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2次元の世界

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 「ここは・・・!?」

 私は、明るい日射しに目が覚め、自分のいる質素な部屋に、強烈な違和感と近親感を同時に感じた。
 確かに、さっき迄私は、夏のくっそ暑い自分の1LDKのアパートで『乙女ゲーム』をしていた筈なのに・・・
  
 改めてじっくり部屋を見ている。なんか変な感じがするのだ。なんだろう?何なんだろう?

  コンコンとノックの音がしたので「どうぞ。」と言ってみた。
 ガチャっとドアが開いて部屋に入って来た人物を見て吃驚した。

 「アリア!おはよう!早く支度しましょう!」
 「お母さま・・・?」

 女の人の問いかけに、疑問になりながらも返事を返せば、花が綻ぶ様な笑顔が返って来た。
 ・・・いいや!本当に花が背中に舞っている。

 ・・・は?

 「まぁ!アリア!わたしの事をお母さまだなんて!嬉しいわ!早く支度をしてね!食事にしますよ!早くね!旦那様と、マイルズと一緒に食べましょう!」

 そう言って、着替えをベッドの端に置いて行ってしまった。

 戸惑いながら着替え、今までの事を思い出していた。
  ・・・そうだ、私はこのアッサム子爵の養女になってもう1年経っているんだ。確か私の実母と、お母さま、いいえ養母は従姉妹で、私の両親は騎士爵だったが、3年前に流感で亡くなってしまっていて、両親が亡くなった後、父親の兄という人が私を引き取ってくれたのだが、酒癖が悪く私によく暴力を振るっていた。
 
 それを見かねたアッサム子爵のマイルズ様とリーリア様夫婦が引き取ってくれたんだのだ。私としては感謝しか無いのだだけど、さっきから感じていた違和感の正体が判ってしまった・・・

 ここは2次元の世界だ!お母さまの顔を見た時に、何?これ!?絵じゃん!アニメの様な顔立ちが、現実として動いてしゃべってる・・・立体的にちゃんと動いているのに、なんだろう、平べったく感じる。そうだ!テレビ画面を見ている様な感じだ!
 それに、この部屋の壁紙や家具も絵なのだ!でも、触ってクローゼットを開けて見ればちゃんと開く。クローゼットの服達も、紙に書いた絵の様な視覚なのだが、触るとしっかり布の感触がする・・・

 くらくらする気分のまま、着替え、食堂へ行った。アリアとしての記憶が、ちゃんとあるので間違える事無く食堂へ着いた。

 席に座り出された食事に、私は再び戦慄した!

 ・・・なんだこれっ!!!!
 食い物迄!!絵じゃ無いか!!!!
 全然!!旨そうじゃない!

 カトラリーを取る自分の手を見るとふくよかな手、着替える時にも気が付いていたが、この今の体は、ふくよかと言うより、デブ!こんな絵の様な見た目の食い物を美味しいと思っていたのか!?
 頑張れ!私!とりあえず、目の前のサラダを少量フォークに突き刺し恐る恐る口に入れた。

 モシャモシャ・・・モシャモシャ・・・

 うん・・・普通にサラダだ。では、今度はハムエッグを少量・・・
 まぁ、これも普通に食べられる。
 では、紅茶は・・・湯気が上がっているのだが・・・うん・・・安定の絵の湯気・・・

 そんなこんなで、食欲がわく訳も無く、普段よりも残してしまった・・・御飯さん・・・ごめんなさい。
 
 そんな様子を見た養父母は、どこか悪いのかと医者を呼ばれそうになったので、慌てて、目覚めが悪かっただけだと言い訳をした。
 それから、今夜からの食事の量も何時もの半分にして、野菜を多目にしてもらう様にお願いした。

 そんなこんなで、朝食が終わり自分の部屋へ戻ったのだが、改めて自分の姿を、等身大の鏡で見た。勿論、安定の2次元・・・
 容姿は、赤茶髪で、ふくよかな丸い顔立ちの二重顎、目は頬が肉で盛り上がって糸目、頑張って目を開けて見れば、紫色の瞳・・・体重計という物は、この部屋には無いが、どう見ても80㎏は有りそうだ。アリアの記憶では私はまだ11才の筈。2次元の世界とはいえこれは酷い(泣)
 これは早急にダイエットをしなければ、成人病で死ぬ未来しか見えない(汗)



 あれから3年の月日が立ち、アリアは14才になった。相変わらず2次元の世界で違和感が半端無いが、少しずつ慣れダイエットにも成功した。
 太っていて、身長も低かった私だが、ダイエットを始めてから、身長が一気に伸び、132㎝しか無かった身長が、今では161㎝に伸びて皮がたるんっとなるのでは!!と危惧していたが、そんな事も無く、ボンキュッボンとはいかないが、それなりのに体型になった。
 痩せて、盛り上がってた頬は普通に戻り、押し潰された目は開くようになった。赤茶髪だった髪色は何故か薄くなり、ストロベリーブロンドになった。
 
 食事は普通に美味しい、美味しいけれど、やはり見た目が、絵の料理では食欲がわかないという事も、ダイエットの助けになった。

 アスリート体型に憧れていた訳では無いが、朝夕の鍛練を養父と一緒にして、適切な食事をして、規則正しい生活を心掛けた。
 勿論、貴族としてのマナーや、心掛け、ダンス、教養、勉強も抜かり無い。
 
 前世、日本人だった私は根が真面目なので、子爵令嬢としては頑張っていると思う。只、裕福な方では無く、マナー、ダンス、教養はほどほどで終わった。勉強も子爵令嬢としてのそこそこで良いという養父母の方針で、切り上げられてしまった。跡取りの、義弟の方に力を入れるのは仕方ないと思う。

 私が転生?した世界はやっぱり2次元の世界だとつくづく思う。魔法も有る、ドワーフもエルフも妖精もドラゴンも魔獣も有る世界。本当にファンタジー。
 私も僅かに魔法が使える。転生チート?そんなもの無い無い。
 そして全てが立体映像アニメの世界。

 慣れないうちは、気持ち悪かったね!特に食事の時は拷問だった。吐きそうになるのを我慢して無理矢理飲み込んでいたので、どうしても食事の量が減って養父母を心配させた!
 ある時、目を瞑って食べるという技を覚えたので、今は食べられるようになったよ。

 今年は私は15才になる。夏が過ぎて秋が始まる初秋月にコスモス学園に入学する。

 この世界では、貴族の子息子女達は学園に入学する事が義務付けられている。

 この世界は、私が前世に、はまっていた乙女ゲーム・・・・『紅薔薇の歌』~歌が導く甘い世界~で、間違いない無さそうだ。カラオケアプリとコラボで作ったゲームで、歌の点数が高いほど攻略しやすく、音痴はとても無理なのだが、なんと課金して、美声のポーションを手に入れれば、例え音痴でも攻略できるという、何ともふざけたクソゲーだった。
 因みに、歌は前世の流行りの歌でもゲームのオリジナルでもOKなアバウトさよ。

 私は歌に自信があったので、ゲームの中盤迄は楽に行けたのだが、それからの記憶は無い。
 多分、それくらいで死んだんだろう。

 多分、アリアという名前で判断するに、ヒロインの友人その1で間違い無いだろう。けれど私は、攻略対象にも、ヒロインにも、悪役令嬢にも関わりたく無い。そもそも2次元のキャラクターなんぞ、只の鑑賞対象でしか無い。

 だから、教室の隅で、ひっそりと目立たず過ごして、安心安全な学園ライフを目指す!





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