死んでしまった彼女が遺したモノも知らず。ただ私は、遺族の無念を晴らしたかった。

古町駒津

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第三章 黒い彼の話。

どうしてなのだろう。

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 珍しく、連日雨が降る四月中旬。
 俺、卜部八月朔日は客足も少ない静かな喫茶店にいた。
 
 からん、と氷の崩れる音と、店内に流れる穏やかでクラシカルな音だけが耳に残る。
 目の前に座るのは黒いレザージャケットを着た眼付きの鋭い屈強な男。
 その後ろで、アクアリウムの中で優雅に泳ぐ魚の姿が見えてそちらに視線をやった。

 男の鋭い眼光は、心地の良い香りのハーブティーに注がれている。

 
 さて。何故俺がこの男と今現在二人きりなのかは、今日の朝にまで時間は遡る。
 
 
 
 
 
 
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