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第五章 大きな彼。前編
火事と喧嘩はなんとやらって言うだろ、よく知らねぇけど【彼視点】
しおりを挟むまぁ、でも大体のやつならそんなの可笑しいって言うだろうな、実際初めて漣が喧嘩した時俺もそうだったから。
俺は止めずに一緒に参戦したからめっちゃくちゃ怒られたけどな。
「鹹蛋はさぁ、僕が喧嘩するの嫌?」
「あー、どっちかと言えば嫌だろ、そりゃ」
「やめてほしい?」
こちらを見上げてくる満月の瞳は本当に、夜空からそこに綺麗に嵌め込んだんじゃないかってくらい綺麗にそこに輝いていて見てるだけで落ち着けた。
「あー、別に、俺はやめてほしいとか、そう言うのは」
言葉を濁したのだって、折角漣に頼られているその状況を自分からわざわざ壊したくないだけだった。子どもの意地張りとおんなじだよ。
俺は漣に頼られていたかったし、その後ろを守るのも、理由を作って守られるのも心地よかったから。それを壊せるほど俺は大人じゃないし、壊さなきゃならないのなら大人にならなくてもいいと思ってたし、今だってそう思う。
「じゃあ止めない。だからお前も止めちゃだめ」
目を細めてしてやったりと言わんばかりに笑って言う漣がそこにいるだけで、本当にそれでよかったんだ。
その時が何よりも幸せで、何よりも満ち足りて平和だと思っていたから。
「止めたらどうする」
「状況と場合にもよるね。
鹹蛋から見て僕がやばい状態なら止めるべきだけど」
「じゃあお前がヤバそうなら止めるわ。それ以外じゃなるべく止めねぇよ」
そう言った時の漣の嬉しそうな顔と言ったらもう思わず写真撮って待ち受けにしたぐらいだった。今も残ってるけど、見せないからな。
写真撮られるの好きなんだよな、あいつ。だから俺の携帯のフォルダは九割漣との写真だったり動画だったり。
もういないのに、未練がましいって言われても仕方がないけどな。でも、葬式の写真は俺が撮ったやつだった。実家にある写真なんてあってないようなもんだしな。
……話が逸れた。
「怪我して欲しくなかったらちゃんと守ってね」
「そもそも喧嘩しなきゃいいだろ」
「元も子もないね。アイツらが原因作らなきゃいいんだよ」
僕は悪くないって本当に悪びれなくそういった漣だけど、信じてもらえないだろうけどな俺らから喧嘩売るなんてことしてこなかったよ今まで。
誰かが傷付かなきゃ漣は動かないし、それを言われなきゃ漣は絶対手を出さなかったさ。まぁ、気に食わなかったら手ェ出しに行ってたけど。
そういうところは案外短気だったよ。女だからとか言ってバカにされるのも嫌いだったしそれを理由に逃げようともしないアイツは強かったよ。
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