然鈍感辺境伯令嬢と目つきが悪く恋愛に関してはポンコツコミュ障公爵令息のコミュニケーションエラー必至の爆笑(?)すれ違いラブコメ!
ランツベルク辺境伯令嬢ローザリンデは優秀な兄弟姉妹に囲まれて少し自信を持てずにいた。そんなローザリンデを夜会でエスコートしたいと申し出たのはオルデンブルク公爵令息ルートヴィヒ。そして複数回のエスコートを経て、ルートヴィヒとの結婚が決まるローザリンデ。しかし、ルートヴィヒには身分違いだが恋仲の女性がいる噂をローザリンデは知っていた。
エーベルシュタイン女男爵であるハイデマリー。彼女こそ、ルートヴィヒの恋人である。しかし上級貴族と下級貴族の結婚は許されていない上、ハイデマリーは既婚者である。
ローザリンデは自分がお飾りの妻だと理解した。その上でルートヴィヒとの結婚を受け入れる。ランツベルク家としても、筆頭公爵家であるオルデンブルク家と繋がりを持てることは有益なのだ。
しかし結婚後、ルートヴィヒの様子が明らかにおかしい。ローザリンデはルートヴィヒからお菓子、花、アクセサリー、更にはドレスまでことあるごとにプレゼントされる。プレゼントの量はどんどん増える。流石にこれはおかしいと思ったローザリンデはある日の夜会で聞いてみる。
「つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?」
するとルートヴィヒからは予想外の返事があった。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
愛なんてどこにもないと知っている
紫楼
恋愛
私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。
相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。
白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。
結局は追い出されて、家に帰された。
両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。
一年もしないうちに再婚を命じられた。
彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。
私は何も期待できないことを知っている。
彼は私を愛さない。
主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。
作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。
誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。
他サイトにも載せています。
愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。
若松だんご
恋愛
「リリー。アナタ、結婚なさい」
それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。
まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。
お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。
わたしのあこがれの騎士さま。
だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!
「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」
そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。
「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」
なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。
あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!
わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる