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第二章 白い彼の話。

理由なんて、知る由もない【彼視点】

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「お前って、どうして俺達を家に住まわそうと思ったの」
 
 ずっと抱いていた疑問を、何となく投げかけてみたらあの子は不思議そうに首を傾げた。
 何というか、出会った時から一風変わったタイプの人間だと思ったし、俺が本気を出せば簡単に落ちるタイプの女だとも思った。
 ほら、だって俺は顔が整ってる方だしモテるのも事実だから。
 
「別に、決め手はないなぁ。
 ただ、側に置いとけば面白い事ありそうだと思って」
 
 珍しく休日を友人と一緒に家で過ごしているあの子はそう言って紅茶を飲んで、ケーキを一口食べさせて貰ってる。
 身体の大きな、あの子をすっぽりと隠してしまうあの子の"オトモダチ"はこちらを黙ってジッと見ている。その赤い眼に興味はあるが、生憎こちらとて男には興味がない。
 
「それに、使い勝手が良いじゃない。
 可愛いわんこがそばに居ると、凄く安心するんだ」
 
 ねぇ?と言ってそばに居た灰色の毛並みの犬の頭を撫でた。
 それが何を比喩しているのかなんて、その時はすぐ分かったよ。だって彼の目が俺を殺そうとしてるんだから。
 あの時ほど恐ろしい目を見たことがないと思ったさ。
 
「お前のそう言うところ、好きになれないよ」
「別にお前に好いてもらわなくても結構。
 メインは君じゃなくて、あの人だったからね」
 
 目を細め、獲物を狙う猛禽類を思わす様なあの子の笑みが何よりも苦手だった。
 姉も、大嫌いな男も、同じ様な笑い方をするがより一層、あの子のその笑い方のが苦手だった。
 こちらには見向きもしない癖に、自分の気に入ったペットだけを懐に入れたいが為にその周りさえもついでと言わんばかりに懐柔してしまうその手癖の悪さには殆と、呆れてしまう。
 だが、狙った獲物は今のところ逃したことがないらしい彼女でも俺が殺したいほど嫌いな男にだけは見向きもされないらしいのは手を叩いて笑ってやった。
 まぁ、次の瞬間には殴られていたのはいい思い出だと思うよ。
 俺も友人をその時ばかりは哀れんだよ。自分達が必要としていた食事と住む場所を与えてくれた自分たちよりも五つも下の子どもに狙われるなんて。って思ってたよ。
 あぁ、本当に。いつから狂い始めたのか。よくわからないけど、もしかすると初めて出会った時から彼奴もあの子に惹かれていたのかもしれないな。
 
 あぁ、俺と同じ同居人さ。
 居候なんて言われてたけど一応光熱費や電気代、食費とかちゃんと出していたからね。
 これでも良識ある大人の男性だからね。高校生達に無理なんてさせられないさ。
 
 

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